2021.10.03

ロンドンバスの最高の楽しみ方

ロンドンを象徴する風景のひとつといえば、ロンドンバス。その象徴的なビジュアルは誰もの記憶に残っていることでしょう。海外渡航歴の長い筆者が伝授する、その最高の楽しみ方とは?

CREDIT :

文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト) イラスト/溝呂木 陽

岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第169回

ロンドンバスは楽しい!

ロンドンに行くと、否応なく目に入るのが赤い2階建て(ダブルデッカー)のバス。とくに、市の中心エリアでは列をなしている。

例えば、オックスフォード・ストリート、ピカデリー、リージェント・ストリート、ヘイマーケット、、こうした主要道路では顕著。
一般車両は影に隠れ、ロンドンバスだけが走っているかのような錯覚さえしてしまう。

僕が初めてロンドンに行ったのは1964年。その時から「ロンドンの象徴は赤い2階建てバス」のイメージが強く刷り込まれている。

路線も充実している。僕も詳しいわけではないが、ロンドンのどこへでも移動できる便利な足であるのは間違いない。

ロンドンは地下鉄も充実しているし、時間も正確。だから、移動時間が限られているときは地下鉄がいい。しかし、時間の縛りがないときはロンドンバスがオススメだ。

ちなみに、移動のほとんどは地下鉄とバスで用は足りるが、ちょっと気分を変えて、、テムズ川をボートで移動するのも悪くない。

この「リバーバス」は、テムズ川沿いにピアが設置されていて、たしか20分間隔くらいで運行されていると記憶している。

こうした公共交通を利用するのに便利なのが運賃のカードでの支払い。1回ずつ切符を買うのはとても面倒だし、高くもつく。

僕は「オイスターカード」を使う。日本でのSuicaやPasmoとほぼ同じものだが、詳細を知りたければ「オイスターカード」で検索すればすぐわかる。
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ロンドンバスは、単に移動に便利というだけではない。観光目的に利用するのも大いにオススメだ。

ということで、ここからは、僕のロンドンバスの使い方をご紹介する。

昔ながらのアナログ手法としては、「ロンドンバス案内図」で行き先を探し、路線を探すということになる。しかし今は、Google Mapを始め、いろいろな道案内アプリがあるので、使いやすそうなものを選んで携帯に入れておけばいい。

最近、ロンドンで泊まるのはピカデリー・サーカス直近のホテル。直近というか、ホテルを出ればそこがピカデリー・サーカスという立地だ。

ロンドンの中心地とも言える場所であり、地下鉄もバスも使いやすい。どこへでも簡単に行けるアクセスの良さはピカイチ。徒歩圏内にも楽しいところがあれこれある。

行き先さえはっきりわかっていれば、携帯に入れた道案内系や乗換案内系アプリで検索するだけのこと。

ロンドンやニューヨークや東京といった大都市なら、きめ細かな案内をしてくれる専用アプリがある。通信機器とその使用環境、ナビゲーションアプリの急速な進化で、かつては想像すらできなかったほど旅は楽になった。

12~13年ほど前までは、ナビゲーションアプリでいろいろひどい目に遭った。中でもいちばんひどかったのはローマでのこと。横道にそれるが、ことの顛末をご紹介しておこう。
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その時のローマには仕事で行った。そこで半日だけ自由時間がとれたので、ひとりでローマ散策にでかけることに。まずはタクシーでコルソ通り(有名な繁華街)に向かった。

ウィンドショッピングを楽しみ、カフェで寛いで、、素晴らしい時間が過ぎていった。「ローマの休日!?」は文句なしだった。

これで、帰りもタクシーで帰ればハッピーな1日が終わったのだが、別の帰り方を選んでひどい目に遭うことに、、。ナビゲーションアプリを頼りに歩いて帰ることにしたのだ。

ホテルまでの距離は5~6㌔程度だったと思う。いろいろ楽しみながらゆっくり歩いても2時間ほどあればホテルに着く計算だった。

ところが、、、ローマの道は複雑で、ピアッツァ(広場)から放射状に何本かの道に分かれるパターンが多い。そこでナビゲーションアプリは過ちを繰り返した。

まだ、いろいろな面での精度が低いことはわかっていた。でも、東京ではそこそこ使えていた。なので、ローマでも使えるだろうと考えたのが間違いだった。

ピアッツァから何本かに分かれる道を1本誤ると、とんでもない方に行ってしまう。そんなことを何度も繰り返しているうちに、どんどん時間は経ち、どんどん疲れてくる。

歩くのは好きだし、かなり歩けるとも思っていた。でも、こうなってしまうと楽しいはずもないし、疲れもどっと出てくる。

そこで、潔くナビゲーションアプリを諦め、タクシーを呼び停めればよかったのだが、そうはしなかった。「絶対に歩いて帰ってやる!」と妙に意地を張ってしまった。

で、ますます状況は悪化の一途を。結局、店頭にいた人や地元らしき人にホテル名と住所を見せて、、という原始的方法で帰り着いた。2時間程度の楽しい散歩のつもりが、4時間ほどの苦行に変わってしまった。

話のついでに、1990年頃、、もっとも初期のGPSナビで体験した「すごいナビゲーションぶり!」も、簡単にご紹介しておこう。

「第1世代GPS式カーナビ」装着の試乗車で箱根から東京都心の返却場所に向かった。通いなれた道でナビは不要だったが、性能チェックのため、ナビの指示通りに走った。

当時のGPSの位置精度は100m程度。なので、目的地にピタリ、といかないことはわかっていた。しかし、到着したのは芝浦ふ頭に近いコンテナエリア。酷すぎた。機材に固有の問題でもあったのだろうが、まぁ、そんなことも起こりうる状況だったということだ。
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かなり横道にそれたが、ロンドンバスに話を戻そう。

ただ目的地に移動するだけなら、席はどこでもいい。でも、「ロンドンの街を楽しみながら」となれば2階席は必須の条件になる。

さらに「観光目的で乗る」のなら、2階席最前列が特等席。そう、ロンドンバス2階最前列席から眺める光景は、超広角レンズを持ってしても及ばないほどの広がりである。

加えて、高い視点から見るので、同じ景色でも普段とはまったく違って見える。簡単に言えば、目の前がパーッと広がったような「気持ちのいい」見え方なのだ。街の景色を独り占めしているかのような感覚すら受ける。

だから、僕は観光目的で乗るときは、停留所に近づいてくるバスの2階最前列席が空いているかを確かめてから乗る。けっこう空いていることが多い。まぁ、地元の人がわざわざ2階に乗ることはないからだろう。

もう一つオススメがある。行く先を決めずに何でもいいから飛び乗ることだ。行きたいところがあればもちろんそこへ行くのは当然。
しかし、行きたいところが決まっていなければ、適当に来たバスに乗るのも面白い。

僕は昔から、旅先での観光地巡りはほとんどしない。いきあたりばったりで、なんとなくブラブラするのが性に合っている。

だから、ロンドンバスでも、あえて行く先を決めずに乗ることが多い。そうすると、思いがけない場所に出会えることになる。

2階最前列席から移ろう景色を楽しみながら、「あっ、ここ!」と思ったらバスを降りる。それは、商店街だったり、住宅街だったり、公園だったり、教会だっり、、いろいろだが、そこで降りて散策する。

歴史があろうとなかろうと、由緒があろうとなかろうと、、そんなことは関係ない。「いいな!」と感じればそれでいい。僕はこうして、ガイドブックには絶対に載っていないような「素敵な場所」に数多く出会ってきた。

その時注意するのは「乗ってきたバスの路線ナンバーを覚えておくこと」。そうすれば間違いなく出発点に戻れるからだ。

前回ロンドンに行った時、ピカデリーサーカスから、なんとなくウェストミンスター寺院行きのバスに乗った。

寺院に着いて中に入ろうとしら、入場制限で入れない。その日の礼拝は登録された限られた信者だけのものだった。仕方なく帰ろうとしたら、寺院入り口に並ぶ小さな列にいた日本人男性と目が合い声をかけられた。

「私と一緒なら入場できますが、いかがですか」と。もちろんありがたく受けさせていただき、礼拝に参加することができた。それも、英王室の公式行事などで、エリザベス女王始め王室関係者が座るような席で!

なぜそうとわかったのかというと、、ウィリアム王子とキャサリン妃の結婚式の映像が記憶に残っていたからだ。、、、厳かな礼拝も素晴らしい体験だった。

なんとなく乗ったウェストミンスター寺院行きのロンドンバスが、一生忘れられない体験をもたらしてくれたのだ。

とにかく、ロンドンバスは楽しい!

● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト

1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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