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2026.02.11

ついに2026年シーズンから「アウディ」がF1参戦! CEOに聞いたそのワケと本気度とは?

近年、アメリカ市場での人気をきっかけに盛り上がりをみせているレース、「F1世界選手権 (FIA Formula One World Championship)」、通称F1。2026年シーズンは近年稀にみる大幅なレギュレーション変更、そして新規参入チームの登場と話題に事欠かない。そうしたなか、新規参入チームのひとつ「アウディ」がチーム体制発表会を行った。F1にかける本気度がうかがえるその模様をドイツ・ベルリンからレポートする。

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文/藤野太一(自動車ジャーナリスト)
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写真/AUDI AG  編集/森本 泉(Web LEON)

パワーユニットまで自社開発するワークス体制での初挑戦

ニューマシン「R26」のカラーリングはチタンカラーをメインに、鮮やかなラバレッドのアクセントをはさんで、ボディ後部は地のカーボンファイバーを活かしたもの。

▲ ニューマシン「R26」のカラーリングはチタンカラーをメインに、鮮やかなラバレッドのアクセントをはさんで、ボディ後部は地のカーボンファイバーを活かしたもの。

2026年1月20日(現地時間)、ドイツ・ベルリンにてアウディ・レボリュートF1チームがローンチイベントを開催し、2026年型マシン「R26」の正式カラーリングを発表した。

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ローンチイベントの会場は、ベルリン市内にある巨大な工場跡地をリノベーションしたイベント会場「クラフトヴェルク」。大きく重い鉄の扉を開くと、フロアの1階にはアウディのモータースポーツの歴史において活躍したレーシングカーを展示。その2階に特設ステージを用意し、世界中から駆けつけたプレス、スポンサー、チーム関係者など400名を超える観衆の前で「R26」がアンベイルされた。

巨大な工場をリノベーションした会場の2階につくられた特設ステージにて、アウディ初のF1マシン「R26」をアンベイル。400名を超える観衆の前で、大型スクリーン上にあらわれたエースドライバーのニコヒュルケンベルグがベールをはがす演出に歓声がわいた。

▲ 巨大な工場をリノベーションした会場の2階につくられた特設ステージにて、アウディ初のF1マシン「R26」をアンベイル。400名を超える観衆の前で、大型スクリーン上にあらわれたエースドライバーのニコヒュルケンベルグがベールをはがす演出に歓声がわいた。

これまでWRC(世界ラリー選手権)やWEC(世界耐久選手権)、フォーミュラEに参戦してきたアウディにとってF1は初挑戦となるカテゴリーだ。実はF1は資金さえあれば参戦できるというものではない。財政力のみならず、技術力、運営能力など厳しい審査をクリアする必要がある。またこの数年は10チーム20台で選手権争いを行っており、主催者や関係者もやみくもにグリッドに並ぶチーム数を増やすことには積極的ではない。

巨大な工場をリノベーションした会場の2階につくられた特設ステージにて、アウディ初のF1マシン「R26」をアンベイル。400名を超える観衆の前で、大型スクリーン上にあらわれたエースドライバーのニコヒュルケンベルグがベールをはがす演出に歓声がわいた。

F1の世界ではよくあることだが、新規参入する場合は既存のチームを買収しそこから新たなチームをつくりあげていくプロセスをとる。現在のメルセデスAMGもアストンマーティンも同様の過程をふんでいまのチーム体制に至っている。

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元フェラーリのチーム代表がマシン開発3拠点のまとめ役に

ドイツ・ノイブルクにあるパワーユニット開発拠点のテストベンチ。ここはもともとAudi Sportの開発拠点であり、WECやフォーミュラEのマシン開発なども行われてきた。

▲ ドイツ・ノイブルクにあるパワーユニット開発拠点のテストベンチ。ここはもともとAudi Sportの開発拠点であり、WECやフォーミュラEのマシン開発なども行われてきた。

アウディは2022年にF1への参戦を表明。2024年にスイスに本拠を置くレーシングチーム「ザウバー」を買収する。F1チームの多くは高い技術力が必要でコストもかさむパワーユニットの自社開発は行わず、フェラーリやメルセデスAMGといったトップチームから供給をうける体制をとる。2025年シーズンまでザウバーの名称で戦っていたチームもフェラーリのパワーユニットを採用してきた。


しかし、アウディは2026年シーズンよりはれてチーム名を「Audi Revolut F1 Team」とし、パワーユニットも自社開発するフルワークス体制のもとF1に初参戦するという。これは現在のF1において相当に覚悟のいることだ。アウディがそう決断したことのきっかけのひとつが、2026年からの大幅なレギュレーション変更だ。

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昨シーズンまでパワーユニット(ハイブリッド)の出力は、ICE(内燃エンジン)が8、モーターが2の割合と定められていた。それが電動化の流れをうけ、モーター(MGU-K:Motor Generator Unit – Kinetic)の出力を120kWから350kWへと大幅に強化。一方でこれまで義務化されていた熱エネルギー回生システムであるMGU-H(Motor Generator Unit – Heat)の使用を廃止し構造をシンプルなものに変更し、最終的にICEとモーターの出力配分は5:5になるよう定められている。


さらに燃料が化石燃料由来ではない持続可能燃料になる。またマシンの小型化、軽量化も図られることとなり、シャシーも全面的に刷新される。多くのものがリセットされるタイミングゆえ、新規参入するには好機と言えるわけだ。


アウディは現在、スイス・ヒンウィルにある元ザウバーのファクトリー、イギリス・ビスターに新設されたテクニカルセンター、そしてドイツ・ノイブルクにあるアウディのパワーユニット開発施設の3つの拠点を連携し、マシン開発を進めている。

Audi F1 プロジェクト責任者 マッティア ビノット(Head of Audi F1® ProjectMattia Binotto)/1995年にスクーデリア・フェラーリのエンジン部門のエンジニアとしてキャリアをスタート。2016年にはシャシー&パワーユニットのテクニカルディレクターに。そして2019年にはチーム代表に任命され2022年までフェラーリを率いた。2024年に当時ザウバーだったチームに加入し、アウディのF1参戦準備において戦略的および技術的基盤の構築を主導。アウディF1プロジェクトの責任者として、3拠点をシームレスに連携させる責任を負う。

▲ Audi F1 プロジェクト責任者 マッティア ビノット(Head of Audi F1® ProjectMattia Binotto)/1995年にスクーデリア・フェラーリのエンジン部門のエンジニアとしてキャリアをスタート。2016年にはシャシー&パワーユニットのテクニカルディレクターに。そして2019年にはチーム代表に任命され2022年までフェラーリを率いた。2024年に当時ザウバーだったチームに加入し、アウディのF1参戦準備において戦略的および技術的基盤の構築を主導。アウディF1プロジェクトの責任者として、3拠点をシームレスに連携させる責任を負う。

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そのまとめ役を担っているのが、Audi F1 プロジェクト責任者のマッティアビノット氏。F1に詳しい人ならご存知かと思うが、2019年から2022年までスクーデリア・フェラーリのチーム代表をつとめた人物だ。アウディのF1プロジェクトのため2024年からザウバーに加入し、準備を進めてきた。ビノット氏にこれらの開発施設がいまどのような段階にあるのか少し話をきくことができた。


「まずノイブルクについてですが、必要なインフラはすべて揃っています。とても素晴らしい施設でダイナモ(パワーユニット試験設備)やスペースもすべて完備しています。一方でヒンウィルは、現在の私たちのニーズに対してまだスペースが不足しています。新しいシミュレーターの導入を予定していますが、非常な大きな装備となるため新たな建物が必要です」


「また、製造能力を拡大する必要もあります。特にコンポジット(複合材)の内製化はF1では非常に重要で、開発スピード、品質、そしてコスト・予算制限の面でも自社生産が必要不可欠です。エンジニアのデスクも増やす必要がありますし、とにかく全体的にもっとスペースが必要です。アウディ本社は私たちの取り組みに完全にコミットしており、施設やキャンパスの拡張に向けて一緒に取り組んでいます」

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F1はアウディの大変革の一部。いずれはスポーツカーも

あらためて、アウディはなぜF1に参戦するのか。アウディAG CEO兼 Audi Motorsport AG取締役会会長のゲルノート・デルナー氏に聞いてみた。

アウディAG CEO 兼アウディモータースポーツAG 会長 ゲルノート デルナー(CEO of AUDI AG and Chairman of the Board of Directors of Audi Motorsport AG Gernot Döllner)/1993年フォルクスワーゲンAGに入社。1998年にポルシェAGに移籍し、ポルシェ918スパイダーのプロジェクトマネジメントを担当。その後、2011年から2018年までパナメーラモデルシリーズの開発責任者を務める。2021年にフォルクスワーゲンAGに戻り、グループ戦略、製品戦略などを率いたのち、2023年よりアウディAGのCEOに。現在、Audi Motorsport AGの取締役会会長も務めている。

▲ アウディAG CEO 兼アウディモータースポーツAG 会長 ゲルノート デルナー(CEO of AUDI AG and Chairman of the Board of Directors of Audi Motorsport AG Gernot Döllner)/1993年フォルクスワーゲンAGに入社。1998年にポルシェAGに移籍し、ポルシェ918スパイダーのプロジェクトマネジメントを担当。その後、2011年から2018年までパナメーラモデルシリーズの開発責任者を務める。2021年にフォルクスワーゲンAGに戻り、グループ戦略、製品戦略などを率いたのち、2023年よりアウディAGのCEOに。現在、Audi Motorsport AGの取締役会会長も務めている。

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ゲルノート・デルナー氏(以下デルナー)F1への参入はより大きな目標に向けた変革の一部であり、技術力を高め、パフォーマンス向上のための継続的な学習を受け入れ、世界中で優れたパフォーマンスを発揮するアウディの未来をカタチ作るという、私たちの戦略的な決断を強化するものです。このプロジェクトは、アウディのスローガンである『Vorsprung durch Technik(技術による先進)』を示す究極のステージであり、アウディブランドの未来にとって強力な推進力となるでしょう」


── 「F1はアウディにとって大きな目標に向けた変革の一部である」ということですが、具体的にどのように変革しようとしているのか、もう少し詳しく教えてください。


デルナー アウディはいま歴史上最大の転換期を迎えており、我々は車両開発はもとより、ソフトウェア、ハイブリッド、バッテリー技術の開発へとたち向かわなければなりません。


そしてこのF1プロジェクトは、チームワーク、スピード、迅速な意思決定という点で、まさにインスピレーションを与えてくれる“スピードボート”(小規模で高速、機敏に動くプロジェクト)のような存在です。こういったF1の文化をアウディ本体へと取り込みたいのです。このプロジェクトに対してアウディ全社の反応も非常に良く、チームに大きな力を与えています。それが私をとてもワクワクさせます。

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── 新しいレギュレーションの導入に伴い、パワートレインのエンジンとモーターのパワー配分が50:50になります。それはこれからの量産車にどう役立つのか、F1から市販車への技術移転について教えていただけますか?


デルナー F1から市販車への直接的な技術移転は困難ですが、この新しいレギュレーションは、私たちの製品戦略全体にぴったりと合致しています。高度な電動化、持続可能な燃料、そして完全に効率重視のレギュレーション。それらは我々の市販車に移植できるものです。さらに、このプロジェクトを通して目でみて、体感したものが市販車に対してのインスピレーションを与えるでしょう。そういう意味で非常に前向きに捉えています。

現行ラインアップでもっともスポーティな電動スポーツサルーン。RS e-tron GT performance。システム出力680kW(980馬力)で、F1マシンに匹敵するパワーを発揮する。

▲ 現行ラインアップでもっともスポーティな電動スポーツサルーン。RS e-tron GT performance。システム出力680kW(980馬力)で、F1マシンに匹敵するパワーを発揮する。

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── 現在のアウディの量産車のラインアップにおいて、R8もなくなり特別なスポーツモデルはRS e-tron GTくらいしかありません。このような状況をどうお考えですか? 今後スポーツモデルをつくる予定はありますか?


「わたしは2年半前にアウディに入社したのですが、当時はそのような方向性(スポーツカー開発)のプログラムはありませんでした。そこでまず新しいRSモデルから開発をスタートしました。さらに今年中には重要なモデルが発売される予定です。


また、いま初の電動スポーツカー「コンセプトC」の開発にも取り組んでいます。そしていつか、アウディブランドから正真正銘のスポーツカーを発売して、皆様を驚かせる日が来るでしょう。しかし、それについてはまだお話しするにはまだ時期尚早です」

2025年に発表された電動スポーツカー「コンセプトC」。TTやR8の流れをくむ2シータースポーツモデルで2027年の発表が噂されている。

▲ 2025年に発表された電動スポーツカー「コンセプトC」。TTやR8の流れをくむ2シータースポーツモデルで2027年の発表が噂されている。

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── 少し前の話になりますが、F1への参戦が決まったのは2022年のことだったと思います。当時、フォルクスワーゲングループでは、アウディとポルシェの参入も噂されていました。そのときデルナーさんはフォルクスワーゲングループの戦略部門におられたと思いますが、それをどんな視点で見ていたんですか?


デルナー よくご存知ですね(笑)。当時は、フォルクスワーゲングループの中で2つブランドがF1へ参入する可能性があり、もうひとつはポルシェですね、わたしは中立的な立場でみていました。もし2ブランドが参入すれば、少なくともどちらかは2位になるでしょう。それはリソースの配分の観点からも難しい構造だと感じていました。


── なぜ最終的にアウディだけになったのでしょうか。


デルナー それは他部門に関わるプロセスと決定で、私からコメントすることはできません。そして私がアウディに移籍した後、最初の仕事のひとつがF1プロジェクトの再評価でした。9月に入社して10月にはレビューを行い、深く掘り下げた結果、成功したいならもっと開発を加速させる必要があると分かりました。そこからさらにスピードを上げました。


── 欧州委員会による2035年の内燃エンジン車販売中止の決定が延期になりました。アウディとしては内燃エンジンモデルの生産を続けますか?

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デルナー そうですね。前任者の時代には、会社は昨年4月には終了の計画を立てていました。しかし、私はそれも見直しました。少なくとも今後10年間は内燃機関エンジンを続ける予定です。ただし、そのプロセスは継続的に見直されることになります。市場の要求に柔軟に対応し、段階的に決定を下していきます。


── 3月に鈴鹿でお会いできること、楽しみにしています。


デルナー ありがとうございます。まだ100%確実ではありませんが、もし鈴鹿に行くことができたらぜひお会いしましょう。


実は約10年前、デルナー氏がポルシェでパナメーラの開発責任者をしていた頃、単独でインタビューをさせてもらったことがあった。そのことを覚えていてくれて、和やかな雰囲気で話を聞くことができた。


アウディはデルナー氏牽引のもと、長いスパンでのF1参戦にコミットしている。プロジェクト責任者には、元フェラーリのチーム代表であるマッティアビノット氏を、そしてチーム代表には、レッドブル創設時から加入し、在任中14のワールドチャンピオンシップを獲得する偉業を成し遂げたジョナサン ウィートリー氏を起用。トップチームになるまでに少なくとも5〜7年はかかるといわれるなかで投資を行い、2030年には優勝争いができるチームをつくると明言している。

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チームのドライバーは、F1で16シーズン目を迎えるベテラン、ドイツ人のニコ・ヒュルケンベルグ(写真左)と22歳という若きブラジル人のガブリエル・ボルトレートの2人。

▲ チームのドライバーは、F1で16シーズン目を迎えるベテラン、ドイツ人のニコ・ヒュルケンベルグ(写真左)と22歳という若きブラジル人のガブリエル・ボルトレートの2人。

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「R26」は、1月26~30日にバルセロナで行われるシェイクダウンを経て、2月中旬にバーレーン・インターナショナル・サーキットで実施されるプレシーズンテストで走行シーンがお披露目される予定だ。そして3月6日にはオーストラリアにて開幕戦がスタート。3月27〜29日には、鈴鹿サーキットにて日本GPが開催される。2026年シーズンのF1を楽しみに待ちたい。

アウディCEOに聞いたF1参戦のワケとその本気度

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