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2020.07.19

超個性派ならではの商品戦略とブランド戦略

シトロエンを最近よく見かけるようになったワケ

ここ数年、着実に販売台数を伸ばし、街で見かけることも多くなってきたシトロエン。かつてはハイドロニューマチックという独特のサスペンションでマニアックな人気を誇ったが、今ではファッショ性、デザイン性、そして信頼性も大幅に向上し、より広い層に人気を博しているようだ。

CREDIT :

文/岡本幸一郎(モータージャーナリスト) 

記事提供/東洋経済ONLINE
シトロエン C3エアクロス
▲オレンジのアクセントカラーも個性的な「C3エアクロスSUV」(筆者撮影)
このところシトロエンを以前よりもよく見かけるようになった気はしないだろうか? 実際にここ数年、シトロエンは販売台数を着実に伸ばしている。

2015年の途中にはDSシリーズが「DSオートモビルズ」としてブランド独立したものの、2017年にはシトロエンブランド単独で3000台超を達成。創業100周年を迎え、日本でも記念イベントが開催された2019年は、4000台を優に超えるなど、過去最高の登録台数を毎年純増で更新し続けている。
日本における直近のモデル別販売比率(受注ベース)は、2019年には「C3」が56.2%、「C3エアクロスSUV」が16.5%、「グランドC4スペースツアラー」が10.6%、「C5エアクロスSUV」が10.7%で、2020年(1~5月)はそれぞれ41.2%、31.1%、7.2%、15.9%となっている。

デザイン性だけではない「選ばれる理由」

最量販は現行型になってからずっとC3で、ついでC3エアクロスSUVが売れているのは、世界的に伸張著しいBセグメントSUVの中で、商品力の高さがユーザーから評価されていることの表れだ。
一方で、デビューから時間のたった7人乗りミニバンのグランドC4スペースツアラーも、他社のミニバン勢とは一線を画するデザインや乗り心地が評価されて、コンスタントに売れている。
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▲「グランドC4スペースツアラー」は「グランドC4ピカソ」として2014年に国内導入された(写真:グループPSAジャパン)
「シトロエンを買い求める方は、ファッション性、デザイン性で購入される方が増えました。また、安全装備の充実やクオリティ、信頼性の向上により、誰でもあまり何も意識することなく接することのできるクルマと認識されてか、以前に比べて購入層の幅が広がったように思います」とシトロエン・ブランドマネジャー中山領氏は述べる。

極めて個性的なクルマでありながら、決して特別なものではなく、他の輸入車と同じように気兼ねなく購入して乗れるという両面をバランスよく持ち合わせたことで、より多くのクルマ好きにシトロエンという選択肢を再発見してもらえている部分もあるという。もちろん、これまでシトロエンに接してきたことがない新規ユーザーも増えている。

ユーザーを詳しく見ていくと、年齢では50歳代が最も多く、男女比率は男性のほうが高く、過半数が子供のいない世帯とのこと。データで年齢層が高めなのは、子育てが終わった世代がC3のようなコンパクトモデルにシフトしていることが考えられる。

また、アンケートで趣味を聞くと「クルマ」という人も多く、次いで国内旅行、食事と続く。クルマであちこちを旅して、現地のおいしいものを食べることを楽しんでいる人が多いイメージだ。
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ハイドロファンも納得の「PHC」サスペンション

ところで、シトロエンを頻繁に見かけるようになった要因には、実際に街を走る台数が増えたことに加えて、よりデザインが個性的になったことで、ひとたび目にすると強く印象に残るようになったことも、大きいように思える。
▲「C3エアクロスSUV」は6色のボディカラー、2色のルーフカラー、3色のカラーパックを用意する(筆者撮影)
切れ長のLEDヘッドライトを採用したフロントマスクや、エアバンプと呼ばれる大きなサイドのプロテクター、カラフルなボディカラーは、街の中で異彩を放つ。

前出の中山氏は「C4カクタスから新デザイン言語の導入から始まり、第4世代C3の世界的な大ヒットにより、ブランドネームを再興させたことがあるのでは、と考えています」と言う。
▲新デザイン言語を初採用した「C4カクタス」。日本では限定販売された(写真:グループPSAジャパン)
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また、シトロエンにとってもブランド100周年を迎えた2019年は、大きな節目になった。

グローバルでも過去の歴史や伝統(そして昔からのオーナーたち)に根ざしたコミュニケーションを強く意識してブランド展開を図った他、日本でも100周年記念ムックの発刊をはじめ、歴代シトロエンの展示やパレードラン、コンセプトカーの展示など、過去と現在、そして未来のシトロエンを訴求するイベントを毎月のように行っている。

その甲斐あって、以前は別世界という雰囲気だったオールドシトロエンファンにも、今のシトロエンを認めてもらえるようになったのも、大きな変化だという。

中でも、その一環で「PHC(プログレッシブ・ハイドローリック・クッション)」という独自の技術を採用した現行のC5エアクロスSUVの乗り味は、往年のハイドロ車オーナーからも高い評価を得ている。

ハイドロとは、オイルと窒素ガスによるハイドロニューマチックサスペンションのことで「魔法の絨毯のよう」と評されるオールドシトロエンの乗り心地の要となるメカニズムだ。

「以前はハイドロこそシトロエンで、『現行モデルはちょっと……』という方もいらっしゃいましたが、昨年以降、『今のシトロエンもありだよね』といっていただける機会が多くなりました」と、広報室PRマネジャーの森亨氏は話す。
▲掛け心地のいいシートもシトロエンの伝統(筆者撮影)
リリースにもシトロエンの歴史は「人々の“移動の自由”と“自由な移動”を支え、それをコンフォート(快適)なものにするための開発と探求の積み重ね」との旨が記されているとおり。

より柔らかい乗り心地と快適な居住空間をDNAとして追求してきたシトロエンは、いまや他の多くのブランドがアジリティ(機敏さ)やスポーティさを訴求する中にあって、ますます独創性を発揮しているように思える。
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5時間で完売した新型車「ベルランゴ」の存在

シトロエンがユニークなのは、クルマだけにとどまらない。

かねてからシトロエンオーナーやファンはイベントが好きなうえ、ディーラー店頭やイベントでも、見知らぬ同士がすぐに打ち解けて話をする風景がよく見受けられる。

さらには、プレミアムブランドではよくあるが、シトロエンは大衆ブランドながらヘリテイジを大切にするファンが非常に多いことも特徴で、その思いに応えるべく、新旧シトロエンファンがともに楽しめるようなイベントや施策を今後も随時、行っていくという。

ところで、シトロエンというと、過去には販売網やサービス網がネックであることをよく耳にしたものだが、常に改善を図っており、新規店舗や移転拡充店舗も年を追うごとに増加している。サービスを待つユーザーに向けた「シトロエンニスト・カフェ」と呼ぶスペースを用意するなど、新しい試みも始まっている。
▲またたく間に完売した「ベルランゴ デビューエディション」(写真:グループPSAジャパン)
そんなシトロエンの日本における最新モデルは、マルチパーパスワゴンの「ベルランゴ」だ。

このベルランゴの導入にあたってはオンライン予約が実際されたのだが、それなりの台数が用意されたにもかかわらず、わずか5時間で完売に。それを受けて急きょ実施された2回目の予約も、5時間半で終了となったというから驚きである。

シトロエンが絶好調に見える背景には、いろいろな「理由」があったわけだ。
当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です
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