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2021.01.10

モータージャーナリストが本気で欲しい! と思う電気自動車

今年の4月でクルマに関わるようになってから65年目になる岡崎宏司氏。彼のクルマ人生に電気自動車(EV)が加わる要因となったクルマはコレだった!?

CREDIT :

文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト) イラスト/溝呂木 陽

岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第150回

僕はずっと、EVがほしかった!

明けまして、おめでとうございます!
今までに経験のない状況下で迎えた2021年ですが、いかがお過ごしでしょうか。いつもは、2日に親戚一同が集まり、賑やかな時を過ごすのですが、今年は家内と二人で静かに過ごしています。

ウィーン・フォルクスオーパーのジルヴェスター・コンサート(サントリーホール)で新年を迎え、その足で神社に参拝。午前3時頃家に帰り、10時頃起きてお屠蘇とお雑煮を、、、長年続いてきた大晦日と元日の過ごし方も途切れました。とはいえ、家族みんなが健康で新年を迎えられたことには感謝しています。

2021年はどんな年になるのでしょうか、、、まだわかりません。が、多くにワクチンが行き渡り、穏やかな日々を迎える、、、そんな日が一日でも早く来ることを願っています。そして、そんな日が来たら、家族はもちろん、友人たち知人たちと「美味しいものを食べて」「楽しいお喋りをして」「思い切り笑って」、、、過ごしたいと思っています。

さて、ですます調はここで終わりにして、以下、本題に入ります。
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昨年、EVについては新たな流れがでてきたし、その是非論も多く見聞きするようになった。

僕も、ジャーナリストとしては当然、あれこれ考えるし、自分なりの意見ももっている。しかし、一個人としては、単純にEV (BEV) の走り味が好きだし、EVに乗りたい、EVがほしいという思いを長年持ち続けてきた。

1980年代辺りから、メーカーの実験車両には度々乗っていた。が、いずれも重い鉛バッテリーを積んだもので、「とりあえず作ってみました、、、」レベルのものでしかなかった。走行距離にしても数十km程度と、「実用にはほど遠い」代物だった。

そんな時代から30年ほど経った2009年。初めて「いいな!」「ほしいな!」と思えるEVに出会った。実証実験車「MINI E」だ。

日本には20台くらいが割り当てられたように記憶しているが、その中の1台に1週間ほど乗る機会があった。
MINI Eは、後席を潰してリチュウムイオン・バッテリーを積んでいた。つまり、2シーターということ。でも僕は、その潔さにかえって惹かれた。

走り、、、とくに出足の瞬発力にはしびれた。強めの回生ブレーキにもしびれた。文字通り「ワンペダル」で自在に敏捷に走った。

最大走行可能距離は240kmとされたが、実力がどのくらいだったかは忘れた。「めいっぱい走りを楽しむ、、、」ような使い方では、いい値の半分程度しか保たなかっただろう。

それでもよかった。当時は常時2~3台を所有していたので、「横浜と東京を往復=約50km」できれば、「僕の必要とする最低限の実用レベル」は満たしていた。
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MINI Eがわが家にいた1週間、他のクルマには乗らなかった。楽しくてしょうがなかった。もし、MINI Eが市販車だったら、間違いなく僕の「EV第1号」になっていただろう。

その翌年の2010年には、日産からリーフが誕生。真っ当なEVだったが、デザイン的にも走り的にも「ほしい!」とはならなかった。2013年には「話題のテスラ」が日本上陸。当然すぐ乗った。確かに、いろいろな面で既存の常識を超えるEVだった。速いし、走行可能距離も長い。

でも、「すごい!」とは思ったが、「ほしい!」とは思わなかった。理由は単純。僕の目に「カッコいい!」と映らなかったからだ。もし、カッコウが気に入ったモデルがあったとしても、テスラのサイズは僕の許容範囲を超えている。価格と性能は文句なしなのだが。

日産リーフは2018年、2代目に進化した。走りも大きく実力を上げたし、高いレベルの運転支援システムにも惹かれた。でも、インテリア・デザインにはどうしても頷けなかった。

そして2019年。ついに「ほしい!」と思うEVがデビューした。ジャガー I PACEだ。スタイリッシュだし、走りはいいし、走行可能距離も十分、、、だが、これも、サイズという、僕にとっては高い壁が立ちはだかった。

前にも書いたが、僕は基本的にコンパクト派。数多い車歴の中でもLサイズは3台しかない。ジャガーXJが2台(1991年と1993年)とデソート・ファイアスイープ(1957年)だけだ。

「EVもここまできたか!!」と思わされたアウディ e-tron もまた、同じ理由で諦めざるをえなかった。
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箱根を走り、半ば陶酔状態、、といえるほどの心地よさを味わった。「最高だ!」と感激もした。でも、結局、4900×1935×1615mmのサイズを受け容れる決断はできなかった。ちなみにガレージはまったく問題ない。たとえ、RRを2台買ったとしてもOKだ。

そんなことで、EVに関してはかなりモヤモヤしていたのだが、昨年秋、PSA(プジョー、シトロエン、DSオートモビル・グループ)がモヤモヤを吹き払ってくれた。DS3クロスバック・E -TENCE、プジョー・e-208とe-2008、、、一気に3種のコンパクトEVを送り出してきたのだ。

サイズは文句なし。SUVタイプの2008にしても、旧い立体駐車場にも駐められる。加えて、デザインがいい。いや、加えて、、、ではなく、「まずはデザインに惹かれた!」と言った方が正しい。中でも、208はいい。エクステリアもインテリアもモダンでスタイリッシュ。パッケージングもいい。

e-208も基本デザインは共通。50 kWhの大容量リチウムイオン・バッテリーを積んでいるものの、使い勝手はガソリン車と変わりない。サイズがOKで、デザインもOKとなれば、残るは走り味/乗り味のチェックだけ。

短期の試乗だったが、これもOK。EVならではの心地よさが味わえた。
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テスラやアウディ e-tronのように速くはない、、、が、EVならではのレスポンス、直線的な加速、静粛性、重心の低さがもたらす安定感、、、どれもが心地よさに結びつく。簡単に言えば「軽快で爽やかな、、」といったところだろう。

僕の住まいは横浜。よく行く東京都心部との距離は往復で50kmほど。たまに泊まりに行く、お気に入りの箱根のホテルは往復で170kmほど。

e-208の一充電航続距離は340km (WLTP) 。実力を6掛けで見積もると204km になる。箱根往復も、たぶん大丈夫だろう。ホテルには充電設備が完備されているから、寝ている間に充電もできるし、、、。

ちなみに、e-208 に積まれるバッテリーは、火力発電中心の中国産だし、日本の電力も火力発電中心。わが家のエリアも火力発電のようだ。なので、EVとはいえ、絶対値としてのCO2削減にはあまりお役には立てないということになる。

すでに触れたように、EVを巡ってはいろいろな議論がでている。しかし、僕は個人として単純にEVの走り味が好き。だから、1度はEVと生活を共にしてみたかった。

プジョー・e-208がそんな僕の望みを叶えてくれた。僕のクルマ人生最終章の1ページにコンパクトでスタイリッシュなEVが加わる、、とても嬉しいし、ハッピーなことだ。ちなみに、わが家のガレージには3kwの充電器がある。だから、好きなときに充電できる。

プジョーの説明書によると「50km走行分の充電時間は3kw普通充電で約3時間 (目安)」となっている。100km走行分で約6時間。僕は、基本、充電には深夜電力を使う。

極暑や極寒の時期の昼間は電力事情が逼迫しがちだが、深夜の余剰電力を使えば、そんな問題もクリアできるだろうし、少しは世のためにもなれるだろう。

わが家の日々の走行距離は長くないので、1週間に1度か2度の充電でこと足りる。それも、深夜充電のタイマーセットをしておくだけでいいので気は楽。

もうすぐ、初めてのEVとの生活が始まる、、楽しみだ!

● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト

1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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