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2018.12.07

0~100km/hを2.5秒!! ブガッティ・ヴェイロンは凄かった!!

登場時、世界150台限定と謳われ、日本円で1億7000万円ほどの値がつけられたブガッティ・ヴェイロン。筆者が垂涎の気持ちで試乗した、その乗り心地とは?

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文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト) イラスト/溝呂木 陽

ニコル・レーシング・ジャパンから“飛び上がるほど嬉しい電話が入った”のは、2006年頃だったかと思う。

それは「ブガッティ・ヴェイロンに乗ってみませんか?」とのお誘いの電話だった。飛び上がるほど嬉しかった僕の気持ち、クルマ好きの方ならおわかり頂けるかと思う。どうやら、ニコ・ローケレ社長からのご指名だったようだが、光栄だった。

世界150台(最終的には300台)の限定車。当時の日本での価格は1億7000万円ほどだったはずだが、購入に当たっては資格審査が行われたという。どんな審査かは知らないが、「ブガッティのイメージを損なわないための諸々の審査」ということであり、その中に「経済力審査」が入っていたのは間違いないだろう。
ブガッティ・ヴェイロンは、1億7000万円を支払ったから終わりというわけにはゆかない。例えば、ミシュランが開発した専用タイヤの交換指定距離は3000km。交換はフランスのミシュラン本社でしかできないので、空輸で送る。その合計費用は約300万円と聞いた。タイヤ交換2回に1回はホイール交換も必要とのこと。それには500万円かかる。

さらに言えば、1年毎の定期点検が200万円、エンジンオイルの交換も200万円ほどかかるとか。オイルがべらぼうに高価ということでもないようなのだが、交換にかかる作業/手間が大変らしい。オイル量は23ℓ。ちなみに、冷却水は50ℓとのこと!

エンジンは8ℓのW16 気筒+4ターボチャージャー。最高出力が1000psではなく、1001psというところに、ブガッティのプライドが見え隠れする。125kgmのトルクも規格外だ。

ありとあらゆるクルマに乗ってきたが、ヴェイロンを前にしたときの気持ちは特別だった。すごく嬉しかったのはもちろんだが、それ以上に緊張感が上回った。それはフェラーリやランボルギーニでも感じたことのない緊張感だった。

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いろいろな注意とかがあると思っていたのだが、「どうぞ楽しんでください!」といきなりドアを開けられたので、さらに緊張感は押し上げられた。基本的なコクピットドリルは受けたが、とくに難しいところはなかった。贅沢な仕様に、素材に、造り込みに、ただ圧倒されていた。慎重にドライビングポジションを決め、ステアリングホイール、セレクターレバー、アクセル/ブレーキ・ペダルの位置と感触を確かめてから、ベルトを締めた。

ヴェイロンの姿は、モーターショー等で何度か見ていたが、動いているヴェイロンを見たことはなかった。なので、1001psのW16 がどんな唸りを上げ、吠えるのか、想像しただけで興奮した。

始動/アイドリングは想像していたものよりずっと穏やかだった。滑らかに始動し、野太くはあるものの、遠くから聞こえてくるような感じの低い音とともにアイドリングする。

駆動方式は4WDで、トランスミッションは7速DSG。このDSGの躾がまたいい。W16の滑らかさと躾のいいDSG、そして4WDの組み合わせは、呆気ないほど滑らかに発進し、滑らかに走る。街走りも難なくこなす。

ところが、ちょっとその気になってアクセルを踏み込むと、穏やかな表情は豹変する。とくに、モードスイッチをスポーツに切り替えて踏み込むとすごい。十分予期してはいたのだが、感覚がついて行かない。シートに強く押しつけられた身体の感覚は金縛り状態と表現してもいい。

そして、W16は凄まじい咆哮でコクピットを包み込む。凄まじい咆哮は、同時に凄まじい快音でもある。この加速と快音を「恐怖」と受け取るか「快感」と受け取るかは乗り手次第。僕はといえば、半々くらいと言えばいいのか。恐怖心もあったが、それを無理矢理にでもかなぐり捨てて快感に浸りたい、そんな感じだった。

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それにしても、0~100km/hを2.5秒の加速をどう表現したらいいのか。F1(ほぼ2秒前後だろう)より0.5秒遅いだけ…というのがもっともわかりやすい喩えだろうか。僕の場合、全開にする機会はほんのわずか。それも短い距離でしかなかった。それでも、心が震えるほどの加速を自分自身の運転で体験できたのは貴重だった。それはほんの一端だけにしかすぎないし、ボンヤリとしたものでしかないものの、F1の加速を体感としてイメージできたような気がした。それは、F1がはるか遠い、異次元の世界であることを実感させられた瞬間でもあった。

ヴェイロンの0~200km/hは7.5秒、0〜300 km/hは16.7秒とされる。先に書いた「アウトバーン、300km/hへの挑戦」が、GT-Rではなくヴェイロンだったら、なんら構えることなく、ほんのちょっと長いストレートに出会いさえすれば何度でも届いていただろう。

ヴェイロンの実測最高速度は407km/hだが、これまたケタ外れだ。僕は、300km/hの感覚はわかっているが、そこからさらに100km/h以上速い領域の速度感とはどんなものなのか。

ヴェイロンが、VWのテストコースで407km/hを出したときの映像を見たが、380km/h 辺りまでは比較的容易に達したように見えた。しかし、そこから上はかなり時間を要した。カメラはドライバーの姿も捉えていたが、とくにバンクでのタテGの凄さ、振動の凄さは、見ているだけで恐怖を感じた。ドライバーの顔は完全に歪んでいた。僕には耐えられないと思った。

加速への、最高速度へのチャレンジは、昔から休むことなく続いている。人によっては、無駄なこと、バカなこと、と思うだろう。でも、こうしたチャレンジが、クルマの進化を後押してきたのは歴史が証明している。
●岡崎宏司/自動車ジャーナリスト

1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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