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2018.07.27

好調「ミニ」に見る“ヘリテイジカー”のブランディング

2016、2017年に続いて、今年も国内外国車車種別販売数で「ミニ」が好調のようだ。そんな「ミニ」の好調を支えているのは何か。先月開催された韓国『INJE SPEEDIUM』サーキットでの「MINI JOHN COOPER WORKS」の試乗会とともに考えてみる。

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取材・文/前田陽一郎(LEON.JP)

2016、2017年の国内における外国車の車種別販売台数で「ミニ」が、「フォルクスワーゲン・ゴルフ」を抑えて2年連続のトップに立ったということはちょっとしたニュースだった。

確かに「ミニ」とは言っても今や基本となる3ドアに加えて、5ドア、カブリオレ、クラブマンにクロスオーバーという横展開に、ワン、クーパー、クーパーS、ジョンクーパーワークスという縦の展開、しかもそれらにガソリンとディーゼルのエンジンが用意されているのだから、「ミニ」をひとつの車種と言って良いかどうかの疑問はある。なぜなら「ミニ」は車種ではなくれっきとした“ブランド”だからだ。
その“ブランド”としての展開のうまさは徹底的なヘリテイジ(=伝統・遺産)プロモーションにある。
ところで、「ミニ」は一般的に“ミニ”と“クラシック・ミニ”に大別するのがクルマ好きの間では基本だろうが、その点はクルマにさしたる興味をもたない人も同様かと思う。ところが「ミニ」と「ミニ・クーパー」となると、クルマに興味のない人にこれを説明するのはなかなか難しい。それはクーパーがなんたるかを説明するのが難しいというよりも、「ミニ」=「ミニクーパー」(というブランドもしくは車種名)だと思っている人があまりにも多いからだ。

その理由を書くにはあまりに記事が長くなるので割愛するが、ともかく「ミニ」=「ミニクーパー」という認識は日本に限った話ではなく、全世界的な一般認識として「ミニ」は「クーパー」とともに実に上手くブランディングされている。
先月開催された韓国『INJE SPEEDIUM』サーキットでの「MINI JOHN COOPER WORKS」の試乗会に参加してきた。試乗会とは言っても主催は韓国によるもので、そこには韓国のモータージャーナリストはもちろんだが、一般の顧客も参加する“サーキット走行会”のようなイベントだった。用意されたのは「MINI JOHN COOPER WORKS」のガソリンモデルで、基本となる3ドアにクラブマンとクロスオーバー。どれもモデルとしてはすでに日本でも発表済みのモデルだから、専門誌や専門サイトによるインプレッションは読まれている方も多いかもしれない。
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このイベントには「クーパー」の祖、ジョン・クーパー氏(1959年と1960年にワールドチャンピオンとなったクーパーF1チームのチーム責任者であり、「ミニ・クーパー」を創り上げたクーパー・カー・カンパニーの共同創業者)の孫にあたるチャーリー・クーパー氏を招聘している。
MINI JOHN COOPER WORKS チャーリー・クーパー
伝説のジョン・クーパー氏の孫にあたるチャーリー・クーパー氏。
プレゼンテーションで「ミニ」と「クーパー」の歴史を語るのはもちろんチャーリー・クーパー氏で、その言葉の端々には祖父のジョン・クーパー氏や父のジョン・マイケル・クーパー氏(JOHN COOPER WORKSブランドおよびMINI CHALLENGEの創業者)と「ミニ」とのエピソードが織り込まれていた。
今でこそ韓国のモータリゼーション環境はアジアでも重要な一角をなしているものの、カー・カルチャーの歴史自体はまだ浅く、こうした世界に通じるカー・カルチャーのレジェンドの話は相当に興味深く、またそれだけに影響力も高いはずだ。
F1の黎明期に画期的なアイデアと技術で活躍し、かつその技術を当時でも“コンパクトで愛らしい大衆車”と認識されていた「ミニ」に搭載し、いくつものラリーを制した「クーパー」の名前が、現代の「ミニ」とともに韓国ユーザーにインプットされるのは当然だろう。
ところで、現代の「ミニ」は広く知られるように<ドイツのBMWによるイギリス生産のクルマ>だ。世界に目を移したときに「ミニ」という“ブランド”がどう捉えられているのか。ドイツ、イギリスそれぞれの自動車ジャーナリスト、編集者に聞いてみた。
ドイツ、バイエルン出身の27歳の若いジャーナリストは現代のミニと、クラシックミニを“別のもの”とした上で“クラシック・ミニは"マニアックな旧車”と考え、ともに“ちょっとお洒落なクルマ”というイメージを持っているようで、付き合っている彼女は2014年モデルのクーパーSを所有しているそうだ。

イギリス、マンチェスターに住む37歳の編集者はやはり「ミニ」と「クラシック・ミニ」を分けて捉えながらも現代の「ミニ」が“ミニというには大きすぎるよ”と指摘する。とはいえ「ミニ」が“イギリスの象徴”であり、今なお(3ドアモデルが)“スタイリッシュなクルマ”というイメージがイギリスでも浸透していることを話してくれた。
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「ミニ」がBMWの手によって、新生「ミニ」として誕生したのが2001年。それから「ミニ」は「クラシック・ミニ」がもっていたゴーカートフィール、イギリス製、スタイリッシュ、そしてクーパーという4つの“ヘリテイジ”を、慎重に、かつ巧妙にブランディングの基本としてきたように見える。
韓国での「MINI JOHN COOPER WORKS」のサーキット試乗会はその一端だ。前述のチャーリー・クーパー氏のプレゼンテーションに併せて、頻出したキーワードはやはり、ゴーカートフィールであり、イギリスであり、スタイリングだった。
「MINI CHALLENGE」はもちろん、クラシックミニのヘリテイジを尊守するかのようなWRC(2011〜2012年、BMWワークスのスポット参戦からスタート。モンテカルロでは2位を獲得)へのJOHN COOPER WORKSの挑戦なども重要なブランディングのひとつだろう。
2018年の上半期、国内の外国車車種別販売数は僅差ながらも「ミニ」が「フォルクスワーゲン・ゴルフ」を上回っている。依然として「ミニ」の国内での人気は安定しているようだ。
ただし、懸念がないわけではない。「ゴルフ」がそのデザインを大きく変えながら進化してきていることに対して、イギリスの自動車専門誌の編集者が指摘するように「ミニ」は“ミニ”でなくてはいけない。それは「ミニ」が“ヘリテイジ・カー”と認識され、かつメーカー自体がそこをブランドのバリューとし、懸命にプロモーションし続けているからだ。

そういう視点で「ミニ」を見つめ直すと、あの愛らしいルックスの裏にあるカー・ブランディング&マーケティングの最前線を見るようで面白い。

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