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2022.01.14

プロフェッショナルが愛用する名品【相澤陽介編】

多くの人から時代を超えて強い支持を受ける世界の名品。なかでも感度に優れたデザイナーという職業の人は、一体どんな名品をチョイスしているのでしょう? 国内外を股に掛け活躍するクリエイターに、とっておきのエピソードを交えつつ愛用の名品を見せていただきました。

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写真/干田哲平 文/石井俊昭 構成/長谷川 剛(TRS)

自分が愛情を持って使えることが「名品」の条件

▲ オーデマ ピゲのロイヤルオーク(右)は、グレーの文字盤のモデルが発売になったときに購入。ヴァシュロン・コンスタンタンのヒストリーク・アメリカン1921を買ったのは10年ほど前。いずれもリセール対象としては考えず、普段からガンガン使っているそう。

王道からちょっと逸れたものが好き

パリコレ常連のホワイトマウンテニアリングを率いる一方で、海外の有名ブランドとのコラボレーションや、国内の大手企業や公共団体との仕事など、従来のファッションデザイナーの枠組みでは語れないほど、活動の場を広げている相澤陽介さん。そんな豊富な経験を通じて、数多くの“本物”に触れてきた相澤さんは、もの選びの基準をまずは「信用できること」だと言います。

「腕時計は20本ほど所有していて、毎日付け替えます。例えば、時計好きが多いイタリアのクライアントと会う日は、わざとひとクセあるものを付けて行くと、会話が弾んで場が盛り上がるんです。オーデマ ピゲのロイヤルオークは人気の高いネイビーや白はパスして、あえてグレーの文字盤を選択。ヴァシュロン・コンスタンタンのほうもオーヴァーシーズではなくヒストリーク・アメリカン1921というモデルを選びました。これは僕がクルマ好きなこともあって、運転の際にハンドルを握ったときに文字盤の12の位置が真上にくるように計算されたデザインが素晴らしいなと思って。イタリア人の知人がしているのを見て真似しました(笑)」

世界三大時計と呼ばれる、パテック フィリップ、オーデマ ピゲ、ヴァシュロン・コンスタンタンは、一度は体験しておきたいと10年ほど前から一本ずつ購入。ちなみに取材当日、腕にしていたのはパテック フィリップのゴンドーロでした。時計に関しては、“いいものはいい”というスタンスですが、王道からちょっと逸れたものが好きなよう。これらの高級時計も、スノボの時に付けるG-SHOCKやテニスの時に付けるスウォッチと同じように、日常使いの一本として愛用しています。
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▲ 初めてイタリアのクライアントとのミーティングに臨んだとき、ロレックスの「デイトナ」を付けていたところ、時計好きには当たり前すぎたのか、話題にも上らなかったとか。それ以来、会話の糸口になるような時計を選ぶようにしているそうです。
誰もが知っている名品ではなく、どこかユニークさがあるほうが好きという意味では、この日履いていたエルメスのショートブーツもとてもお気に入りの様子。確かに、意外性があるルックスは、会話の切っ掛けにもなりそうです。

「エルメスなのに、アメリカのワークブーツみたいでいいですよね(笑)。このほかにクレープソールのタイプもあり迷いましたが、こちらのゴツいソールを選びました。ラストが細くてパンツの裾とつながって見えるところが好きで、最近はよくスラックスに合わせて履いています。カジュアルだけれど、エレガントさもあるのでスーツにも合わせられるところも気に入っています」


昨年は、2019年からクリエイティブディレクターを務めるJ1北海道コンサドーレ札幌の運営会社の取締役に就任。グッズやユニホームを製作し、売り上げに貢献したことが評価されての抜擢でしたが、それ以降、株主の方々にお会いする機会が増え、最近はスタジアムを訪れる時もジャケットやスーツ姿が多くなったといいます。
▲ こちらのショートブーツはエルメス銀座店で購入。相澤さんが革製品を選ぶときは、長く使えそうなだけではなく、作り手の愛情が注がれた、自社で作っていることが伝わってくるものが基準だとか。履き込んで、味わいが出るのが楽しみです。
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自分の感性にフィットしたものには夢中に

また、気に入ったものはとことん揃えたくなる性分で、ペンケースやウォレット、カードケースなどの革小物は、ボッテガ・ヴェネタの「マキシイントレチャート」シリーズで統一。前クリエイティブディレクターのダニエル・リーが手がけた伝統のアップデートに刺激を受けたそうです。

「編み込むフェットゥーチェ(革ひも)の幅を広くしただけなのに、ものすごくフレッシュな印象を受けたんです。僕も経験したからわかりますが、リブランディングはなんとなくの感覚ではできない仕事。メゾンの歴史や伝統を丁寧にひも解いて、そこから論理を立てて周りを説得しながら新しいものを作らないといけないのを、当時、若干32歳の彼がやったのは純粋にすごいことだと思います」
▲ マキシイントレチャートのペンケース(左)とカードケース(右)がボッテガ・ヴェネタのもの。中央のスリムなペンケースは、日本の建築家が手がけるシュリンクスというレザーブランドで、発想が面白いのを気に入って2年ほど前にインターネットで購入したそう。
同様に、エルメスのキャップも繰り返し購入している逸品。短髪で、猫っ毛、というのもありますが、デザイナーという職業柄、アトリエにこもって仕事に打ち込む日でも、スタッフとのミーティングなどが突然入ることがあるため、相澤さんにとってヘアスタイルを気にせずに済むキャップは手放せないとのこと。

「実は、愛用していたホワイトマウンテニアリングのキャップを失くしてしまい、その代用品として出張先の空港で買ったのが最初。エルメスだけれど買いやすい価格だったのと、日本ではあまり見ない形だったので興味本位で手に取ったのが切っ掛けです。帽子は顔と近いので安っぽいのはイヤ。浅めに被れるのが自分的にはすごくしっくりきて、8年ぐらい前から新作を見つけるたびに購入しています。このキャップとスウェットパンツ姿は、アトリエで仕事するときの僕の定番スタイルになっています」
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▲ 空港で購入し、そのまま機内で被ることが多いというエルメスのキャップ。シーズンによって素材を替えて新作が投入されるようで、相澤さんは秋冬用のウールやカシミヤのキャップだけでなく、春夏のコットン製のタイプも所有。
また、エルメネジルド ゼニアのサングラスも、いくつも所有するほどお気に入りの品。同社のデザイナーに友人がいて、ミラノのアトリエにも何度か訪問したこともあるというエピソードは、相澤さんがホワイトマウンテニアリングを開始以来、グローバルな交友関係を着々と築いてきた軌跡をうかがわせます。

「目の色素が薄いせいか、少しの光でも眩しく感じてしまうので、サングラスはクルマを運転する時の必需品。そのため、いつも似合うものを探しているのですが、イタリア製の多くは、デザインが気に入っても鼻の高さが合わないので諦めていました。でも、これは掛けてみたらバランスが良かったので、その場ですぐに購入。気に入ってその後、2本買い足しました」

相澤さんの口から、サングラスでエルメネジルド ゼニアの名前が出るとは思っていませんでしたが、そういった先入観を持たないのも相澤さんの特徴。2020年にカルフォルニア発のストリートブランド、フィア オブ ゴッドとコラボレーションしてからは、カジュアル度が増してさらに注目しているそうです。
▲ 上が、最初に買ったエルメネジルド ゼニアのサングラス。中上と中下は昨年、色違いでまとめて購入。下は、ホワイトマウンテニアリングとコラボレーションしたこともあるL.Aを拠点にするアイウェアブランド、ジャックマリーマージュのJMM AKIRAというモデル。バートン サーティーンのデザイナーをしていたときに、オーナー兼デザイナーのジェロームさんを紹介されて意気投合。黒澤明監督からインスパイアされたこの一本をプレゼントされたそう。
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生活スタイルに合った実用性が不可欠

相澤さんの名品談議はまだまだ続きます。ホワイトマウンテニアリングでは、以前からブリーフィングとのコラボレーションでバッグを製作してきましたが、ようやく自信を持って「名品」と呼べるものができたんだとか。

「僕がコラボレーションする時は、まずは相手の形をベースにして、自分の生活スタイルに合わせてアレンジするのが基本。今回は、バリスティックナイロンに代表される、ヘビーな印象のブリーフィングのバッグを軽くしたいという狙いがあって、素材にミリタリーをイメージさせる軽量かつ耐久性のある瓢箪型のキルティングを使いました。トート、ショルダー、リュックの3仕様で、縦でも横でも持てるのは飛行機に乗るとき本当に便利。コンサドーレの仕事で札幌に行く時はもっぱらこれです」

保護パッド付きのPCポケットなど5つのポケットを装備し、機能性も十分。最近、軽井沢に第2のアトリエを設け、山と都会の2拠点を行き来しながら仕事をするようになったのも、こうしたアイデアを生んだ理由なのかもしれません。
▲ 軽井沢のアトリエには、このバッグに替えの下着とポーチ、PC、iPadだけ入れてクルマで出掛けることが多いそう。向こうにもモニターを置いてあるため、到着してPCを接続すればすぐ仕事できる環境に。バッグ W51×H35×D13㎝。5万8300円/ホワイトマウンテニアリング×ブリーフィング(ホワイトマウンテニアリング オンラインストア)
一方、日常的に使っているバッグはシンプルそのもの。女性たちの間で大ブレイクしているザ・ロウのトートバッグは主に外でのミーティング用として。それより大ぶりなエルメネジルド ゼニアのほうは、PCがきれいに収納できて資料を大量に入れられるので、プレゼンの時などに愛用しているそうです。

「ゼニアを定期的にチェックするようになったのは、デザイナーの友人と知り合ってから。レザーやテキスタイルに関しては、イタリアのブランドは価格と品質のバランスがすごく良いんですよ。ザ・ロウのトートは、二子玉川のストラスブルゴにフラッと入った時に衝動買いしました。ウィメンズだけれど、直感的に良いなと思って。どちらのバッグも黒なのは、僕自身、黒い服を着ることが多いため
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▲ ザ・ロウのトートバッグ(左)はiPadとタッチペンだけで大丈夫な時に。その日のスケジュールに合わせてバッグも使い分けるのが相澤さん流です。ちなみにiPadが手放せなくなったのは、実はつい最近。これまでスタイル画はペンで描いていましたが、一年半ほど前に多摩美の教え子の真似をして使ってみたところ、10倍近く効率が上がったとか。
相澤さんが選んだこれらの「名品」は、一見、共通点がないように思えて、話を聞くと実はちゃんと筋が通っています。それは、自身の哲学と合うかどうか。ホワイトマウンテニアリングのコンセプトでもある、“デザイン、実用性、技術の3つの要素をひとつの形にして、市場に屈しないものづくりをする”という姿勢と、どこか似通っています。「名品」というと、古くからある定番を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、相澤さんにとっての名品は、高品質であることを前提に、自分の生活スタイルのなかに上手く溶け込んで、身に着けたり視界に入ることで、心が落ち着いたり、逆にワクワクさせてくれるもの。

「実際、そのほうが長く使うし、僕自身もそういうものを作っていきたいと考えているからでしょうね。2020年春夏から“リポーズウェア”という名前でリラックスウェアのコレクションを始めたのですが、同じ形をシーズンごとに素材を替えて展開しています。ランウェイショーは全体的な構成を決めてから考えるので、演出的には必要だけれど、僕の生活スタイルとは無関係の服も出てきます。そのため、製作時に苦しいと感じることもありますが、リポーズのような定番は自分が着るから作っていてとても楽しいんです」
▲ ここからは番外編。相澤さんに仕事道具における「名品」を紹介してもらいました。ペンは書き味にこだわって、紙によっても選ぶのが替えるんだそう。モンブラン(左)の万年筆とウォーターマン(中左)、カランダッシュ(中央)のボールペンは契約書にサインする時などに使用。カランダッシュの芯ホルダー(中右)はラフスケッチ用。本番のスタイル画を描くときは、学生時代から愛用している0.3、0.5、0.9㎜のステッドラーの製図ペン(右)を使い分け、細部を精密に仕上げていきます。
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▲ 昨年夏に、都内のアトリエの引っ越しを行った際、室内の色とインテリアをブラック&ホワイトに統一したことで、モノトーンに映えるシルバー色の文房具に目が行くようになったそう。上から時計回りに、テープカッターは土台が外れてマグネットでデスクの側面などにもくっつけられるもの。ペーパーウェイトにしている四角い金属は、数カ月前に蚤の市で見つけたもの。アトリエでは生地見本やスタッフへの伝言を書いたメモが飛ばないようにするためペーパーウェイトは必需品。マスター&ダイナミックのワイヤレスイヤホンは、コロナ禍で増えたビデオ会議用。メジャーと生地見本を着る時に使うハサミは六本木のリビング・モティーフで購入。「仕事に使えそうなシルバー色の文房具を見つけると、うれしくてつい買ってしまうんですよ(笑)」と相澤さん。

● 相澤陽介 (デザイナー)

1977年生まれ。多摩美術大学染織科を卒業後、2006年に「ホワイトマウンテニアリング」を始動。これまでに「モンクレール W」「バートン サーティーン」「アディダスオリジナルズ バイ ホワイトマウンテニアリング」など、さまざまなブランドのデザインを手がける。19年からは、北海道コンサドーレ札幌のディレクターにも就任。また、20年春夏より「ラルディーニ バイ ヨウスケ アイザワ」もスタート。その他、多摩美術大学の客員教授も務める。

※掲載商品はすべて税込み価格です

■ ホワイトマウンテニアリング オンラインストア

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