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2017.08.12

初の愛車はタクシー上がり再生車

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文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト)
イラスト/溝呂木 陽 
僕の愛車第1号はルノー・4CV。「タクシー上がり再生車」だ。この話、過去にもいろいろな場で触れてきたので、ご存じの方も少なくないとは思う。でも、僕の「クルマ備忘録」からはどうしても落とせない。
 
生まれて初めての愛車を手に入れたのは19才の時。大学1年の秋頃だったと思う。
 
16才からバイク一筋で突っ走ってきた仲間が大学に入るとばらけ始めた。集ってもあまりヒートアップしない。とくに理系に行った仲間など、「勉強しないと前に行けない」、「バイクに乗ってなんかいられない」と。
 
周りのそんな空気に僕も抵抗感はなかった。
 

 「大学に行ったら、自分の思い通りになんでもやれる」、と、高校の時は思っていた。
 
制服も好きじゃなかったし、バイクで学校に来ちゃいけない、制服で喫茶店に入っちゃいけない、ちょっと悪さをすると親が学校に呼ばれる・・・なにかと鬱陶しかった。大学に入ったら、そんな鬱陶しさから解放されるんだとワクワクしていた。
 
でも、実際大学に入ったら妙に自己抑制が働いて大人しくなってしまった自分がいた。
 
僕だけじゃない。周りも大方がそうだった。 で、気づいたのが、「縛りがある方が、それを破る快感があるし、エネルギーも湧く」ということ。単にガキだっただけだろうといわれれば反論もできないが、高校時代の方がエネルギーがあったのは事実だ。
 
 
そんな流れの中、バイク仲間は一人二人と欠けていった。僕も「大学生だから大人?」みたいな新たな感覚に戸惑いながら、「 穏やかな日々?」を送るようになっていった。
 
そして、家内に出会いバイクを手放した。
 
父親は僕を自由にさせてくれたし、バイクも反対しなかった。でも、バイクに乗る条件として、厳しく約束させられたことがひとつある。「女性を乗せないこと」だ。「人様のお嬢さんを傷つけたりしたら許さない」と言われていた。僕もそれを守った。一度も女性を乗せたことはなかった。付き合い始めた家内はバイクに興味津々で「乗りたい。乗せて!」と言っていたが、乗せなかった。そしてバイクを手放し、4輪に乗り換えた。
 
 
もちろん、ほしいのはカッコいいクルマ。
 
となれば輸入車だ。でも高くて買えない。
 
バイクも輸入車が買えず、輸入車に近い雰囲気と性能の日本製バイク「HOSK」を買ったが、クルマも同様なアプローチをした。
 
で、対象になったのが、日本メーカーでライセンス生産された欧州車。日産のオースティン、いすゞのヒルマン、日野のルノーだ。
 
オースティンは僕にはちょっと大人っぽすぎ。ヒルマン・ミンクスは手ごろな価格の中古車が見つからなかった。結局、残ったのがルノー・4CVだった。
当時(1959年)目黑通りにルノーの販売店があり、中古車も扱っていた。
 
そこで「タクシー再生新車」なるものを発見。聞くと「タクシー上がりでコンディションのいい個体を選び、必要な箇所の修理と部品交換をし、新車のようにしたもの」と説明された。加えて「お望みならお好きな色に塗りますよ!」と。さらに「シートカバーもお好きな色で新調しますよ!」と追い打ちを。
 
この追い打ちで僕は「KO」された。
 
ボディカラーは「ミルクチョコレート」系の濃淡(2トーンカラー)を指定、シートカバーはオフホワイトを頼んだ。
 
ボディカラーは、たぶん、当時見たフランス映画辺りにイメージサンプルがあったのだと思う。タイヤはもちろんホワイトリボン付。
 
 
仕上がった「僕のルノー」は大成功だった。 お洒落だった! 家内も大喜びだった。
 
ルノー・4CVはタクシーでも多く使われていた文字通りの大衆車だが、僕のルノーだけは「別格」だと思っていた。事実、街でも多くの視線を受けたし、友達にもウケた。作戦は成功だった。
 
4CVは非力で遅かった。でも、軽量で身のこなしはよかった。遅くても、走り味は軽快でスポーティ。楽しかったし、乗り心地もよかった。「外車に乗っている気分」もしっかり味わえた。もしカラー写真でも残っていれば、お見せしたかった。 
 
初めての愛車、ルノー・4CVは「僕の自慢の1台」だ。ちなみに、タクシー上がり再生新車の価格は37万円だったと思う。
 
●岡崎宏司/自動車ジャーナリスト

1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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