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2018.05.27

ニューヨーク国際オートショーで見えたクルマの新トレンドとは?

米国でもっとも伝統ある自動車ショーである「ニューヨーク国際オートショー(New York International Auto Show)」が今年も3月に開催された。内容はコンパクトSUVとハイパフォーマンスカーという、トレンドの最前線を感じさせるものだった。

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文/小川フミオ

メルセデス・ベンツのブースより。一番手前のマットブラックにペイントされたモデルがメルセデスAMG「C63S」
メルセデス・ベンツのブースより。一番手前のマットブラックにペイントされたモデルがメルセデスAMG「C63S」

アメリカで最も古いオートショー

ニューヨーク国際オートショーがマンハッタンで、2018年3月30日から4月8日にかけて開催された。

ニューヨークは、たしかに、クルマで大渋滞していることが多いけれど、ロサンゼルスのようにクルマの街というイメージは薄い。

見せるために乗るというより、ニューヨーカーは実用を重んじている感じだ。少なくとも日常的には、最新のセダンもSUVも、スーパースポーツカーもあまり見かけない。

ニューヨークは、では、クルマと相性がよくないのかというと、そんなことはない。いい例がこのニューヨーク国際オートショーだ。

このショーの原点をたどると1900年までさかのぼることができる。マディスンスクエアガーデンでオートモビルクラブ・オブ・アメリカが開催したアニュアル・オートモビルショー第1回が原点という。

「300SL」と「Eタイプ」がデビューしたショー

アメリカで最も古いオートショー、を謳うニューヨーク国際オートショーは、外国のメーカーにとっても檜舞台だった。

トヨタやダットサンは50年代からこのショーを重視。ホンダが「N600」で四輪車の米国デビューを行ったのもニューヨーク国際オートショーである。

メルセデス・ベンツは1954年にこのショーで、ガルウィングドアを備えた「300SL」を世界初公開した。ジャガーが1961年、「Eタイプ」の米国デビューの場に選んだのもニューヨーク国際オートショーだ。
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キャデラックXT4は2リッターエンジンに前輪駆動主体の4WDシステムが組み合わされる
キャデラックXT4は2リッターエンジンに前輪駆動主体の4WDシステムが組み合わされる

大きな傾向はSUVとハイパフォーマンスカー

伝統は今も健在だった。先に触れたように、数多くのメーカーが2018年のショーで新型車を発表したのである。

大きな傾向は、SUVとハイパフォーマンスカーだ。前者ではとりわけ、全長4.5mから4.7m程度の、いわゆるコンパクトSUVの新型が多く目についた。

なかでも特筆すべきはキャデラックのコンパクトSUV市場への参入だ。「XT4」という全長4.6mを切るSUVを発表して大いに話題をふりまいたのである。

「これまでに踏み出したことのないセグメントに参入します」。XT4の発表の場で、キャデラックのヨハン・ダ・ネイシン社長はそう語った。
キャデラックXT4のインテリア。昨今のキャデラック車の例に漏れずクオリティが高くせん洗練されたデザインとなっている
キャデラックXT4のインテリア。昨今のキャデラック車の例に漏れずクオリティが高くせん洗練されたデザインとなっている

次世代のラグジュアリーを体現したキャデラック「XT4」

キャデラックの言葉を借りるとラグジュアリーSUVであり、次世代(ジェネレーションYやジェネレーションZ)にとってラグジュアリーとはこのようなクルマを意味するらしい。

ちなみにジェネレーションYは1980年代から1990年代生まれ。ジェネレーションZは生まれたときからコンピューターのある生活を送ってきた世代と定義されている。
キャデラックXT4はショルダーを強調したマッシブなスタイリングが特徴だ。写真はキャデラックでデザインを統括するアンドリュー・スミス氏
キャデラックXT4はショルダーを強調したマッシブなスタイリングが特徴だ。写真はキャデラックでデザインを統括するアンドリュー・スミス氏
XT4がシンボリックなのは、そのデザイン手法にもある。「デザイナーも部内で最も若い人たちを集めてチームを結成しました」

ソーホー地区でXT4のお披露目が行われた際、キャデラックのデザインを統括するアンドリュー・スミス氏はそう語ってくれた。
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ジュネーブで公開されたジャガーI-PACEは米国にも導入される
ジュネーブで公開されたジャガーI-PACEは米国にも導入される

日本勢のコンパクトSUVも勢揃い

新しさはスタイリングで強調されることもあるし、テクノロジーで、ということもある。後者の代表は、ジャガー「I-PACE」だ。

ピュアエレクトリックのコンパクトSUVであるこのモデルは、米国の来場者にも大いに注目されていた。米国のEVといえばテスラだが、西海岸の代表をみずからもって任じているのか、今回のショーへの参加はなかった。
新型トヨタRAV4(日本には2019年導入予定)はホイールベースが現行モデルより30mm伸び、全長は5mm短くなっている
新型トヨタRAV4(日本には2019年導入予定)はホイールベースが現行モデルより30mm伸び、全長は5mm短くなっている
このショーで世界初公開されたコンパクトSUVは、トヨタ「RAV4」、スバル「フォレスタ」、アキュラ「RDX」といった日本勢のコンパクト。レクサスが約1カ月前のジュネーブショーで公開したコンパクトSUV、「UX」を持ちこんだ。
どのモデルも新しいエンジンやドライブトレーンを持ち、安全性能や運転支援技術のアピールに熱心だった。おそらくここが新世代SUVのバイヤーの興味の中心になるのだろう。
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マセラティ・レヴァンテ・トロフェオは590ps、730Nmの3.8リッターV8で静止から100km/hまで3.9秒という驚くべき俊足ぶりを誇る
マセラティ・レヴァンテ・トロフェオは590ps、730Nmの3.8リッターV8で静止から100km/hまで3.9秒という驚くべき俊足ぶりを誇る

ニューヨークショーのもう一つの花形であるパフォーマンスカー

いっぽうでパフォーマンスカーもニューヨークショーのもう一つの花形だ。ジャガーがお披露目した「F-PACE SVR」は550ps。マセラティの「レヴァンテ・トロフェオ」は580psだ。
ジャガーのSVO(スペシャルビークルオペレーション)が手がけた5リッターV8の高性能SUVであるジャガーF-PACE SVR
ジャガーのSVO(スペシャルビークルオペレーション)が手がけた5リッターV8の高性能SUVであるジャガーF-PACE SVR
キャデラックはXT4とともに、新開発の4.2リッターV8ツインターボエンジン搭載のスポーツセダン「CT6 V-SPORT」も公開した。
新開発の4.2リッターV8ツインターボエンジン搭載のスポーツセダン、CT6 V-SPORT
新開発の4.2リッターV8ツインターボエンジン搭載のスポーツセダン、CT6 V-SPORT
CT6 V-SPORTの最高出力は410kW(550ps)。最大トルクはなんと850Nmとされている。従来のATS-VやCTS-Vといったスポーツモデルの実力から推しはかると、おそらく素晴らしくスポーティだろう。
アウディ RS5 Sportbackはポーツクワトロシステムを持ち、通常は前輪に40%、後輪に60%のトルクを配分する
アウディ RS5 Sportbackはポーツクワトロシステムを持ち、通常は前輪に40%、後輪に60%のトルクを配分する
アウディは、331kW(444ps)の最高出力と600Nmの最大トルクを発生する2.9リッターV型6気筒エンジン搭載の「RS5スポーツバック」をデビューさせた。
メルセデス・ベンツCクラスカブリオレはエレガントな雰囲気を持つ
メルセデス・ベンツCクラスカブリオレはエレガントな雰囲気を持つ
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911GT3RSベースのセミレーシングを持ち込んだポルシェ

メルセデス・ベンツは世界的に販売が絶好調という「Cクラス」のクーペとカブリオレのお披露目の舞台にこのショーを選んだ。

メルセデスAMGが手がける476psの「C63」と510psの「C63S」も同時発表。レース場にも持ち込めるダイナミックなシャシー性能を備えた後輪駆動であり人気が出そうだ。
ポルシェ911GT3RS「ヴァイザッハパッケージ」は383kW(520ps)の4リッターエンジンを1430kgのボディに搭載し、静止から100km/hを3.2秒で加速
ポルシェ911GT3RS「ヴァイザッハパッケージ」は383kW(520ps)の4リッターエンジンを1430kgのボディに搭載し、静止から100km/hを3.2秒で加速
ポルシェは「911GT3RS」に18kg軽量の「ヴァイザッハパッケージ」を組み込んだスポーツモデルをニューヨークで初公開。520psの4リッターエンジンを搭載したセミレーシングだ。

華やかさと苦悩が背中合わせにあるラグジュアリーの世界

ニューヨーク国際オートショーはこのように多様性に満ちた内容だった。しかしショー直前に、トランプ米大統領が対中貿易関税の強化を打ち出し、中国は報復措置をとることを発表した。

米国企業にとって今や中国は第二の巨大な市場だ。それだけに貿易戦争が起きるのは、メーカーとしては避けたい。新車を発表する幹部は誰も笑顔の後ろに悩みを隠していたかもしれない。

「中国市場の“おいしさ”を知ってしまったから後戻りはできないはず」。会場のジャーナリストからはこのような声も聞こえてきた。

とりわけラグジュアリーカーの世界は、このように華やかさと苦悩が背中合わせにある。まるで1920年代のニューヨークを舞台に書かれた「ザ・グレート・ギャツビー」のようだと思った。

● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト

慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。

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