• TOP
  • CARS
  • ラグジュアリーな社交場として個性化の時代へ 〜Vol.2〜

2016.02.09

ラグジュアリーな社交場として個性化の時代へ 〜Vol.2〜

欧州ではすでにカルチャーになっている"静"と"動"の老舗イベントも必見

1929年に第1回が行われ、実に86年の歴史をもつ自動車コンクール。催しの始まりは、戦前ミラノの富裕層らがクルマと美しいパートナーを見せつけるために集まった、言わば園遊会であった。

いまもその風習は変わらず皆さんフォーマルなドレスとブラックタイに身を包んで夜会に参加する。

欧州でもっとも古く、そしてもっとも格式の高いヒストリックカーの品評会

CONCRSO DI ELEGANZA
コンコルソ デ エレガンツァ

ミラノの北にあるコモ湖周辺は市内から電車で一時間の場所にあるイタリア有数のリゾートだ。アルプスを遠くに望む湖畔は趣深く、時間の流れをも止めてしまう。

古くは伯爵や男爵が、最近ではハリウッドスターが別邸のヴィラを構えるのも納得の場所だ。そんな湖畔で毎年行われるのが『コンコルソ・デ・エレガンツァ・ヴィラデステ』だ。

欧州の自動車品評会としてもっとも歴史が古く、言わば欧州のヒストリックカーカルチャーはここから始まったと言ってもいいかもしれない。湖に面したヴィラの芝生に並べられたそれらはまさに芸術品。

それもそのはず、市販車は圧倒的に少なく、カーデザイナーがスタディモデルとしてモーターショーなどに出品した車両が多い。つまり、デザイン優先で造られたれっきとした芸術品なのだ。
ヒストリックカーの品評会 コンコルソ・デ・エレガンツァ・ヴィラデステ
ヒストリックカーの品評会 コンコルソ・デ・エレガンツァ・ヴィラデステ
また、実際にル・マン24時間レースに代表されるコンペティションで勝利したモデルも多く顔を出す。すべての無駄を削ぎ落とし、純粋に速く走るために設計されたレーシングカーは、ある意味究極の芸術品ともいえるだろう。

そんなクルマたちを出品するのはもちろんヨーロッパを代表する富豪たちである。きっと横のつながりもあるのだろう、マーチ卿も毎年のように足を運んでいる。

なので、初日のコンクールの日は完全なクローズドで行われる。出品者と友人、主催者側スタッフとメディアのみに限られる。つまり、そこにいるのはホンモノの紳士淑女。

着ている服はもちろん、立ち居振る舞いからして優雅さが醸し出される。
null
イタリア屈指のリゾート、コモ湖畔で行われるヴィラデステ。夜は限られた人だけの宴だが、昼間は入場料さえ払えば誰でも入ることができヒストリックカーを眺められるパブリックなイベントとしても有名だ。
そんな彼らの会場までの足はヴィラの桟橋に係留されるリーヴァ。イセオ湖を含めリーヴァの地元でもあり、ここにはたくさんのアクアリーヴァが生息する。マホガニーのウッドにブルーのレザーはまさにその象徴。見ているだけでため息の出る優雅さである。

きっと来場者たちはマルペンサあたりまではプライベートジェットでやってきて、そこからフロートを持つ水上機の送迎サービスで自分のヴィラへ向かうのだろう。そしてそこからリーヴァを出し、対岸のヴィラデステに着岸。

そんなコンコルソ・デ・エレガンツァ・ヴィラデステは毎年初夏に行われる。これもまた彼らセレブリティの恒例の社交の場。賞が発表されたあとも華やかなパーティは夜更けまで続く……。

世界のクルマ好きが一堂に会する

GOOD WOOD FESTIVAL OF SPEED
グッド ウッド フェスティバル オブ スピード

世界でもっともモータースポーツ好きが集まるイベントがグッドウッド。

世界中のジャーナリストをはじめ伝説のレーシングドライバーから現役のF1ドライバーやラリードライバーから自動車メーカーのVIPまで、とにかくクルマに関係する人の数が桁違いに集まる。
世界のクルマ好きが一堂に会する GOOD WOOD FESTIVAL OF SPEED グッド ウッド フェスティバル オブ スピード
世界のクルマ好きが一堂に会する GOOD WOOD FESTIVAL OF SPEED [グッド ウッド フェスティバル オブ スピード]

世界中からカーガイが集まる“動”イベント

コンコルソ・デ・エレガンツァ・ヴィラデステを“静”とするなら、“動”にあたるのが『グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード』に違いない。別名“THE MOVING MOTOR SHOW(走らせるモーターショー)”のキャッチフレーズが付く、ヒストリックカーをメインとしたイベントだ。

毎年6月に行われるこの祭典もまたヨーロッパを中心としたセレブリティの社交場となる。主催はご存知イギリスのマーチ卿。彼の所有する広大な“庭”ですべてが行われる。

キャッチフレーズのとおり、ここではマシンが爆音とともに目の前を駆け抜ける。コースは20世紀当初流行っていたヒルクライムで、クラスごとにそこでのラップを競うというものだ。

で、そのクラスがモノ凄い。戦前からつい最近のフォーミュラまで、普段拝むことのできないものが顔を連ね、まさに走るモーターショーだ。ちなみに、今年のメインサポートはマツダだった。

日本企業はホンダ、トヨタに続くが、マツダの1991年のル・マンでのあの劇的勝利はいまも語られる……。
実はグッドウッドには、会員だけが参加・観戦ができるグッドウッドメンバーズミーティングというイベントもある。
実はグッドウッドには、会員だけが参加・観戦ができるグッドウッドメンバーズミーティングというイベントもある。
PAGE 2

日本におけるヒストリック熱は年々人気が高まっている……

観光庁お墨付きのクラシックカーラリーイベント

RALLY NIPPON
ラリーニッポン

日本に数多くあるクラシックカーラリーのなかで、唯一観光庁の支援を受けているのがラリーニッポンだ。

単に走るだけでなく「日本の世界遺産や文化遺産を巡る旅」がコンセプトになっていて、日本の素晴らしさを世界に発信する役割も担っているとか。
観光庁お墨付きのクラシックカーラリーイベント RALLY NIPPON ラリーニッポン
観光庁お墨付きのクラシックカーラリーイベント RALLY NIPPON ラリーニッポン
海外でクラシックカーイベントが繰り返されるなか、近年日本でもコマ図を使って走らせる公道ラリーが安定した人気を集めてきた。今年で7年目を迎える『ラリーニッポン』はまさにその代表格。クラシックカーを駆りながら世界遺産を中心に日本の名所・絶景スポットを巡るというものだ。

当初は、東京~京都間を走っていたが、一昨年は台湾に。そして昨年は福岡の太宰府をスタートして京都の上賀茂神社をゴールとした。神社仏閣とクラシックカーが驚くほどマッチするのは発見だった。

さて、今年は京都の東寺をスタートし、四国を一周、再び京都へ戻るというルートで実施された。ゴールは恒例の上賀茂神社。今治城、松本城の城内にまでクルマを乗り入れられる機会はそうないだろう。

城壁そびえ立つ門を次々にクラシックカーがくぐる姿は何とも絵になる光景だ。
null
 
今年は京都を出発して四国を一周。そしてまた京都に戻ってくるというルートを4日間かけて行う。今年のエントリーは73台。2016年の開催詳細はhttp://www.rallynippon.asia/まで。
もちろん、この辺は各自治体の協力あってのもの。その意味からも日本再発見ともいえる世界遺産を巡るこのクラシックカーラリーの開催意義は深い。

そんなイベントだけに、英国の高級ブランド、ダンヒルも積極的に応援している。クルマ好きで知られるアルフレッド・ダンヒルは「自動車以外のものはすべて作る」というモットーを掲げ、ブルゾンやグローブ、ゴーグルまで一通り揃うダンヒルにはぴったりのイベントだ。

今年もダンヒルチームは海外からゲストを招き、エントリーしていた。

 

道を完全に閉ざしての全開走行は必見!

ALPINE CLASSICCAR RALLY
アルペン クラシックカー ラリー

「ユル~いヒストリックカーラリーなんて……。」そんな硬派なクルマ好きが集って生まれたACCR。ヒストリックカーイベント=富裕層の社交場、という概念を取っ払ったこんなラリーもあるのだ。

ちなみに欧州ではモンテカルロクラシックカーラリーが有名。山道は完全にクローズドで行われる。
null
本気系のラリーゆえに、エントリーするクルマはポルシェやアルピーヌを中心にラリーで活躍したモデルばかり。ガードレールのない山道を日が暮れても走るので相当な技量も必要だ。

山道を全開で駆けるACCRは人気急上昇

ラリーニッポンと並ぶ公道ラリーとしてメジャーなのが『ラ・フェスタ・ミッレミリア』だろう。こちらはイタリアの伝統的ラリー、ミッレミリアとオフィシャルで提携する。

堺 正章氏を筆頭にクラシックカーを愛する著名人もかなり出場していることでも知られる。

ただ、そんな公道のラリーとは別の流れも最近は活発になっている。今年で4年目を数えるアルペンクラシックカーラリー、通称『ACCR』だ。こちらはクローズドした林道を使いタイムアタックをする。

クラシックカーをもっとガンガン走らせたいという想いで実現した。なので、中身もかなり本格的。ACCRの大会会長はなんと世界的なラリースト新井敏弘氏。

WRCの世界チャンピオンがレギュレーション作りをつとめた。よってクルマも公道ラリーとは少々異なる。3点式以上のロールバーと4点式のシートベルト、消火器の搭載、ヘルメット、レーシングスーツの着用が義務づけられる。

その意味では前述したグッドウッドのイベントに近いが、よりラリーモンテカルロ・ヒストリックなどを連想させる。クラシックミニ、ポルシェ356、アルピーヌA110、ランチア・ストラトスなど、出場するクルマは本気のラリーカーが大半だ。

といった流れの国内クラシックカー事情。このほかにも浅間モーターフェスティバルが日本版グッドウッドを目指すなど各主催者はがんばっている。そして共通するのは、どこも欧米と同じく大人のラグジュアリーな社交場であるということ。昼はレーシングスーツ、夜はブラックタイという文化も見事に日本へ輸入されているのだ。

日本でもっとも有名なヒストリックカーラリー

LA FESTA MILLE MIGLIA
ラ・フェスタ・ミッレミリア

原宿・明治神宮前をスタートし関東圏を1000マイル駆け抜けるご存知ミッレミリアも23年目に突入。今年は157台がエントリーされコースは新潟~長野~山梨~静岡~神奈川を通り明治神宮でゴール。多くのクルマ好き芸能人も参加するなど、規模は年々拡大中。

沿道の人の多さも魅力です。
日本でもっとも有名なヒストリックカーラリー LA FESTA MILLE MIGLIA [ラ・フェスタ・ミッレミリア]
日本でもっとも有名なヒストリックカーラリー LA FESTA MILLE MIGLIA [ラ・フェスタ・ミッレミリア]
文/前田陽一郎(本誌)、九島辰也
※本特集は2016年1月号で掲載した企画の抜粋です

登録無料! 最新情報や人気記事がいち早く届く! 公式ニュースレター

人気記事のランキングや、Club LEONの最新情報などお得な情報を毎週お届けします!

登録無料! 最新情報や人気記事がいち早く届く! 公式ニュースレター

人気記事のランキングや、Club LEONの最新情報などお得な情報を毎週お届けします!

この記事が気に入ったら「いいね!」しよう

Web LEONの最新ニュースをお届けします。

SPECIAL

    おすすめの記事

      SERIES:連載

      READ MORE

      買えるLEON

        ラグジュアリーな社交場として個性化の時代へ 〜Vol.2〜 | 自動車 | LEON レオン オフィシャルWebサイト