2016.11.14
クルマが映す未来のカタチ
15年前の創刊当時から、ずっとクルマに寄り添ってきたLEON。その姿勢は今後も変わらないがテクノロジーの進化にともないクルマ自身が年々、変貌を遂げているのも事実。未来のクルマはいったいどんなカタチをしているのか――? 自動車界の最新ニュースから、その姿を追ってみた。
多様な液晶ディスプレイがクルマの未来化を加速
つまり、単なる機械という枠組みをはるかに超えて、高度に知的化された情報機器と呼んでもおかしくないほどの進化を遂げているのだ。
例えば、電気自動車としては異例の航続距離を誇るテスラ・モデルSはセンターコンソール部に17インチの巨大ディスプレイを配置。
タブレット感覚でこのスクリーンを操作すれば、オーディオやエアコンのコントロールができるのはもちろんのこと、車両のエネルギー消費量や航続距離予測、さらにはスケジュールまで表示することが可能で、スケジュールに登録された内容をナビの目的地設定に活用することもできる。
それらはスマートフォンからも操作可能で、まさにIT化された自動車の象徴的存在といえるだろう。
TESLA テスラ
巨大ディスプレイでクルマとコミュニケーション
しかもオプションの“リモート・コントロール・パーキング”を装備すれば、車外から指先ひとつでクルマをコントロールし、クルマを駐車スペースから出し入れさせることも可能(ただし進入角度が10度以下の場合)。まさに“未来からやってきたクルマ”という言葉がぴったりだ。
BMW ビー・エム・ダブリュー
ついにクルマのキーにディスプレイが装備
Mercedes-Benz メルセデス・ベンツ
光を自在にコントロールする新型Eクラス
クルマの知能化により安全性が格段に向上
メルセデス・ベンツの新型Eクラスは、84個のLEDをヘッドライトの光源に採用。ひとつひとつの素子を緻密にオン/オフすることで、先行車や対向車を眩惑させない次世代のマルチビームLEDヘッドライトを実用化した。
LEDの数が多ければ多いほど、眩惑防止のために消灯する範囲を狭くできるため、安全性はより向上するといえる。さらにはLEDをエンタテインメントにも活用している。
キャビンに光のアクセントを加えるアンビエントライトはなんと64色から選択可能。
ボルボの最新SUVであるXC90には、前車に追随して自動的に車速を制御するアダプティブクルーズ・コントロールや追突防止の自動ブレーキが装備されているのはもちろんのこと、右折時に対向車の存在をいち早く把握。
すぐさまドライバーに知らせると同時に、自動的にブレーキをかける機能も搭載された。
Volvo ボルボ
生命にかかわる事故ゼロを目指して
“ぶつからないクルマ”でおなじみのスバル・アイサイトもデビュー以来8年でver.3にまで進化し、さらに高機能化を達成。いまや先行車や対向車だけでなく、動きの予測が困難とされてきた歩行者や自転車までも検知できるように。路上に存在する人や乗り物を正確にとらえることで、より精度の高い安全性を実現しているのだ。
SUBARU スバル
人や自転車まで検知する最新版アイサイト
技術の "進化" がもたらす乗る歓びの "深化"
一方で、これまで以上にドライバーズ・アシスタンスを充実させることでドライバーの負担を軽減し、安全性をさらに向上させようとする努力はいまも各自動車メーカーが取り組んでいるところ。
そうした流れのなかで実用化が決まっているのは運転の責任をクルマ側が部分的に担う“半自動運転”とでもいうべきもので、アウディは来年、この技術を世界で初めて商品化すると公言している。
そんなアウディが自動運転技術のマイルストーンともいうべきテスト走行をドイツ・アウトバーンにて成功させた。A7をベースにした“ジャック”という名の先行開発車両は、道路状況を確認しながら走行するだけでなく、必要に応じて周囲の車両に“道を譲る”ことまで実現したというから驚く。
例えば、高速道路を走行中に他車が追い越しを行う場合、これに関連する複数の車両の位置関係を勘案したうえで、加速するか、それとも減速するかを判断。相手車両がよりスムーズに追い越しできるよう、自分自身の車速を制御するというのだ。
路上を走る車両がすべて自動運転車になればこうした気遣いも不要だろうが、人と機械が入り交じることになる過渡期には、こうした「クルマ側からの配慮」も重要になってきそうだ。
AUDI アウディ
自動運転テストカー"ジャック"
つまり、いくら自動運転の実用化が視野に入ってきたとはいえ、クルマの官能性も忘れるわけにはいかないもの。先頃発表されたレクサスLC500もクルマのエモーショナルな魅力にフォーカスをあてた新世代モデルである。
レクサスのフラッグシップクーペとして登場するLC500でまず注目したいのは、そのスタイリングだ。全体がなだらかな曲線で構成されている一方で、要所要所にシャープな印象のモチーフを採用することで、先進性やスポーツ性をラグジュアリーな世界観で表現することに成功した。エンジンは官能的なことで定評あるV85L NAで、最高出力は475ps。
これを搭載するプラットフォームはまったくの新設計で、レクサスらしいすっきりした乗り味とダイナミックな走りを両立している。
LEXUS レクサス
新型フラッグシップクーペで未来へ!
さらにシフトバイ・ワイヤや次世代マルチメディアを操作系に取り入れることで、ドライビングの喜びが五感を通じて味わえる環境を整えたという。
テクノロジーの発達によりクルマの未来化が進むなか、技術の発展でドライビングの喜びも深化させていけるという好例であり朗報だ。
これから先、クルマがどんな進化を遂げていくのか、目が離せない――。
※本特集は2016年11月号で掲載した企画の抜粋です