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2018.09.16

あの旧車に新車で乗れる!? クルマの楽しみが広がる新しい流れ

往年名車、新車で乗れたら……。クルマ好きなら誰もが夢想するだろう。じつは今、それが現実のものとなりつつある。あのボンドカーを継続生産を発表したアストンマーティンのリポートから、コンティニュエーション(継続生産)と呼ばれるクルマのもうひとつの楽しみ方を紹介しよう。

CREDIT :

文/小川フミオ

「ゴールドフィンガー」におけるジェイムズ・ボンド役のショーン・コネリーとアストンマーティンDB5
「ゴールドフィンガー」におけるジェイムズ・ボンド役のショーン・コネリーとアストンマーティンDB5
昨今の話題は、英国のアストンマーティンがボンドカーを復活させることだ。

映画「007」シリーズが始まっていらい、ボンドカーと呼ばれるクルマは数多く世に出てきた。なかで最も有名な1台はというと、「ゴールドフィンガー」(1964年)の「アストンマーティンDB5」だろう。

機関銃、可変ナンバープレート、スピナー、ポップアップ式防弾装甲、煙幕、オイル散布装置、イジェクションシート、攻撃用バンパーガード、運転席下の武器、無線電話……。これらの装備にぼくたちは心躍らされた。公道で使われたら迷惑なものも多いが。

そのアイディアあふれる「ゴールドフィンガーDB5」を、アストンマーティンみずからが生産すると発表した。これをコンティニュエーション(継続生産)と呼ぶ。

アストンマーティンでは「(映画に登場した)オリジナルに可能なかぎり忠実に」としている。回転式ナンバープレートなどが例として挙げられていた。現実的に考えると、装備が簡略された「サンダーボール作戦」(1965年)でのDB5のほうが向いているかもしれない。

アストンマーティンでは2016年にも「DB4GT」(1959年)のコンティニュエーションを生産することを発表している。サーキット専用モデルとして25台の限定生産とされていた。
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DB5コンティニュエーションの車体色はボンドムービーと同じシルバーバーチとなる
DB5コンティニュエーションの車体色はボンドムービーと同じシルバーバーチとなる
コンティニュエーションの特徴はシャシーナンバーがオリジナルから続いているところにある。DB4GTはオリジナルの最後の番号「0202R」から続けられるとアストンマーティンではしている。

DB5は1963年に発表された。DB4GTのアップデート版だ。3連のSUキャブレター装備の3995cc直列6気筒エンジン(282英馬力)を搭載。新開発の5段マニュアル変速機やガーリングのディスクブレーキも採用されていた。

「できるかぎりオリジナルに忠実に。ただし改良すべきところは改良します」。とプレスリリースでは謳われる。
生産台数は25台限定だそうだ。
DB4GTのデリバリーは18年第3四半期といわれていたので、そのあと、同じニューポートパグネルにあるアストンマーティンの工場でDB5も生産されるのだろう。

価格は驚きの275万英ポンド(+税)。1ポンド140円として約3億8500万円となる。究極の”ボーイズ・トイ(男の子のオモチャ)”といえる。

コンティニュエーションは、じつは、そう珍しい話ではない。もっとも有名なのは米国のスポーツカー、コブラである。コブラは1960年代のはじめ、米国人のキャロル・シェルビーが、英国のAC製のスポーツカーをベースにフォード製のV8を載せ製作したスポーツカーだ。レースでも速く、アイコン的な人気がいまもって衰えていない。
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シェルビー・コブラ427
シェルビー・コブラ427
いわゆるバルブ経済のとき、ぼくはある日本人からこのコブラのコンティニュエーションを製造する企画書を見せられたことがある。その企画はバブル崩壊とともに流れてしまったが、米国ではキャロル・シェルビーの会社がコンティニュエーションを手がけるようになった。

シェルビーじしんは2012年に他界しているが、シェルビー・アメリカンは、コブラだけでも「CSX4000および6000(427S/C)」「CSX7000(289FIA)」そして「CSX8000(289ロードスター)」と製造しているのだ。観ているだけで欲しくなる。

ジャガー・ランドローバーもコンティニュエーションに熱心だ。皮切りは、2014年9月に発表された「Eタイプ・ライトウェイト」だ。レーシングカー、Dタイプ用の直列6気筒エンジンを軽量ボディのスペシャルEタイプに載せたのがこのプロジェクト。
ジャガーEタイプ・ライトウェイト
ジャガーEタイプ・ライトウェイト
11台が1963年に、1台は1964年に製造されていた。ただし、1963年の「スペシャルGT Eタイプ」プロジェクトで計画されていたのは本来は18台。途中が変更があり、予定どおりの台数は達成しなかった。今回発表されたコンティニュエーションモデルには、その当時、割り当てられたまま使用されなかった残りの車体番号がつけられる。

2016年には「ジャガーXKSS」を同様に再生産することが発表された。このモデルは、1954年から1956年にかけてルマン24時間レース優勝の「ジャガーDタイプ」の公道仕様として製造開始された。

1957年に、しかし、工場の火災により、9台が焼失し、それ以降は生産が再開されることなく、結果として世に出たのは16台にとどまった。今回ジャガーでは保管していた図面で出来るだけオリジナルに忠実に製造することをめざすとしている。
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ジャガーEタイプ・ライトウェイト
ジャガーEタイプ・ライトウェイト
ジャガー・クラシックのエンジニアリングチームは、1957年型「XKSS」をスキャンして、ボディからシャシー、そして必要な全パーツに至るまで、デジタルイメージを構築したのだそうだ。価格は100万ポンド(1ポンド=140円として1億4000万円)だという。

ジャガーはさらに歩を進めている。2018年2月には、レーシングカー「Dタイプ」の製造再開を発表した。このモデルは1955年に100台製造される予定だったが、完成したのは75台。ジャガー・クラシックは、当時の設計を忠実に再現し、残りの25台をコンティニュエーション製造するのだそうだ。
こちらは「E-TYPE REBORN」としてジャガーが完全レストアして販売すると発表した10台限定のシリーズ1
こちらは「E-TYPE REBORN」としてジャガーが完全レストアして販売すると発表した10台限定のシリーズ1
価格がどれも億を超えるのはネックだが、もし買いやすい価格でこのようなコンティニュエーション製造が広まると、おもしろそうだ。”あのモデルをブレーキがしっかり効いて、エアコンも使えるようにして製造してほしい”とか、クルマ好きには楽しみが広がりそうである。

僕だったら……シトロエンDS(1955年)とか同SM(1970年)、BMW2002(1968年)などに乗ってみたい。ランボルギーニ・エスパーダ(1968年)もよさそうだ。アルファロメオ33ストラダーレ(1969年)はどうだろう、と夢が広がるのであった。
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● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト

慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。

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