予選直前に65号車・LEON RACINGの溝田監督が「コンマ4秒差以内に10台以上……。これは厳しい予選になりますよ」とぼそり、つぶやいた。
まさか、この嫌な予感が的中してしまうとは――。
5月3日、4日に行われたスーパーGT第2戦の舞台は静岡県御殿場にある富士スピードウェイ。国内随一の直線を誇る高速サーキットだ。初戦の岡山でポールポジションから2位表彰台を獲得したLEON RACINGは、もれなくウエイトハンデ32㎏も積まれている。
名誉のハンデと言えばそれまでだが、グラムを削るスーパーGTの世界に置いて32㎏は相当な差になる。直線の伸び、ブレーキングのタイミングとその効き、タイヤの負担などなど。だからこそのハンデなのだが先の監督の言葉にもあるように“コンマ”の世界で戦うとなるとこれが非常に重要になるのだ。
そして行われた予選。Q1担当のファーストドライバー黒澤治樹選手が1.36.899というタイムを叩きだす。1位は同じメルセデスAMG GT3車両の4号車。こちらが1.36.189。1週約4500mを走って約0.7秒差。14位までが次のQ2に進めるのだが、LEONは15位という結果に……。翌日の決勝は8列目、15番グリッドからのスタートが決まった。走行後、黒澤選手は「自分たちが予想していたぐらいのタイムは出ましたが、それ以上に周りが速かった。もう少しタイムを出さなければ……」と明日への再起を誓った。
5月4日、決勝当日。雲の多い午前中から一転、決勝レースの始まる14時には五月晴れに。好天に恵まれ、約5万8000人という昨年を大きく上回る観客が見守るなか、レースはスタートした。
この日のスタートドライバーは蒲生尚弥選手。富士で行われる第2戦は500㎞レースで、約100周回するロングレース。各チームともに2度以上のピットインとドライバー変更が義務付けられており、このあたりの作戦も順位に大きく影響するのだ。
14時17分、スタート。蒲生選手はオープニングラップのうちに1台をかわして14番手に浮上、2周目にも1台、3周目にももう1台と華麗なオーバーテイクショーを披露。さらに先行車両の混乱等もあり、11周目には9番手と早くも入賞圏内に。
そして約1時間後、37周目に黒澤選手と交代。このあたりで順位は7番手に。その後は黒澤選手がランボルギーニ・ウラカンと激しい6位争いを繰り広げたものの、なかなか順位は変わらない。
67周目、ピットインを敢行し蒲生選手が再びコースイン。ピットクルーの見事な作業により、またもやひとつ順位を上げる。
ゴールまで残り5周となったところで、4番手を走行していた初戦のウィナー、グッドスマイル初音ミクAMG4号車がパンクにより緊急ピットイン。これにより、蒲生選手は5番手に浮上し、そのままチェッカーを受けることとなった。
LEON RACINGは5位に入賞による6ポイントと、優勝チームと同一周回を重ねたことによるボーナスポイント3点を加えた全9ポイントを獲得し、年間シリーズランキングも2位をキープ。続く第3戦の舞台は九州・オートポリス。ウエイトハンデは44㎏と、小柄な女性ひとりを乗せて走るような状況にはなるが、昨年、熊本を襲った震災の影響で開催が見合されてしまったサーキットでチーム一丸となった戦いが続く。
文/LEON編集部 近藤高史