
ベンツが標榜する世界一のセダンとは一体どんなクルマなのか?
1972年に初代が登場して、世界中のメーカーからベンチマークと目されてきた。現行のSクラスは2013年に発売されていらい30万台を売り上げてきた。
そして2017年7月に大きく改良が施された。新型はより快適性が上がって、これは最高のおもてなしグルマでは?と思える出来になったのだ。
「世界一のセダンを作るというのが常に持っている目標です」。国際試乗会の会場になったチューリッヒのホテルで、開発担当者が語った言葉だ。
読者は先刻ご承知のように、昨今はなにをもって世界一とするかの基準があまりにも多様化している。従来はスピードや快適装備の数だけみていればよかったけれど、いまはなかなか……というのが現状。きっとご存知ですよね?

大きな特徴のひとつはエンジン。看板車種はエンジンこそ命。メルセデス・ベンツは欧州における自動車の鉄則をよく分かっている。今回は新しいエンジンが惜しげもなく搭載されて話題になっている。
3リッター直列6気筒、新設計の4リッターV型8気筒を中心に、6リッターV12、それに「もっともパワフル」と謳われる3リッター直6ディーゼルまで。
同じ排気量でもより高出力のモデルもあるし、後輪駆動に加え4輪駆動版が組み合わされるモデルも。
今回はS560とメルセデスAMGのS63 4MATICという、まず日本に導入されるモデルを中心に試乗した。驚くほどパワフルで楽チンだった。
余裕のパワーと燃費を両立する、新設計のV8エンジン
なにしろこのV8エンジン、日本での人気の理由でもある例の低音を強調とした独特のサウンドはしっかり持っているいっぽう、「世界でもっとも経済的なV8」とメルセデス・ベンツの開発者が言う。
新しいV8の特徴は気筒休止システムの採用にある。低負荷時は4気筒が休止する(体感的にはわからない)。それによって燃費をかせぎ、燃料消費は従来のV8より10パーセント向上しているそうだ。
最高出力は345kW(469ps)、最大トルクは700Nm。従来の日本名S550の4663ccV8に対して最高出力で10kW(14ps)上がっている(最大トルクはおなじ)。
あらゆる速度域においてパワフル。低音をひびかせながら力強く加速していく感覚は従来からのSクラスファンにおなじみのものだ。
9段オートマチックギアボックスは、従来よりギアがつながる速度が速くなりレスポンスがより向上したという。
ギアの選択も経済効率優先だが、「ダイナミックセレクト」でスポーツあるいはスポーツ+というドライブモードを選べば太いトルクバンドをしっかり使ってくれる。
ただどんな低回転域でも力が足りないと思う場面は皆無だろう。1500rpmから2000rpmのあたりを使いながら、ゆったりした気分でドライブするのがよく合っている。

Sクラスのもうひとつの魅力はどんな路面でも乗員に不快さを感じさせない乗り心地。これが女子ウケする大きな理由でもある。
性能が大きく向上したステレオカメラで15メートル先の路面を常に読んで、サスペンションをつねに最適な状態にして快適性を提供するシステムは特筆ものだ。
さらに油圧システムを積極的に利用して、ドライバーが選んだドライブモードに合わせてベストと思われる操縦性を提供してくれる。
カーブでボディの傾きをコントロールするシステムも、今回からSクラスに初採用となっている。静かで、乗り心地ばつぐん。最上のおもてなしが出来るのである。
Sクラスはなによりパワーを求める声にもしっかり応えてくれる。
最強のウィークエンドエクスプレス、メルセデスAMGのS63 4MATIC

なかでも積極的に運転を楽しみたい向きが好むのはメルセデスAMGである。いちどでも運転したことがあるひとには釈迦に説法だけれど、大きなセダンの姿をしたスポーツカーだ。
メルセデスAMGのS63 4MATICは、AMGで組まれた4リッターV8エンジン搭載が新しい点だ。これは従来の5.6リッターに代わるもの。
排気量はだいぶ小さくなったが、430kW(585ps)から450kW(612ps)へと最高出力はアップ。最大トルクは900Nmのままだが、実際に超ド級のパワーだ。
S560と比較してアクセルペダルを踏み込む時間が同じだとすると、その間に進む距離があきからに違う。それだけパワーがあるということだ。
ボディの剛性感はサーキットで試せば、フツウのメルセデス・ベンツと違いが出るかもしれないけれど、一般道では(メルセデスもすごいので)大きな差は感じない。
とにかく加速感が最大の魅力だ。V8エンジンの低回転域から太いトルクが出るかんじが好きなら、たしかにS63 4MATICにより分があるといえる。
ステアリングホイールを切ったときの車体の動きもクイックだし、全長5.3メートルの4ドアで、こんなに楽しくていいの?と驚かされる。

新しいSクラスはまさにウィークエンドエクスプレス。女の子を誘って出かけるのに、これほど喜ばれるクルマがあるだろうか。
さらにエナジャイジング・コンフォートコントロールという注目の新装備が盛り上げてくれそうだ。
最新のコンフォートシステムに見る、サルーンの未来型
メルセデス・ベンツの広報資料にある言葉を借りて簡単に説明すると「さまざまな車載コンフォートシステムを統合したもの」となる。

なかでも特筆すべきは、ドライバーの求める気分に合わせて車内環境がコントロールできるところだ。
「フレッシュネス」「ウォームス」「バイタリティ」「ジョイ」「コンフォート」それに「トレーニング」という6つのプログラムがある。
これは女の子といっしょに楽しめるシステムだ。たとえばバイタリティを選ぶとドライバーがヤル気に、いやいや楽しんで運転をやる気になるムードを作ってくれる。
実際には車載コンピューターが音楽を選んでくれる。音楽は初期設定では車載の曲から選択され、BPMが速いものを自動で選択する。
試してみるとなかなかおもしろい。自分の音楽ライブラリから選んでもらうようにすると、もっとヤル気が出そうだ。

なんともおもしろいが、昼間のドライブだけだったのでこれは試せなかった。
オプションで64色の照明色が搭載できるそうなので、夜のドライブでふたりの世界を楽しむのにぴったりだろう。
Sクラスはオヤジさんのクルマと思っていては、絶対に損をする。
メルセデスAMGは写真のS63 4MATICと12気筒のS65がラインナップされる
ギアボックスはAMGスピードシフトと呼ばれる変速が早い9段が従来の7段に代わって搭載される
レースをやっているだけあってとばしたときの操縦性ばつぐんのメルセデスAMG
大きなエアダムが特徴的なS63(グリルの横格子はすべて3本になった)
S63は先代の5.6リッターより20kW(27ps)アップした4リッターV8搭載
メルセデスAMGにはIWCのアナログ時計が装備される
TFT液晶を使った計器盤にはさまざまな情報を表示できる
S560は後輪駆動仕様と4輪駆動仕様、それに標準ホイールベースとロングホイールベースが用意されている
3982ccV8は静止から時速100kmまでを4.7秒で加速する
9時15分だけは操作のために革を巻いたステアリングホイール(写真はdesigno仕様)
ステアリングホイールのスポークにはタッチ式のコントロールが備わりアダプティブクルーズコントロールの速度設定などができる
アンビエントライトはさまざまな色が気分によって選べる
ロングホイールベース仕様は大きくリクライニングするシートも選べる
ブルメスターのハイファイはオプションで搭載できる
LEDを使ったヘッドランプで3本ラインはSクラスのみ
メルセデスAMGの強力なストッピングパワーを生み出すディスクブレーキ
歩行者と衝突しそうになったとき対向車がなくて道路の幅員が十分ならば車両がステアリングホイール操作に介入して衝突を回避する
メルセデスAMGは写真のS63 4MATICと12気筒のS65がラインナップされる
ギアボックスはAMGスピードシフトと呼ばれる変速が早い9段が従来の7段に代わって搭載される
レースをやっているだけあってとばしたときの操縦性ばつぐんのメルセデスAMG
大きなエアダムが特徴的なS63(グリルの横格子はすべて3本になった)
S63は先代の5.6リッターより20kW(27ps)アップした4リッターV8搭載
メルセデスAMGにはIWCのアナログ時計が装備される
TFT液晶を使った計器盤にはさまざまな情報を表示できる
S560は後輪駆動仕様と4輪駆動仕様、それに標準ホイールベースとロングホイールベースが用意されている
3982ccV8は静止から時速100kmまでを4.7秒で加速する
9時15分だけは操作のために革を巻いたステアリングホイール(写真はdesigno仕様)
ステアリングホイールのスポークにはタッチ式のコントロールが備わりアダプティブクルーズコントロールの速度設定などができる
アンビエントライトはさまざまな色が気分によって選べる
ロングホイールベース仕様は大きくリクライニングするシートも選べる
ブルメスターのハイファイはオプションで搭載できる
LEDを使ったヘッドランプで3本ラインはSクラスのみ
メルセデスAMGの強力なストッピングパワーを生み出すディスクブレーキ
歩行者と衝突しそうになったとき対向車がなくて道路の幅員が十分ならば車両がステアリングホイール操作に介入して衝突を回避する