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2017.11.30

“いま”を語るならこのカレンダーを知っておくべき

世界的に知られたカレンダーで、過去44回にわたり女性の美を追究してきたのがピレリ・カレンダー。45回目の2018年版の発表会では、まったく新しい美を見せてくれた。

CREDIT :

文/小川フミオ

プレス向けのお披露目会に集まったカレンダー出席者たち(中央にパフダディとナオミ・キャンベルがいる)
プレス向けのお披露目会に集まったカレンダー出席者たち(中央にパフダディとナオミ・キャンベルがいる)

2018年版のテーマはブラックビューティ

イタリアというのは美を見つけるのがうまい。男のファッションも上手だが、美人にめざといのは言うまでもない、かも。

そんなイタリアで、もうひとつの美といえるフェラーリやランボルギーニにタイヤを供給してきたのがピレリ社。走りの美の創造者だ。
中央のスキンヘッドはモデル出カリスマブロガーでもあるスリック・ウッズで、右隣がイラストレーターでもありモデルでもあるキング・オウス
中央のスキンヘッドはモデル出カリスマブロガーでもあるスリック・ウッズで、右隣がイラストレーターでもありモデルでもあるキング・オウス
ピレリはさらにちがう美で僕たちを楽しませてくれることで知られる。それがピレリ・カレンダー。

世界トップクラスのカメラマンが最も旬な女(と男)を撮り下ろすことで知られ、高価なアート本と比肩する価値すらある。
2018年版カレンダーを撮影したティム・ウォーカー
2018年版カレンダーを撮影したティム・ウォーカー
かつては造物主に感謝したくなるような完璧なヌード写真で目の保養をさせてくれたピレリ・カレンダー。ここ数年、傾向が変わってきた。
ガラディナーでのカレンダー出演者たち(ナオミ・キャンベル隣りのパフダディがスピーチ中)
ガラディナーでのカレンダー出演者たち(ナオミ・キャンベル隣りのパフダディがスピーチ中)
2017年11月にニューヨークのど真ん中、ザ・ピエールで記者発表会があった2018年版のテーマはブラックビューティ。

オールブラックキャストによる「不思議の国のアリス」を、女性を撮るのが素晴らしく上手な英国人写真家ティム・ウォーカーがつくりあげた。
左からモデルのウィルスン・オリエマ(トランプの兵隊役)、やはりモデルのアルファ・ダイア(同)、イラストレーターとして活躍するキング・オウス(トゥイードゥルダムとトランプの兵隊役)
左からモデルのウィルスン・オリエマ(トランプの兵隊役)、やはりモデルのアルファ・ダイア(同)、イラストレーターとして活躍するキング・オウス(トゥイードゥルダムとトランプの兵隊役)
概略は「leon.jp」で既報のとおりだけれど、ニューヨークでは今をときめく20代のブラックモデルたちとともに、このカレンダーの意義を語ってくれた。
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写真家らの挨拶から出演者へのインタビューなど、そしてミュージシャンのパフォーマンスやDJの入ったダイスパーティと大盛り上がりだったガラディナー
写真家らの挨拶から出演者へのインタビューなど、そしてミュージシャンのパフォーマンスやDJの入ったダイスパーティと大盛り上がりだったガラディナー

女性の美は一面的でないという価値観に共鳴できることが、新しい時代のモテる条件?!

女性の美とは一面的なものではないのだよ、というのがいま世界最先端の考えかた。今回のカレンダーにも登場しているスーパーモデルのナオミ・キャンベルも記者会見で言っていた。

「ポーズをとればセクシーなんてことはないわ。本当のセクシーさは内面から出てくるのよ」

そう、女性を称賛するときは、それこそ最高のホメ言葉だ。“きみの中身こそ本当の意味でセクシーだよ”と言ってみてはどうだろう。最高の口説き文句ではないか?
ピレリ社エグザクティブ・バイスチェアマンのマルコ・トロンケッティ・プロヴェラの娘、イラリア(左)らがダンス
ピレリ社エグザクティブ・バイスチェアマンのマルコ・トロンケッティ・プロヴェラの娘、イラリア(左)らがダンス
ウォーカーによるカレンダーの見どころは、白人のものと考えられていた英国の数学者ルイス・キャロル作の物語を換骨奪胎したところにある。

まことにユニークなアフリカ系の人たちによる素敵な「アリス」の世界なのだ。アリスに扮するのは若手のトップモデル、ダッキー・ソート。
ダイヤのクイーンという役をカレンダーで演じたファッションモデルのアディット・アケチが写真に撮られている
ダイヤのクイーンという役をカレンダーで演じたファッションモデルのアディット・アケチが写真に撮られている
男ではミュージシャンのパフダディことショーン・コムズやラッパーのキングオウスらも、傑作なコスプレを見せてくれる。

「このコンセプトの目的は、人種や性の境界をとりのぞくことでした」。記者会見の席上でウォーカーは語ってくれた。

「手段としてアリスを選んだのは、よく知られている物語ゆえ、(アフリカ系キャストという)意外性を通して自分のメッセージが強く伝わると思ったから」とウォーカー。
右からアディット・アケチ、ダッキー・ソート、それにラッパーのリル・ヤッチーという出演者たち
右からアディット・アケチ、ダッキー・ソート、それにラッパーのリル・ヤッチーという出演者たち
登場する18人のなかにはアフリカでの女性器削除(一般的にはFGMという)に反対する活動家もいれば、ルポールのように有名なドラッグクイーンも。
米西海岸でDJとして人気を集めるルイ・ヴェガ(右)とアナ・ヴェガ
米西海岸でDJとして人気を集めるルイ・ヴェガ(右)とアナ・ヴェガ
今は女性の美は一面的でない。そんな価値観を知り、もし共鳴できるならそうする。それこそ新しい時代にモテる条件になるかもしれないですぞ。
●小川フミオ

ライフスタイルジャーナリスト。慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。

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