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2020.08.16

80年代のパリ・ロンドンも猛暑だった!?

日本各地で猛暑日が続いている。そんななか、筆者はふと思い出すことがあるそう。1980年代半ば頃、仕事で向かった先パリ・ロンドン。夏の欧州で起きたハプニングとは?

CREDIT :

文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト) イラスト/溝呂木 陽

岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第141回

猛暑の夏、、パリ/ロンドンの思い出

レクサスLS400 イラスト/溝呂木 陽
猛暑が続いている。毎日、ほんとうに暑い! 現代病に犯されたヤワな身体は、とても冷房なしでは過ごせない。もし、停電して冷房が停まったらどうしようって、けっこう真剣に考えたりする。僕も家内も暑さにはからきし弱いので、、。

だから、わが家の旅は冬に集中している。夏の旅はしたことがない。夏は「家でじっとしている」だけ。昔からだ。でも、仕事の旅は季節を選べない。猛暑に耐えて旅することも受け容れなければならない。

そんなことで大変な思いをした旅があった。行き先はパリとロンドン。1980年代半ば頃だったと思う。ある雑誌から「パリ/ロンドン、夏の散策、、」みたいなテーマの仕事を頼まれた。「写真と文、、すべてお任せ」の取材依頼だった。

僕は引き受けた。夏の欧州は好きではなかったが、まあ「仕事だから」引き受けた。「旅のお世話に編集者を同行させます」とのことだったが、丁重にお断りした。ひとり旅の方が気楽だし、自由度が高いからだ。

飛行機とホテルの手配だけを頼んで、あとはすべてひとりでやることに。で、8月初旬だったと思うが、まずパリに飛んだ。「パリは暑い」という情報がなんとなく耳に届いていたが、とくに気にはならなかった。当時のパリ、、欧州の夏は過ごしやすいと思い込んでいたからだ。

ところが、パリに着いて驚いた。猛烈に暑い。おまけに湿気もひどい。東京にも勝るほどの不快な暑さだった。最近、欧州の異常な猛暑がニュース等で伝えられることが多くなった。昨年はフランスで45度!!。

史上最高の温度が記録された。今年も、パリで7月末に42.6度!。72年ぶりの記録更新とのこと。でも、35年ほど前のパリ行きに際して、「猛暑」の意識はまるでなかった。「少し暑くても、カラッとしていて過ごしやすい暑さ」といったイメージしかなかった。
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そんなイメージとは真逆、、不快さ満点の猛暑の出迎えに、暑さ嫌いの僕は出だしから萎えた。「夏の散策、、」という取材テーマを考えると、心は一層重くなった。

そんな僕に追い打ちをかけ、決定的ダメージを与えたのはホテル。編集部が予約してくれていたホテルには「冷房がなかった!」のだ。そのホテルはいわゆる5つ星。老舗の高級ホテルだった。

ふつうなら編集部には感謝すべき選択なのだが、「冷房なし」がわかった瞬間、愕然とし、無性に腹が立った。今では5つ星ホテルに冷房がないなんて信じられないこと。だが、当時の欧州では、とくに珍しくもなかった。

それを知りながら、編集部に念を押さなかったのは「僕のミス」、と言い聞かせて苛立ちを抑えた。でも、部屋に入ると、思ったより暑くなかった。年季の入った、分厚い石造りによる断熱効果なのだろう。少しホッとした。

夜、寝付けるか心配だったが、飛行機での寝不足も手伝ってか、無事寝付けた。翌日も猛暑。コンシェルジュに予報を聞いたら、「ここ数日は猛暑」とのこと。でも、出かけざるをえない。散策にはまったく不向きな猛暑だが、仕事は放り出せない。

あらかじめ決めておいた散策ポイントには地下鉄で向かった。パリの移動にはなにより地下鉄がいちばん。仕事でもプライベートでも、パリの移動はほとんど地下鉄を使う。ただし、地下鉄にも冷房はない。
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写真を撮りながら、思いついたこと、感じたことをメモしながら歩いた。少しでも汗を抑えようとゆっくり歩いたが、噴き出す汗を抑えるのは無理だった。

で、汗を止め、一息つこうと店やカフェに入るのだが、その度に悪態をついて出てくることになる。そう「冷房がない」のだ。数軒目の店で英語を話してくれる人がいた。

そこで、「冷房なくて大丈夫?」と聞いた。すると、「ほんの1~2週間ガマンすれば冷房なんていらない」と。でも、「今週は暑すぎる。これが続くときついね」ともつけ加えた。

そうか、1~2週間ガマンすればいいのか、、。なんとなく頷けもしたが、旅行者として「大いに不満」な気持ちに変わりはなかった。とくにサービス業で「客にガマンを強いる」のは受け容れられなかった。

アメリカなら、アリゾナとかニューメキシコの小さな町、LAダウンタウンの安モーテル、、どこだってキンキンに冷房は効いている。ちょっと「やりすぎ!!」と思うくらいに。

そんなことを思いだしていたとき、ふと気づいたことがあった。そうだ、「アメリカ資本系の店に行けば冷房はあるはず」だと。

そして、飛び込んだのが「マクドナルド」。大正解だった。アメリカほどキンキンではなかったが、しっかり冷房が効いていた。

以後、朝食とランチはマクドナルドに通った。パリ取材が終わった後、ロンドンに向かった。ロンドン散策は、パリとは趣向を変え、「クルマでの散策」ということになっていた。

ロンドンも猛暑だった。欧州全体が熱波に包まれているようだった。でも、パリと違って「クルマでの散策」なので気分は楽だった。
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ところが、、だ。ヒースロー空港でレンタカーを借り出すところで、気分は一気に暗転した。なんと「冷房付きがない!」。「ウソだろ!」と思ったが、ほんとうになかった。「数台はあるけど、この暑さでみんな出払っている」とのことだった。

どう考えたって、この暑さで冷房なしはカンベンだ。なので、別のレンタカーに行った。が、そこも同じ。3軒目もダメだった。諦めざるをえなかった。

ロンドンの夏も「陽射しは強いけれど、湿度は低い」のが通常のイメージ。だが、あのときは陽射しも強かったし、湿度も高かった。暑かった!

なのに、冷房なしレンタカーでのロンドン散策、、は、きつかった。見事なほどツキに見放された旅だった。救いは、ロンドンのホテルが冷房付きだったこと。

パリから編集部に電話を入れ、「冷房付きじゃなかったら変えてくれ」と頼んでおいた。なので大丈夫とは思っていたがホッとした。ヤレヤレだった。

プライベートの旅、とくに欧州への旅は冬。それもクリスマスシーズンがほとんど。春や秋に旅したことも数回あるが、夏はゼロ。だから、冷房の有無など考えたこともない。

欧州、中でもフランスの冷房普及率は今でも低いといわれる。このところの異常気象がもたらす猛暑で変わりつつあるとは聞く。でも、真夏の欧州旅行に「冷房の確認」はしておいたほうがいい。
念のため、、。

● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト

1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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