この祭りは370年の歴史を誇り、江戸三大祭りのひとつにも数えられ(あとの2つは神田祭と山王祭)、長きにわたって江戸の夏を彩る風物詩として多くの人々に愛されてきました。
特に今年は3年に一度の本祭りである例大祭。本祭りの年は、深川周辺の53基の町神輿が勢揃いして約8キロの道のりを練り歩く「各町神輿連合渡御(とぎょ)」が行われるとあって、皆の期待も特別に大きく膨らみます。
今年の春から江東区民となった私にとっては初めての夏祭りです。見物だけではありますが、早朝から出発地点の八幡宮前に繰り出しました。7時過ぎには53基すべての神輿が八幡宮前の永代通りを埋め尽くします。その圧倒的に華やかな光景にはただため息が出るばかりです。
そして7時半。安全祈願を行うため神輿総代と鳶頭(かしら)集が大鳥居の前に大きな輪を作ります。男たちの風情ある江戸木遣りの声が響きわたり、威勢のよい一本締めが行われます。ここで打ち上げ花火を合図にいよいよ渡御のスタートです。
その後も次々と神輿がスタートしていき、あたり一面に男たちの威勢の良いかけ声が溢れます。早朝にもかかわらず沿道は、見物客で埋め尽くされ、八幡宮の前は身動きすら出来ない状況です。
この祭りは真夏の暑さを防ぐため、沿道から神輿や担ぎ手に威勢良く水がかけられる、「水かけ祭り」としても有名です。この日も早朝こそ曇り空だったものの、スタートすると青空が覗いて、急に真夏の陽気に。神輿の担ぎ手たちは、皆、気持ち良さそうに水を浴びています。
祭りの半纏は日常=「ケ」から、祝祭=「ハレ」へと移行するためのコスチューム。それを纏うだけで、誰もがカッコよくなれる魔法の、衣装なのですね。
例えば祭り装束に欠かせないはち巻き。基本はねじりはち巻きですが、深川には「向こうはち巻き」と呼ばれる特別な結び方があります。そのような、ちょっとした差異を楽しむ趣向こそが江戸の洒落だったのかと。
今度、本祭りが行われるのは、3年後の2020年。東京は、オリンピックに沸いているはずです。海外からの観光客も急増していることでしょう。そんな客人たちに、ぜひもっと日本の伝統的な祭りや装束を見てもらいたいものです。そして、もっともっと日本の素晴らしいセンスを世界に届けたいものだと切に思う次第です。