無彩色だからこそ、その表情が記憶に残る
洒脱なオヤジの余韻の正体はニュアンスグレー!
なぜ、オトコはグレー(シルバー)のアストンマーティン、ポルシェ911に憧れをもってしまうのでしょうか。その答えは明確で、グレーが無彩色だから。
どういうことかというと、白や黒と同じようにグレーには色味が存在せず、人々の記憶には明るいか暗いかの明度のみが残る。すなわち、陰影から生まれる造形の美しさがもっともわかる色味がグレーであるため、人々は車体が美しいグレーのクルマに魅力を感じてしまう、というわけなのですね。

ピッティ取材でなんの話をしてるんだとツッコミが聞こえてきたので本題に戻りますが、ファッションにおいてもシンプルな装いよりも、ニュアンスをつけた装いのほうが記憶に残り“洒落た人”として映るのは明白かと思います。
しかし、これみよがしに派手な装いでニュアンスをつけるのは、ちと頑張っている感も否めなくて。詰まるところ、控えめだけど、洒落たニュアンスを鮮明に記憶させることができるのは、やっぱりグレーなのです。そんな色を纏ったグレー巧者が、我々には“美しく、お洒落なオヤジ”として映りました。
【01】 柄のニュアンス
グレーのツイードコート
超定番かつ無彩色のグレーであるが故に、人々の印象に残りにくいグレーのコート。しかし、素材にニュアンスのあるツイードのソレになった途端、柄の印象が色濃く写り、余韻が残る洒脱なオヤジへと昇格されるのです。

▲ グレーヘアにグレーのツイードコートは鬼に金棒の組み合わせ。

▲ 無彩色のグレーだからこそ、色付きの小物、巻きモノが映えます。

▲ 素材のニュアンスにとどまらず、襟で動きのニュアンスをつけるあたりはさすがイタリアオヤジ。
【02】 コーデのニュアンス
肩掛けのグレーニット
小慣れた雰囲気を演出し、コーディネートにアクセントを与えてくれる肩掛けニット。そんな小技のアイテムが無彩色のグレーになった途端、これみよがし感はなくなり、さらりと洒落感を漂わせてくれるのです。

▲ 茶、白、グレーのニュアンスカラーでまとめているのに余韻が残るのはグレーニットが生み出すサラリなアクセントのおかげ。
【03】 シルエットのニュアンス
ワンクッションのグレスラ
これまたオヤジの定番アイテム・グレーのスラックス。基本はトップスを輝かすバイプレイヤーですが、動きが出やすいワンクッションの丈であればシルエットのニュアンスが際立ち、主役の一本になります。

▲ ワンクッションかつハイウエウストという難易度高めの一本でも、グレーなら気負わず着用できます。
【04】 素材のニュアンス
グレーのデニム
デニムの良さといえば、言わずもがな色落ちや、バキッと入ったおヒゲさんですよね。そんなデニムの長所を引き立てるのは意外や意外、インディゴではなくグレーでした。

▲ レザーブルゾンにグレーデニムという野暮ったくなりそうな組み合わせですが、無彩色同士の組み合わせ故、モダンな雰囲気に。

ドレス顔の「ブリリア」のグレデニ
ピッティのブースにて発見した「ブリリア」のグレーデニム。ゆったりとしたお尻周りから裾にけてテーパードしていく様は実にエレガントでした。写真左側のモデルはタックが入っているため、ジャケットやシャツなどのドレスなアイテムと合わせても洒脱にキマりそうです。
【05】 差し色のニュアンス
脇役のグレー
無彩色故に、ほかの色を際出たせる役割も担えるグレー。黒や白などよりも優しい風合いが漂うグレーだからこそ、ほかの色と喧嘩をせずに脇役に回れるんです。

▲ ワンポイントで入れた紫のニットがこれほどまでに効いているのはグレーのおかげかと!

「ブルネロ クチネリ」も脇役グレーを多用
ピッティ会場で、ひときわ異彩を放つブースを構えるクラシコの帝王「ブルネロ クチネリ」。ブース内にディスプレイされていたマネキンの多くにグレーのアイテムが着せられていたのですが、差し色にボルドーが多く使われていました。各ブランドが注目するクチネリ様がグレー×ボルドーを多用していたということは、来年の冬のトレンドになりそうですね。
ピッティコレクションもグレーの余韻に魅了されて
三者三様のアプローチで“人の佇まい”を軽やかに、そして美しく描いていた今回のピッティで行われたショー。その空気感をもっとも雄弁に物語っていたのが、やっぱりグレーでした。
◆ ソウシオオツキ
キタノ・ブルーならぬオオツキ・グレー
スタンディングオベーションを呼んだ、「ソウシオオツキ」のコレクションは、1980〜90年代のパワードレッシングに日本的感性を重ねた提案でした。緻密なパターンとドレープが生む“動き”が随所に仕込まれ、美しい佇まいを設計。軽やかで端正、それでいて男らしい。そう、まるでキタノ映画に登場する人物のような、“美しい格好良さ”が心に残るショーでした。
◆ ヘドメイナー
心に美しい余韻を残すグレーの輪郭美
包み込むようなビッグシルエットが印象の「ヘドメイナー」。色数を抑えた世界観と抑制された動きが、服というより“人の佇まい”として立ち上がってきます。直線的な肩、深く落ちる身頃、柔らかな素材感、削ぎ落とされた縫製ライン……。力強いのに、語りすぎない。でも、しっかり美しい余韻が残る。そんなエレガンスに心を掴まれました。
◆ シンヤコヅカ
思わず触れたくなるグレーカラーアート
記憶や感情を纏わせるようなコレクションを披露した、「シンヤコヅカ」。柔らか〜なフォルムに、わずかな歪みと余白。歩くたびに揺れるシルエットラインは、もはやアートのような美しさです。まるで日常のワンシーンを切り取ったかのような空気感も◎。「土屋鞄製造所」とのコラボバッグも、会場では、密かに話題になっていました。

◆ セビロサンポ
"スーツ姿で街を歩く"参加型パフォーマンス
背広を着て、フィレンツェの街を歩く。モデルではなく、関係者や来場者といった参加者がクラシックな背広を纏い、会場から旧市街までを練り歩く。テーラードを“展示”ではなく“日常”に戻した、ささやかで美しいイベントでした。そしてLEONも、来季ピッティでイベントをするかも!?
2026年4月号より
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