もっとも、105分間の公式練習が予定されていた初日の午前中は濃霧のため走行スケジュールがキャンセルとなり、昼過ぎにようやく霧が晴れたところで30分間に短縮して公式練習を実施。通常はQ1とQ2の2セッションで行う公式予選も今回に限って20分間の1セッションとされ、文字どおり一発勝負でスターティンググリッドを決めることになった。
予選アタックを担当するのは、ここのところ好調が続く蒲生尚弥選手。そこで、本来の1時間35分間から30分間へと大幅に短縮された公式練習では、蒲生選手の走行時間を最大限にするため、予定していた黒澤治樹選手の走行を取りやめて蒲生選手ひとりがドライブする戦略をチームは選択する。
予選が開始される頃には、それまでの濃霧がウソのような青空が広がる。コースコンディションはドライ。まず、公式練習でトップと0.204秒差の1分38秒015をマークして4番手につけた蒲生選手は、その後に行われた公式予選ではさらに1分36秒780とタイムを詰めて3番手に浮上。翌日の決勝レースで表彰台を狙える2列目という好ポジションを手に入れた。
迎えた決勝当日も富士スピードウェイ周辺は爽やかな晴天に恵まれた。午後に入っても気温は上昇し、前日の同じ時刻よりも温かい気温25℃、路面温度36℃というコンディションで500kmレースのスタートが切られる。
3番グリッドからレースに臨んだ蒲生選手は、ミスやアクシデントのないクリーンなスタートを切ったものの、タイヤのウォームアップにやや時間がかかり、1周目を終えた段階で6番手まで後退。苦しい展開を強いられる。
それでも黒澤選手は徐々にペースアップ。ライバル車たちもピットストップに入るなか5番手まで挽回すると、63周目にはこの日2回目で最後となるピットストップを実施。給油とフロントタイヤ2本を交換するとともに、再び蒲生選手が搭乗し、レース終盤に向けた追い上げを開始した。
このピットストップで再び順位を落としたものの、蒲生選手は時にトップグループを上回るペースで快走。ほどなく5番手に返り咲く。やがて、同じMercedes AMG GT3車両を走らせるライバルチームが目の前に現れる。ここで闘志を燃え上がらせた蒲生選手は猛追を開始。一時は6秒以上あったギャップをじわじわと削り取っていき、レースが残り3周となった時にはその真後ろへと急接近。1コーナーで横並びになると、その後の高速左コーナーでライバルの攻略に成功。4番手に浮上し、そのままフィニッシュまで走りきった。
3番グリッドからスタートして4位という成績は、一見、ポジションダウン。
だが、上位でフィニッシュした3台は、富士のように標高の高いサーキットで有利なターボエンジンを搭載しているか、GT3とは別規定に基づく軽量のJAF-GT車両のいずれか。その点、LEON RACINGはノンターボの自然吸気エンジン。さらに、実に4台がエントリーしているMercedes AMG GT3車両のなかのトップで、その意味では持てる力を出し切ったといえる。
次戦は2週後の5月19・20日。これまでの1000kmレースから装いも新たに300kmで競われることになった鈴鹿サーキットでの開催。昨年は優勝をした相性の良いコースだ。準備期間も短く、500㎞を走りぬいたマシンのチェックやセッティング等、各チームのメカニックの腕の見せどころとなるが、引き続きLEONチームの奮闘が期待される。