クロアチアはアドリア海をはさんでイタリアの対岸に位置し、メルセデス・ベンツでも「休養を求めているひとにとってのパラダイス」としている。
1990年代までは紛争の絶えなかった地域だが、いまは年間1300万人の観光客が訪れるという。美しい海岸線で知られ、大小の島が浮かぶ光景は瀬戸内海を思わせる。
それにもまして有名になったのは、2018年サッカーワールドカップでフランスと優勝を争ったことである。
その海岸線と低い山並みと、それらを縫うようにして走る高速道路が新型Aクラスの試乗コースだった。
シャシーも新開発で、乗った印象は、おどろくほど大人っぽいというか、現行モデルよりはるかに質感があがっていた。
クロアチアの海岸線を走り出してすぐそれを感じた。ステアリングホイールを切ったときの重さ。それに対する車体の反応。独特の“ため感”があって、後輪駆動のCクラスを思わせた。
120kW(163ps)の最高出力は現行のA180の1.6リッターユニット(90kW/122ps)よりだいぶパワフルで、それを実感させる加速力なのだが、いっぽうでサスペンションはていねいに路面の凹凸を吸収。落ち着いた走りだ。
メルセデス・ベンツではブランドの若返りを狙っているとのことだが、ぼくは、新型Aクラスはむしろおとなが乗っても不満のない出来だと感じた。
そのシステムのひとつはスマートデバイスとの連動。車両の情報が自分のスマートデバイスで読み取れ、レッカー移動されたり、盗難に遭いそうになった場合もすみやかに通知が届く。
もうひとつは、スマートデバイスがキー代わりになるデジタルアクセスキー。スマートデバイスを持っていればドアのロックとアンロック、エンジンスタートなどが出来る。
三つめはボイスコントロールシステムだ。「ヘイ、メルセデス」と呼びかけるとシステムが作動して、窓の開閉など安全性にかかわることを除き、空調やオーディオやシートヒーターなどの操作ができる。
さらにカーシェアリングにも対応している。登録しているひとに(デスクトップコンピューターなどで)許可を出せば、そのひとはデジタルアクセスキーと同様、自分のスマートデバイスで車両を運転できる。
スマートデバイスのように使えるといっても、メルセデス・ベンツでは手動でも出来る余地を残してくれている。センターコンソールのタッチコントロールも使えるのだ。
だが、「ヘイ、メルセデス」は慣れると便利だ。小さな声でも反応してくれたりするのでうれしいし、たとえばオンナのコと乗っているときもカッコつけられる。
こういうことを体験すると、自動車の少し先の未来はAクラスの向かう先にありそうだと、ぼくもメルセデス・ベンツの確信をシェアする気になったのだ。
新型Aクラスは2018年秋には日本にも導入されるようだ。MBUXが最初から使えるのかは現時点では不明である。
全長4419ミリ(現行モデル+120ミリ)、全幅1796ミリ(同+16ミリ)、全高1440ミリ(同+6ミリ)
キャビンはかなり大きくみえる
新世代の“シャークノーズ”が特徴的
A250のAMGライン
ボディにはあまりキャラクターラインをいれず面の張りで美しさを表現している
10.25インチのディスプレイが2枚並んだバージョン
AMGラインに用意されるインテグレーテッドシート装着車
液晶画面にはこのようにナビゲーション画面を大きく表示することもできる
「ヘイ、メルセデス」と呼びかけたら「なにをしたいですか?」と応えた
Mercedes meのアプリを使うとスマートデバイスで車両の状態がわかる
タッチコントロールでインフォテイメントシステムを操作することもできる
タッチコントロールの左にドライブモードセレクターがつくオプション
クロアチアのスプリットそばの街の風景
全長4419ミリ(現行モデル+120ミリ)、全幅1796ミリ(同+16ミリ)、全高1440ミリ(同+6ミリ)
キャビンはかなり大きくみえる
新世代の“シャークノーズ”が特徴的
A250のAMGライン
ボディにはあまりキャラクターラインをいれず面の張りで美しさを表現している
10.25インチのディスプレイが2枚並んだバージョン
AMGラインに用意されるインテグレーテッドシート装着車
液晶画面にはこのようにナビゲーション画面を大きく表示することもできる
「ヘイ、メルセデス」と呼びかけたら「なにをしたいですか?」と応えた
Mercedes meのアプリを使うとスマートデバイスで車両の状態がわかる
タッチコントロールでインフォテイメントシステムを操作することもできる
タッチコントロールの左にドライブモードセレクターがつくオプション
クロアチアのスプリットそばの街の風景
● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト
慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。