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2018.07.22

マクラーレンの新型マシン600LT、英国グッドウッドでのデビューを現地からレポート!

いまや唯一の生粋スポーツカーメーカー「マクラーレン」レーシングチームとしての歴史を背景にもちながら、なぜロードスポーツメーカーとしても歩みを進めたのか? そのプロダクトの魅力を英国グッドウッドで発表された最新モデルから読み解きます。

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取材・文/小川フミオ

「フェスティバル・オブ・スピード」に登場した「600LT」
「フェスティバル・オブ・スピード」に登場した「600LT」
モノには物語が必要だ。購買の理由にもなるし、買ったあと、“どうしてこれ買ったの?”と訊かれたとき、胸を張って背景を説明したいではないか。

クルマにはそんな動機を満足させてくれるものがいくつかあるが、なかでも英国のスポーツカー、マクラーレンはその最たるものだ。

その源流をさかのぼると、1963年。キウィ(ニュージーランド出身者)のすぐれたレーシングドライバー、ブルース・マクラーレンが英国で設立。

自動車レースの最高峰、F1ではフェラーリに次ぐ長い歴史をもつチームであり、優勝の数もフェラーリに次ぐ。

だが、ブルース・マクラーレンは1970年に英国グッドウッドのサーキットでCANAM(カナディアン・アメリカン・チャレンジカップ)マシンのテスト中に車両の事故で他界。

マクラーレン亡きあともマクラーレンは、70年代のジェイムズ・ハントとエメルソン・フィッティパルディ、80年代と90年代のニキ・ラウダ、アラン・プロスト、そして不世出のアイルトン・ゼンナ(セナ)の活躍でその栄光を揺るぎないものとした。
「フェスティバル・オブ・スピード」の観客の前で派手なバーンアウト(タイヤから白煙をあげての円旋回ドリフト)を見せた「600LT」
「フェスティバル・オブ・スピード」の観客の前で派手なバーンアウト(タイヤから白煙をあげての円旋回ドリフト)を見せた「600LT」
そのブルース・マクラーレンは、F1、インディ、CANAM、ルマン24時間レースなどで傑出した成績を残すいっぽう、公道を走るスポーツカーを作るという夢を抱いていたという。

まあ、ここまでの話だけでも、それをおかずに今のマクラーレン車のオーナーはご飯3杯は食べられそうだ。

実際にマクラーレンが公道を走れるスポーツカーを手がける体制を整えるようになったのは、ブルース亡きあとの1985年だ。

マクラーレン・カーズが設立され、92年にF1における天才設計者ゴードン・マレイによる3座のミドシップスポーツ、その名も「F1」を発表したのだった。

2010年には社名も変更され、マクラーレン・オートモティブに。現在は英国南部のウォーキングに広大な敷地の開発センターと組立工場の複合施設を持ち、F1マシンの開発も(別部門だが)並行して行われている。

2018年7月12日に発表された「600LT」は600馬力の3.8リッターV8ツインターボエンジンをミドシップした後輪駆動の(スーパー)スポーツカーだ。
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グッドウッドのイベントの敷地内に設けられたマクラーレンのブースに置かれた伝統的なオレンジ色の「600LT」
グッドウッドのイベントの敷地内に設けられたマクラーレンのブースに置かれた伝統的なオレンジ色の「600LT」
F1 といえばマクラーレンに限らずたいていのマシンは英国で設計され開発される。戦後から続く“伝統”なのだが、その伝統を受け継いだ会社が手がける600LT(ロングテール)。

このクルマ(というよりマシンと書きたくなるけれど)は、カーボンモノコックというレーシングカーに準じたシャシーをもち、開口部が小さくなってしまうため、ディヘドラルドアという前方に跳ね上がるドアを備える。

見た目はたしかに派手だけれど、ちゃんと理由がある。排気管がコクピット背後から突きだしているが、これもパイプの長さを短くすることで軽量化に寄与しているのだ。
720馬力の「720S」をはじめマクラーレン車はバタフライドアを備える
720馬力の「720S」をはじめマクラーレン車はディヘドラルドアを備える
目をひく曲線と曲面で構成されたスタイリングも空力を徹底的に追究した結果。すべてに無駄がない。まさにF1マシンのようだ。

英国南部ウェストサセックスにあるグッドウッドでのクルマのお祭り「フェスティバル・オブ・スピード」開催の機をとらえてお披露目された600LT。ぼくはそこでホンモノを見るチャンスに恵まれた。
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空力ボディのおかげで時速250キロ時に100キロのダウンフォースを生むそうだ
空力ボディのおかげで時速250キロ時に100キロのダウンフォースを生むそうだ
2017年12月に発表された800馬力の「マクラーレン・セナ」ほどド派手ではないが、それでいて、さきの上に突きだした排気管など、このクルマにしかない要素でオーナーの心をくすぐる術も知っているというかんじだ。

ロングテールの名は97年のルマン24時間レースにおけるGT1クラスで2位と3位に入賞したF1 GTRロングテールに由来している。リアを伸ばして空力を追究したレースカーだ。

無駄のない曲面は止まっていても空気を切り裂いて走っているようで、科学と芸術のみごとな融合に感心するばかりだった。

これこそ酸いも辛いもかみ分けられるような大人のオトコ(とオンナ)のためのリアルスポーツカーだ。おそらく他のマクラーレン車のように、痛快な加速とコーナリングを味わわせてくれるだろう。

なにしろ静止から時速100キロまでの加速は2.9秒というから驚くほかない。でも車重はわずか1247キロ。加速性能を重要視するマクラーレンだけに、他に類のない楽しさのはずだ。

マクラーレンの伝統的なオレンジに塗られた車体もよかったが、ブラックも反射が美しい。さらに特別な仕様が欲しいひとには「マクラーレン・スペシャルオペレーション」が望むように仕立ててくれる。
カーボンファイバー製のレーシングシートも「600LT」に用意される
カーボンファイバー製のレーシングシートも「600LT」に用意される
ちなみにマクラ−レンでは、大きくシリーズは3つに分けられる。「570」系と「540C」が属する「スポーツシリーズ」がひとつ。頂点は「マクラーレン・セナ」の「アルティメットシリーズ」。そのあいだに「720S」とこの「600LT」の「スーパーシリーズ」が位置する。

日本でも2018年夏に発表されるそう。痛快なクルマが好きなひとは、楽しみにしているといいだろう。

● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト

慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。

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