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2020.08.13

【ヴィンテージの達人に聞いた】大人の古着入門・フレンチ編

大人の古着ブームがじわじわと再燃している昨今ですが、古着=アメリカのみにあらず。フランスのそれにも知る人ぞ知るカッコよさがあるんです。フレンチ・ヴィンテージに魅せられた人物、「スロウガン」「オーベルジュ」のデザイナー小林 学さんにその魅力を伺いました。

CREDIT :

写真/椙本裕子  取材・文/秦 大輔

2018年にスタートし、服好きを続々虜にしてきた「オーベルジュ」。その服作りの根底には、渡仏経験もあるデザイナー小林 学さんが抱く、フレンチ・ヴィンテージへの深い愛情があります。小林さんが愛用するフランス古着の中には、第一次大戦前の19世紀末に作られた100年ものも! しかも驚くなかれ、これが今なおエレガントでとてもいい雰囲気なんです。

時代を超越する手仕事が、フレンチ・ヴィンテージにあるんです

いい具合にヤレているからこその抜け感は古着の真骨頂といえますが、それにしてもなぜフレンチ・ヴィンテージは、100年経ってもカッコいいのか? アメリカ古着になくフランス古着にあるものとは何なのか? 愛用の古着を通して小林さんに分析をお願いしつつ、それらを“今の最高”へ料理した「オーベルジュ」の服についてもツボを語っていただきました。

◆軍医用コットンリネンコート(第二次大戦期)

独特のユル〜いテイストは、まさしく今の気分!

▲元々は生成り色だったものを、日本で本藍染めしたという一着。達人ならではの古着の楽しみ方といえましょう。
2020年AWの新作といわれても疑わないほど今っぽいシルエットのこちらは、第二次大戦期の軍医用コート。フレンチ・ヴィンテージ界では有名なデザインで、お洒落女子の間では人気のコートなんだそうです。

小林学さん(以下小林) 「襟がダブルで深めにとってあるのが特徴で、留めないとダラダラに垂れる。この表情が最高ですよね。ただ、元来が白衣ですからオリジナルは色が生成りで、さらりと着るにはハードルが高い。なので私は、吉野のタデ藍を使って藍色に染めちゃいました。縫製糸も天然素材なので綺麗に染まりましたね。じつは今日僕が着ているシャツも同じ染め方で本藍染めしたものなんですよ」。
▲「シルエットも本当にカッコいい。今着るのに何にもイジる必要がないですよね」と小林さん。
小林 「このコート、背中には細かくギャザーが入っているのですが、医者にギャザーなんているのか?と思いますよね(笑)。でも、おそらくフランスの人は“そういうもんだから”という感覚で、手間を掛けてでも入れているのでしょう。いかに一筆書きで効率よく縫えるか?を追求したアメリカの古着にはない魅力を、こうした意匠に感じます」。
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◆ リネンの軍パン(第一次大戦期)

柄の語源“ニシンの骨”を地でいく迫力の凹凸

▲「軍パンですがマリンリゾートの匂いを感じるので、革のサンダルやバスクシャツなんかとも合うんです」と小林さん。
こちらは第一次大戦期のフランス軍パン。通称BOUGERON(ブージュロン)と呼ばれるミリタリー系作業着の原型で、そのボトムのオリジナルです。リネンのヘリンボーン織りは、まさしくニシンの骨を彷彿させる細かな凹凸が表面に表れています。

小林 「おそらく過酷な塹壕戦を戦う兵士のために作られたものだと思うのですが、表情に迫力がありますよね。それでいてリネンの質が高いので、履いても全然カユくない。ヒヤッとした冷感を感じますし、タッチが本当に気持ちいいんです」

「作りも面白くて、今では英国の高級テーラーしかやらないような“グリ閂”と呼ばれる補強が手で施されていたり、いかにもフランス服らしい不思議を感じます」。

◆ 19世紀末のリネンシャツ(左)、「オーベルジュ」のリネンシャツ(右)

超がつくほど細かいギャザーに浮かぶ、職人魂!

▲右側はフレンチ・ヴィンテージと、その風合いを再現した生地を本藍染めで仕上げた“未来のヴィンテージ”。「ロダン」(右)6万4000円(ホワイト スロウガン)
「コットンだと朽ちますが、リネンは丈夫だから全然もつんです」と言って小林さんが見せてくれたドレスシャツ(左)は、まさかの19世紀末製。100年以上昔のものとは思えないほどの驚きの白さです。

小林 「19世紀後半から20世紀初頭にかけてのフランス古着には、ミシンの仕事と手仕事の両方が残っているのが面白い。このシャツもボタンホールは手縫いですし、袖のギャザーも手で入れている。これがハンパじゃなく細かくて……職人の根性を感じます(笑)。リネン生地の風合いがまた素晴らしく、ものすごく高番手の単糸で織られている。この薄さが、エレガントなんですよね」。
▲尋常じゃなく細かく寄せられた袖口のギャザー。丹念な手仕事と細番手の上質な生地、双方があって初めて表現できるもの。
そしてこのシャツにインスパイアされ、素材から作ったのが上の写真右の一枚。

小林 「今の織機で織れる限界の細さに挑み、80番のリネン単糸を高密度に打ち込んで風合いを再現しました。袖にはギャザーを入れ、独特のたるみを表現しています。この袖のパフッとした感じはフランスの古いシャツに特有のもの。あえて芯を入れない柔らかな襟もしかり、僕はここにフランスの伊達を感じます。なお、デザインはこれとは別に、彫刻家のロダンがアトリエで着ていたスモック(シャツ)を参考にしました」。
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◆ 「オーベルジュ」のバスクシャツ「シャルロット」

当地のカットソーにはない心地よさを求めて

▲ゆったりしたベーシックと、もっとゆったりしたビッグの2種があり。シャルロット(右)2万4000円、ビッグシャルロット(左)2万8000円(ともにホワイト スロウガン)
フランス古着の素材に並々ならぬ愛着をもつ小林さんですが、ザ・フランス服たるバスクシャツについては、カットソー生地が厚すぎたり伸びすぎたりで、意外や納得の行く古着に出会ったことがないのだとか。そこで、自身の理想を素材からカタチにしたのがこちら。

小林 「素材は、高級超長綿のスビンコットンの中でも最も上質といわれる、一年目のコットンボールのみを集めた“スビンゴールド”。その糸をガチガチに引き揃え、超度詰めで編みました。ハリといい滑らかなタッチといい、これ以上ない!と思っています(笑)」。

シルエットのモチーフはずばり、フランスの女優、シャルロット・ゲンズブールが着ていたそれ。

小林 「1985年の映画『なまいきシャルロット』の衣装を参考にしました。水兵のそれにはないオーバーサイズの着方が、性差を超えてカッコよく見えて。ユルッと肩の落ちた感じが、今のテイストにもマッチしていますよね」。
※掲載商品はすべて税抜き価格です

● 小林 学

オーベルジュ/スロウガン デザイナー。1966年神奈川生まれ。文化服装学院を卒業後、渡仏。服飾の知識を深め、帰国後は南仏発祥のデニムブランド、岡山のデニム工場にて商品企画に携わる。1998年に自身のブランド「スロウガン」をスタート。2018年に「オーベルジュ」を立ち上げる。YouTubeにて「AUBERGEチャンネル」を配信中。誰よりも深く、楽しく服を語る姿にファンが多い。

ホワイト スロウガン 03-3770-5931

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