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2018.04.30

新型メルセデス・ベンツCLSに試乗─間違いなく最良のパーソナールカーである!

近いうち日本に上陸する予定といわれるメルセデス・ベンツの新型CLSに、バルセロナで試乗した。4ドアクーペのスタイリッシュなルックスと、ISGというエンジン技術で注目を集めるモデルだ。

CREDIT :

文/小川フミオ

シャークノーズという新しい意匠のフロントマスクを備えたCLS450 4MATIC
シャークノーズという新しい意匠のフロントマスクを備えたCLS450 4MATIC

Sクラスにはないパーソナル感が魅力

メルセデス・ベンツ「CLS」は4ドアクーペというトレンドに先鞭をつけたモデルだ。初代は2005年に発表され、円弧を描くようなルーフラインを特徴とするフォルムや、セパレートタイプの後席を採用するなど、コンセプトも新鮮だった。

CLSが好まれる理由はいろいろあるけれど、筆頭にあげてもいいのがパーソナル感だろう。「Sクラス」や「Eクラス」のようなフォーマル感の強いセダンだと運転手みたいな気分になるユーザーが、4ドアクーペに惹かれる理由もわかる。

CLSの魅力は、前席重視といいながらけっしてコンパクトにまとまっていないところだ。全長は5m近くある。

後席だってスペース的には身長180cmの大人2人が乗車しても十分。ただSクラスやEクラスに較べて少しタイトな作りにし、心地いい囲まれ感を演出してあるのが、このモデルのキモである。
トランク開口部はバンパー上からとなり使い勝手がよくなっている
トランク開口部はバンパー上からとなり使い勝手がよくなっている
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最新の直列6気筒エンジンに注目

ラインナップは、ガソリン、ディーゼル、それにメルセデスAMGの高性能版が同時に発売。2017年3月にバルセロナで開かれた試乗会では、なかでも注目の2モデルに試乗できた。

ひとつはメルセデス・ベンツCLS450 4MATIC。もうひとつはメルセデスAMG CLS53 4MATIC+(プラス)である。

2車に共通するのは最新の直列6気筒エンジンを搭載している点だ。このエンジンこそ、大きな注目に値するものといえる。

ISG(一体型スタータージェネレーター)というシステムを搭載しており、48ボルトの高電圧バッテリーと組み合わされる。
今回ボディは1タイプのみで、ルーフの前後長を短くしてスタイリッシュなプロポーションを作っている
今回ボディは1タイプのみで、ルーフの前後長を短くしてスタイリッシュなプロポーションを作っている

エンジンの弱点をカバーする画期的な「EQブースト」

メルセデス・ベンツでは「EQ」なる自社の環境戦略にのっとって、この48ボルトのシステムを「EQブースト」と名づけている。

電気モーターを駆動力として補助的に使うのがISGの特徴だ。発進時などエンジンパワーが出るのが一瞬遅れる内燃機関の弱点を、モーターでカバーする。

エンジンが回って連続的にトルクが得られるようになると、モーターは役目を終える。モーターだけで走らないのでマイルドハイブリッドとも呼ばれる。

メルセデス・ベンツはさらなる効率を考えて、エンジンから補機を駆動するベルトを排除。ISGのモーターもエンジン駆動軸に直結されている。

さらに電気で駆動されるスーパーチャージャーが比較的低回転域でのトルクアップを担い、そのあとツインスクロール式ターボチャージャーがさらなるパワーを付与する仕組みだ。

はたしてCLS450 4MATICの最高出力は270kW(367ps)、最大トルクは500Nmとなっている。いっぽうメルセデスAMGのCLS53 4MATIC+は320kW(435ps)、520Nmだ。
ボディサイズは全長4988mm、全幅1890mm、全高1435mm
ボディサイズは全長4988mm、全幅1890mm、全高1435mm
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まさに新感覚パワーユニット

じつは僕は先に日本にも導入されたSクラスの追加車種「S450」で、このISGを体験済みだった。そのときの印象は“最高のSクラスだ!”というものだった。

新型CLSは、やはり質の高い走りを体験させてくれた。試乗コースはバルセロナ空港を起点に、山岳路を中心としたもの。途中ハイウェイが含まれる。

エンジンは発進から期待どおりスムーズ。回転計の下に設けられた小さなメーターでモーターが動いているか分かるが、べつに知る必要はないだろう。すっと出て、あとはぐんぐん加速していく。
ドライバー中心に設計されたコクピットは居心地がいい
ドライバー中心に設計されたコクピットは居心地がいい
昔のエンジンだとトルクのピークというのがあって、たとえば2500rpmから4500rpmあたりの回転をキープすると気持ちよい加速感が得られたものだ。

新型CLSは、そんなこと関係ない。どんな回転域でも速い。エンジンはどんどんレッドゾーンまで回る(普通は回さないだろうが)。モーターからスーパーチャージャー、そしてターボチャージャーへのトルクの橋渡しがじつにスムーズ。

通常の使用でも、1800rpmあたりで、アクセルペダルの微妙な踏み込みにも気持ちよく反応して加速するので、適度なスポーティさもあって、このクルマのキャラクターにベストマッチといえる。
3人がけのリアシートはおとなにも充分のスペースが確保されている
3人がけのリアシートはおとなにも充分のスペースが確保されている
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いかなる速度域でも信頼できるハンドリング

ハンドリングはメルセデス・ベンツ車の例にもれず、いかなる速度域でも信頼できる。車両とドライバーのコミュニケーションは最高だ。

車体のロールの仕方といい、ステアリングの精度といい、とばせばとばすなりに、しっかり応えてくれる。相変わらずメルセデス・ベンツの最上の部分だ。

メルセデスAMGのCLS53 4MATIC+は、シリーズでもっともパワフルなモデルだ。スムーズな回転マナーを持つ3リッター直6エンジンのよさを最大限引き出している感じで、緻密なトルクの出方は見事。

ハンドリングはよりスポーティな味つけなので、ハイスピードドライビングを好む人なら、このクルマに乗ってスポーツモードを選ぶと、極上の気分が味わえるはずだ。

ブレーキ性能がより上がっているぶん、制動マナーもより繊細。これも味わう価値がある。メルセデスAMGの面目躍如といった仕上がりだ。

「4MATIC+は走りや路面の状況に応じて駆動力の前後配分を自動で行い、後輪駆動から全輪駆動までシームレスに制御します」。開発を担当したイェンズ・フイザー氏の説明だ。
TFT液晶を使った計器盤では回転計の下にモーターのモニター(回生状況を含む)が設けられてい
TFT液晶を使った計器盤では回転計の下にモーターのモニター(回生状況を含む)が設けられてい

新たなデザインランゲージを採用したスタイリング

スタイリングも重要なポイントである。これまでのラインナップとはまったく異なるデザインランゲージが採用されたのだ。

シャークノーズとメルセデス・ベンツのデザイナーが呼ぶ逆スラントのノーズと、そこにはめ込まれた吊り目のヘッドランプはアグレッシブな印象だ。

ボディ側面はキャラクターラインがほとんどなく(1本だけボディ下面に入っていて躍動感を生んでいる)、面のカーブだけでグラマラスな印象を生み出している。

僕は実車に最初に対面したのは2017年のロサンジェルスだった。そのときは少し印象が弱いかなと思ったけれど、見ているうちに説得力が出てくると思い直した。

歴代のCLSのなかでは、スタイリングコンセプトこそ従来のシューティングブレークがおもしろかったが、バランスのよさでは最新型が傑出しているといいっていいだろう。
実用的なサイズで使い勝手も向上した荷室
実用的なサイズで使い勝手も向上した荷室
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ドライバーが笑顔になるクルマ

さらにもうひとつ。ユーザーへの朗報がある。開発をまとめたプロダクトマネージメント担当のマリヤン・チェリグ氏が試乗会場でつけ加えてくれた。

「従来のモデルはシングルピースのテールランプにこだわったためトランクの開口部が少し小さくなってしまい、実用性が今ひとつでした。私は妻に怒られました。そこで今回はランプを2分割にして開口部を下げて実用性も上げていますよ」

インテリアは豊かなカーブをもったダッシュボードに航空機のタービンを思わせる空調のアウトレットが並ぶ、おなじみのテーマが採用されている。

シートは数種類があるが、どのタイプを選んでも間違いなくしっくりくるのではないだろうか。僕の体験である。

バルセロナでは周囲の車両から笑顔で迎えられた。欧米はクルマ好きが多いので、すぐに新しいCLSと分かるらしい。でも笑顔が最も似合うのはこのクルマのドライバーだ。間違いなく最良のパーソナルカーだと思う。

● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト

慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。

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