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2017.12.02

電動化&知能化が進むと“クルマ”ではなくなる?! 東京モーターショー2017から見えるクルマの未来とは?

77万人以上の来場者を集め、11月5日に幕を下ろした東京モーターショー2017。今回のショーにはどんなモデルが出展され、私たちにいかなる未来を見せてくれたのだろうか。モータージャーナリスト、金子浩久さんが読み解きます。

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文/金子浩久 写真/荒川正幸

往年の「タイプ2 マイクロバス」をイメージしたフォルクスワーゲンのEVモデル「「I.D. BUZZ」。完全自動運機能を持ち、2022年に市販される予定
往年の「タイプ2 マイクロバス」をイメージしたフォルクスワーゲンのEVモデル「I.D. BUZZ」。完全自動運機能を持ち、2022年に市販される予定

今後のモビリティを大きく変えていく4つの要素

モーターショーはトレンドを見事に表す。第45回東京モーターショーでも、最新のクルマと開発の最前線が展示されていた。
8月にフルモデルチェンジを受け、今回アジアプレミアとなった新型ポルシェ「カイエン」
8月にフルモデルチェンジを受け、今回アジアプレミアとなった新型ポルシェ「カイエン」
残念ながらワールドプレミアこそなかったが、ポルシェは“アジアプレミア”となる「カイエン」と「パナメーラプラグインハイブリッド」を華々しく発表したし、フォルクスワーゲンは8台もの新型車を披露した。BMWは、次期「8シリーズ」と次期「Z4」のスタディモデルを出展。メルセデス・ベンツとアウディも積極的な展示を行い、ドイツメーカーの日本での存在感の大きさを示していた。
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2018年にデビューが予定されているBMW「8シリーズ」のデザインスタディモデル「コンセプト8シリーズ」
2018年にデビューが予定されているBMW「8シリーズ」のデザインスタディモデル「コンセプト8シリーズ」
日本メーカーも負けてはいない。意欲的なコンセプトカーや発表間近の参考出品車、世界各地で今シーズンを戦ったレーシングカーや歴史的なクルマなど、地元開催の気概を見せつけていた。
次期型BMW「Z4」のデザインスタディであるコンセプトモデル「コンセプトZ4」
次期型BMW「Z4」のデザインスタディであるコンセプトモデル「コンセプトZ4」
現在、自動車の世界で開発が急がれている課題がクルマの電動化と知能化である。知能化というのは、運転支援(自動運転)とコネクティビティのこと。これらにシェアリングが加えられる場合もある。
メルセデスのEV専用ブランド「EQ」のコンセプトモデル「コンセプトEQA」。今回、アジアで初公開された
メルセデスのEV専用ブランド「EQ」のコンセプトモデル「コンセプトEQA」。今回、アジアで初公開された
メルセデス・ベンツがショー以前から提唱しているConnectivity(インターネットへの常時接続)、Autonomous Drive(自動運転)、Sharing(シェアリング)、Electrification(電動化)の頭文字をつなげた「CASE」という概念はまさにこれに相当する。おそらくメルセデス・ベンツだけでなく、ほとんどの自動車メーカーが今後の開発目標に設定していて、モビリティを大きく変えていく4つの要素となることは間違っていないだろう。
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未来のカーシェアリングを想定した完全自動運転のコンセプトカー「スマート ビジョンEQ フォーツー」
未来のカーシェアリングを想定した完全自動運転のコンセプトカー「スマート ビジョンEQ フォーツー」
これらが実現されることによって、一般的には交通事故がなくなり、省エネが進み、人間の負担がなくなっていくと考えられている。これまでクルマが宿命的に抱え込んで来たネガがほぼ解消され、さらには運転に費やされていた時間を自分のために有効に用いることができるようになるだろう。
AMG創立50周年を記念してフランクフルトモーターショーで初披露されたメルセデスAMG「プロジェクト ワン」。F1マシン用1.6リッターV6ガソリンエンジンに4つのモーターを組み合わせたハイブリッド ターボ エンジンを搭載する
AMG創立50周年を記念してフランクフルトモーターショーで初披露されたメルセデスAMG「プロジェクト ワン」。F1マシン用1.6リッターV6ガソリンエンジンに4つのモーターを組み合わせたハイブリッド ターボ エンジンを搭載する
アウディは、出展したコンセプトカー「Elaine」を「Elaineは1時間生み出すことができて、1日を25時間に増やせる」と比喩的に説明している。Elaineは常にクルマが加減速と操舵を行う完全自動運転の「レベル4」を実現しているから、“1時間生み出す”ことができるという寸法である。
完全自動運転の「レベル4」を実現していると謳われるアウディのコンセプトカー「Elaine」
完全自動運転の「レベル4」を実現していると謳われるアウディのコンセプトカー「Elaine」
マイルドハイブリッドシステムを搭載するSUVのコンセプトカー、アウディ「Q8 スポーツコンセプト」
マイルドハイブリッドシステムを搭載するSUVのコンセプトカー、アウディ「Q8 スポーツコンセプト」
レベル4の自動運転を行うEV、日産「IMx」は課題のうち3つを実装している。ほかにも、電動化と知能化を想定したコンセプトカーは珍しくはなかった。まさに、自動車の開発の最前線が映し出されていた。その点においては、とても興味深く、今後の自動車の姿とあり方を知る上で実に勉強になるモーターショーだった。知的好奇心を大いに刺激された人も多かったことだろう。
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レベル4の自動運転技術を搭載するSUVタイプのEVコンセプト、日産「IMx」
レベル4の自動運転技術を搭載するSUVタイプのEVコンセプト、日産「IMx」
レクサスがワールドプレミアしたコンセプトカー「LS+コンセプト」。2020年には自動車専用道路での自動運転が可能になることを想定している
レクサスがワールドプレミアしたコンセプトカー「LS+コンセプト」。2020年には自動車専用道路での自動運転が可能になることを想定している

今年の東京モーターショーはツマラなかった?!

しかし、残念なことに、電動化も知能化もすべて“眼に見えない”ものなのである。もちろん、EVのモーターやバッテリーなどを見ることはできるし、自動運転を司るカメラやミリ波レーダーなども実物を拝むことはできる。けれども、電流や(デジタルの)バイトは眼に見えない。
人工知能(AI)技術を搭載したトヨタのコンセプトカー「Concept-愛i」。AIを応用することで、状況に応じた対応やドライバーとの会話が可能
人工知能(AI)技術を搭載したトヨタのコンセプトカー「Concept-愛i」。AIを応用することで、状況に応じた対応やドライバーとの会話が可能
シリンダー内に送り込まれた混合気が爆発し、ピストンを押し下げ、それがコンロッドを回転させ、トランスミッションなどを経て最終的にタイヤを駆動する様子を目視できたり、その様子をイメージできる内燃機関との決定的な違いがそこにはある。
コンパクトな2ドアクーペのボディが印象的なEVのコンセプトモデル、ホンダ「スポーツ EV コンセプト」
コンパクトな2ドアクーペのボディが印象的なEVのコンセプトモデル、ホンダ「スポーツ EV コンセプト」
電気やデジタルは眼に見えないから、趣味や嗜好の対象にならないのだ。これはクルマだけの話ではなく、フィルムカメラやLPレコードなどひと足先にデジタル化した領域のものを思い起こしてみればわかるだろう。
だから、「今年の東京モーターショーはツマラなかった」という人の言い分は正しくて、今後のクルマと人間の関係性の激変ぶりを本能的に感じ取っているのだ。電動化と知能化が進んだクルマはもはや“クルマ”ではなくモビリティツールとして進化していく。
マツダの次世代デザインの方向性を形にしたコンセプトモデル「マツダ VISION クーペ」
マツダの次世代デザインの方向性を形にしたコンセプトモデル「マツダ VISION クーペ」
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それでも、スポーツやゲームの一種としてクルマの運転を楽しみたい場合は、サーキットなどの閉鎖空間で走るか、VRを介したバーチャル空間で楽しむことになる。バーチャルは侮れなくて、すでにプロのレーシングドライバーが未体験のコースを練習走行するために欠かせないものとなるほどに進化しているのだ。
レトロなデザインで会場で注目を集めていたダイハツ「DN コンパーノ」。1963年にデビューしたダイハツ「コンパーノ」を現代に蘇らせたモデル
レトロなデザインで会場で注目を集めていたダイハツ「DN コンパーノ」。1963年にデビューしたダイハツ「コンパーノ」を現代に蘇らせたモデル
これからのクルマを悲観視する人には今回の東京モーターショーは確かにツマラなかっただろうが、クルマというものが大半のコモディティ(実用品)と一部の趣味や嗜好品とにキッパリふたつに分かれていく近未来を予言しているという意味で筆者にはとても面白かった。この傾向はしばらく続くことだろう。
金子浩久
モータリングライター。1961年東京都生まれ。自動車と自動車に関わる人間について執筆活動を行う。主な著書に、『10年10万キロストーリー』(1~4)、『セナと日本人』、『地球自動車旅行』、『力説自動車』、『ユーラシア横断1万5000キロ』など。

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