文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト)
イラスト/溝呂木 陽

「原稿、書きたくないなぁ」・・・そう思い出したのは7年ほど前。大学を出て以来数十年、ずーっと書いてきた。ひと月1000枚(400字)を超えることも度々あった。

自分の考えを、思いを、文章で表現するのは好きだ。とはいえ、仕事が増えるにつれ、原稿の量は「楽しめる枠」を超えていった。

毎日原稿に明け暮れる僕を見て、息子は「絶対オヤジのようにはならない!」と、密かに母親には言っていたらしい。でも、いつのまにか同業者になり、かなりの量の原稿を書いている。これってちょっと可笑しい。

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僕の仕事は、外から見ると「美味しい仕事」に見えるらしい。友人、とくに遠慮会釈のない学生時代からの友人たちは「お前はいいよな!」「どんなすごいクルマでもホイホイ乗れて、ルンルンで金稼げるんだろ!」という。そう見えるかもしれないが、彼らは重要なことを忘れている。クルマを楽しんだ後には必ず「原稿書き」という重い作業が待ち受けていることを。なので、そう反論すると、彼らは「お前、昔から文章書くの速かったよな!」とくる。ま、それは否定しないが、大学の論文形式試験で教授に突き返されない文章と、生計を立ててゆく文章とではわけが違う。そこがなかなか理解してもらえない。

「書きたくないなぁ」と思ったときまず考えたのは、関係者、お世話になった方々へのご迷惑を少なくしたいということ。そこで3年ほどの時間をかけ、徐々に執筆量を減らしてゆくことにした。幸い多くからご理解を頂けたが、未だやめられていない媒体もある。

ところで、「書きたくない」といってもすべてではない。書きたい原稿もある。ただし、単発原稿に限ってだ。連載は基本受けない。

だから、時間に追われて書くことはほとんどなくなった。今は快適に楽しく書いている。

そんな中、突然、Web LEON の前田陽一郎編集長から原稿依頼のお話がきた。

LEONは一時期深く関わっていたこともあり、今でも愛着がある。加えて最強のブランド誌だ。心は動いた。で、とりあえずお話だけでもと前田編集長にお会いした。ところが、開口一番、「お好きなことを自由に書いていただければ!」と、なんとも光栄で有り難いお言葉が・・・これであっさり轟沈だ!

「原稿は書きたくない」「連載はいや」という、厚かったはずの2枚の扉は、前田編集長の誠意と豪腕にいとも簡単に突破された。

そんなことで、毎週一回、これまでの人生で無数に出会ってきたあれこれをテーマに「備忘録」的なものを書いてゆくことにした。

LEON編集部に、前田編集長に感謝しつつ、久しぶりの連載を始めます。みなさま、よろしくお願いいたします!

●岡崎宏司/自動車ジャーナリスト

1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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