アメリカ生まれのヨーロッパ育ちが人気⁉
もともとSUVはアメリカ生まれ。あの広大な大地で暮らし、巨大なピックアップ・トラックをこよなく愛してきたアメリカ人が、ピックアップよりも実用性や快適性の優れたSUVを考案し、発展させてきたことはなんとなく理解できる。しかし、現在のSUV人気はそれよりもはるかにグローバルなもの。例えば自動車文化の本場で、SUVとはもっとも遠い存在と思われてきたヨーロッパでもSUVはぐんぐんとその存在感を増しているのだ。
イギリスの調査機関“JATO”は2016年にヨーロッパで登録されたSUVは390万台で、前年の320 万台から21.4%も伸びたと報告している。同じ期間にヨーロッパの乗用車販売台数は6.5%増えたので、SU Vは市場平均の3倍を上回るペースでセールスを上積みしたことになるのだ。
SUVが人気を博した最大の理由はセダンやハッチバックよりも車高があるため運転席からの見晴らしが良く、室内も広々としているからといわれる。もはや4輪駆動で最低地上高が高く、悪路での走破性が優れていることがS UVの購入動機とされる時代は終わったのだ。
このメリットがとりわけ生きるのがコンパクトカー・クラスであることは自明の理。しかも、ヨーロッパによくある古くからの街並みでは道が狭いことが多く、コンパクトカーのほうが扱いやすい。コンパクトなSUVやクロスオーバーが売れる背景には、しっかりとした理由があったのだ。
もうひとつ、コンパクトSU Vやクロスオーバーのセールスが好調なのはハッチバックカーよりもどこか高級に見えて、生活感があまり漂っていない点にあるとも言われている。つまり、長年使い続けてきたコンパクト・ハッチバックカーに飽きた層が、SUVやクロスオーバーに乗り換えているというわけだ。このカテゴリーにはとりわけ個性的なデザインが多いことも、こうした人気を支えている。
さらに見逃すことのできないのが、プレミアム・コンパクトSUVと呼ばれるセグメントの隆盛である。つまり、ヨーロッパのプレミアムブランドが作るコンパクトSUVないしクロスオーバーが、いま静かなブームになりつつあるのだ。
そのきっかけは、ヨーロッパに根強く残る「小さな高級車への憧れ」にあると思う。高級車といえば大型車が当たり前というのが以前の常識。ただし、富裕層が必ずしも大型車ばかりに乗りたがるわけではないことは、1960年代のロンドンでセレブたちが好んでミニを選んだことからもわかるとおり。
そうした志向を背景に、これまでヨーロッパの各メーカーが“小さな高級車作り”に挑んできたが、いまでも成功例として語り継がれるのは前述のミニをベースとする「バンデンプラ・プリンセス」くらいなものだ。
プレミアムカーブランドが小型SUV市場に積極参入
その明確な証拠といえるのが、メルセデス、アウディ、BMWといったプレミアムブランドが揃ってコンパクトSUVを手がけている点。そのいずれもが、ベースとなるハッチバックモデルに負けないくらい好調なセールスを誇っていることが、市場がプレミアム・コンパクトSUVを求めている何よりの証拠といえる。
そんなプレミアム・コンパクトSU Vの最新作がアウディQ2だ。従来からラインナップされているQ3と同じCセグメントに属するが、Q2は全高が10cm近くも低いため、はるかにスタイリッシュで軽快に見える。エクステリア・デザインはSUVに求められる躍動感を新鮮なセンスで表現しつつ、アウディらしい品も併せもっている。
インテリアのクオリティもこのクラスではトップクラスといえるだろう。そして外観からイメージできるとおり走りも軽快そのもの。とりわけ、デュアルクラッチ・ギアボックスのSトロニックと少し硬めのサスペンションがもたらすワインディングロードでのフットワークには目を見張るものがある。
SUV 01
Audi Q2 1st edition[アウディ Q2 1st エディション]
ラインナップの幅広さもGLAのウリのひとつで、1.6リッター・エンジン搭載のGLA 1 80に始まり、AMGが手がける最高出力381psの“世界最強直4エンジン”を積むAMG GLA 45 4M ATICまで4モデルが揃う。しかも398万円~という価格設定。この点だけは「メルセデスらしからぬ」と表現してもいいだろう。
SUV 02
Mercedes-Benz GLA 180[メルセデス・ベンツ GLA 180]
このモデル、Q2やGLAと同じCセグメントに属するものの、そこは“ミニ”らしく外寸は2台よりも少しずつコンパクト。ただし、ミニらしい合理性とスペースユーティリティの高さでライバルと肩を並べる室内スペースや使い勝手を実現している。しかし、そうした基本骨格以上に注目したいのが、このクラス初となるプラグイン・ハイブリッドモデルの投入である。
既存のディーゼル・モデルに追加されるかたちでデビューしたミニクーパー SE オール4は、1.5リッターのガソリン・エンジンに加えてバッテリーとモーターを搭載。家庭用電源から充電した電力で、エンジンをまったくかけることなく40km(ヨーロッパ規格による)を走行できるほか、電気を使い切れば通常のハイブリッドカーとしても使用でき、環境への優しさをアピールしている。
SUV 03
MINI Cooper SE Crossover ALL4[ミニクーパー SE クロスオーバー オール4]
SUV 04
VolksWagen tiguan[フォルクスワーゲン・ティグアン]
大ヒットSUVもさらなる小型へと"進化"
SUV 05
Jaguar E-PACE「ジャガー Eペイス]
SUV 06
Range Rover Velar[レンジローバー ヴェラール]
SUV 07