エルメスが愛され続ける、その理由

エルメスはラグジュアリーブランドではなく、クオリティを追求しているメゾン。そのクリエイションは、確かにあからさまなデザイン性を求めず、まさしく質で勝負している印象です。しかし、だからと言って単にシンプルとは違います。質にプライオリティを置きながらも、スカーフでは多彩なプリント表現を、ネクタイでは遊び心あるモチーフを披露しています。
 
1837年に、パリで馬具工房を開いたのがそのはじまり。工房が出自とあって、どのアイテムにおいても職人気質が潜みます。そんな姿勢を堪能することができる代表的なアイテムのひとつといえば、やはりスカーフ。

様々なプリント表現を駆使するエルメスですが、最も有名なのがシルクスクリーン。1色ごとにフレームを必要とし、また正確に色を重ねる技術が必要とされる同技法。その工程ではデジタル技術なども活用しつつ、いまだ手刷りへのこだわりを持ち続けています。

その技術を用いて表現されるスカーフの柄の多彩さはお見事。馬具に着想を得たクラシックなものから、アーティストによる斬新なものまで、技術と自由な発想が交錯したスカーフは、額縁に入れればそのままアート作品になるほどです。
 
そして男性としては、ネクタイのモチーフの遊び心も大いに気になるところ。モチーフで遊ぶとチープに見えることがありますが、エルメスならあくまで格を保てますからね。

「カレ」と呼ばれるエルメスのスカーフ。色柄のバリエーションが多彩なことで名高いアイテムで、こちらの一枚も実にユニーク。エルメスのアイコンである馬を、ペーパークラフトの展開図としてデザインしています。

こちらのカレも、オトコ心をくすぐる絵柄に。シルクにプリントされるのはスペースステーション。その船体には、エルメスの名も記されています。よく見ると右上には馬も。躍動感ある構図が、ワクワクさせてくれます。

こちらはカラバリ。オトコ心どころか子ども心もくすぐる絵柄は、ハイブランドでありながら気取り過ぎず楽しめます。

エルメスのタイにおけるモチーフは、あからさまに主張しないのが魅力。遠目にはベーシックなパターン柄に見えて、よく見ると実は遊び心があるという控えめな柄使いは、ビジネスにおいて重宝します。

モチーフの世界観を示した柄が、小剣の裏側にプリントされています。左2本は馬術柄で、小剣には優勝カップも。その右はスケートボードで、小剣にはランプを。右は釣りの浮きが描かれています。

こちらはホースシュー、馬蹄柄です。エルメスといえば、やっぱりこのモチーフでしょう。よく見ると、所々にアクセントカラーを効かせています。モチーフとしては比較的シンプルですが、その差し色使いにやはり遊びをにじませます。