先月のことですが、両国にある北斎美術館の内覧会に行った時、日本茶をハンドドリップで淹れる不思議な出店サービスに遭遇しました。

もう一度あのお茶が飲みたいと思って調べると、三軒茶屋で「東京茶寮」という日本茶専門店(カフェ)を開いていることがわかり、出かけてきました。

三軒茶屋の駅から7~8分歩いた場所で、お世辞にも交通の便が良いとは言えませんが、雨の休日にもかかわらず客がひっきりなしでかなりの人気店のようです。
白い壁に囲まれて9席ほどのコの字型のカウンターが配置された店内は、何やらサロン的な密室感があって、知らずに入れる雰囲気ではありません。
カフェといってもメニューは1種類「煎茶2種飲み比べ+お茶菓子」のみ。煎茶7種のなかから2種を選び、これにお茶菓子がついて1300円となっています。
日本茶もコーヒーと同じく「産地」「品種」「蒸し・焙煎」によってフレーバーが大きく異なってきます。こちらの店では、徹底した湯温と蒸らし時間の管理によって各茶葉の風味を明確に感じられる飲み比べメニューが組まれています。

1煎めはお湯の温度を70度と低めにして、お茶の香りと甘味を楽しみます。実に豊かな旨みが口の中いっぱいに広がります。
2煎めは80度に温度を上げて渋みと苦味を味わいます。よりお茶の色味も増して、これぞ日本茶という大人の味わいが楽しめます。
そして3煎めは2種のうちからひとつを選んで、玄米を足して玄米茶として新たな風味を堪能できます。
これで都合5杯。一緒に供されるお茶菓子とともにゆっくりと味わうと、大体、飲み終わるまで40~50分かかります。


何故ドリップなのか? という意味合いもそのプレゼンテーションとの関連が大きいように思いました。もちろん急須に比べてドリッパーは茶葉とお湯の量や蒸し時間を細かく管理しやすいというメリットもあるのでしょう。
でも、それ以上に、「茶を淹れる」という行為を現代風にアレンジして可視化することで、日本茶を楽しむ空間がぐっとスタイリッシュなものに変わったことが大きいように思います。
結果、店内はサードウェーブコーヒー店と侘茶の茶室をブレンドしたような不思議な空間となり、それは日本茶を楽しむ新しいライフスタイルの始まりを予感させるものでもあります。
茶葉の味わいや変化の妙はひとりよりそれを語り合える彼女と一緒に楽しみたいもの。ぜひふたりで出かけて最新の日本茶空間を味わってみてくださいませ。
■「東京茶寮」
住所/東京都世田谷区上馬 1-34-15
営業時間/13:00~20:00(平日)、11:00~20:00(土日祝)
定休日/月曜日(祝日の場合翌日休み)
URL/www.tokyosaryo.jp/
予約・問い合わせはHPへ