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2020.06.14

即決で購入した名車BMW R50Sに驚きの事件が!?

筆者の仕事部屋に訪れた際に大抵の人が訪ねることがあるそう。「これ何のピストンですか!?」と。それは、乗り味・走り味もまるで「ロールスロイスに乗っているかのような」BMWバイクの名車R50Sのでした。そこに隠されたあるエピソードとは?

CREDIT :

文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト) イラスト/溝呂木 陽

岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第136回

BMW R50Sとピストン事件

大学進学を機に、バイク漬けの日々を終えたことはすでに書いた。そこからクルマの日々に変わったわけだが、バイクに未練を感じたことはなかった。

そんな状況が変わったのは、40才代半ばを過ぎた頃。なんとなく、「もう一度バイクに乗りたい」との思いが湧き上がってきたのだ。

そして、買ったのが「トライアンフ・ボンネビル T120」。若い頃、もっとも憧れていたが買えなかったバイクだ。

ボンネビルは期待通りだった。若い頃、知人に乗せてもらい、ドキドキ、ワクワクしたボンネビルの感触はそのまま残っていた。

キックのコツもすぐ思いだした。「四十路も半ばを過ぎたリターンライダー」は幸せいっぱいだった。仕事はフル回転状態だったが、その合間に乗るボンネビルは、疲れを癒す最高のビタミン剤だった。

高校時代とは違い、いつも仲間と一緒ということはなかった。もちろん中高年のバイク好き仲間はいたし一緒にも走ったが、単独ツーリングも珍しくなかった。

でも、独りで走っていても、650cc /バーチカルツインの力強い中速トルクとピックアップの素晴らしさ、そして心地よい排気音に包まれているだけで楽しかった。

しかし、ボンネビルとのハッピーな時間は2年ほどで終止符を打つことになった。他に、どうしても乗りたいバイクが現れたのだ。

その名はBMW R50S。「名車」といわれるバイクだ。「名車の理由」は僕にはよくわからない。たぶん、進化を重ねてきたボクサー・エンジン搭載モデルのひとつの完成形といった意味もあるのだろうし、生産台数が1600台余と少ないのも理由のひとつかもしれない。
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僕がBMW R50Sに乗り替えたのはボンネビルに飽きたからではない。断じて、、。ボンネビルは2年経っても、乗る度に僕をハッピーにさせてくれていた。

「なら、なぜ!?」、、。それに、BMWアールズフォーク・モデルなら、だれもがR69Sに乗りたいと思うのがふつうだろう。

僕ももちろんR69Sには憧れていた。いつかは乗りたいと思っていた。

でも、生産台数も多かったし、あまり苦労しなくても手に入りそうだったので、すぐに、、と急かされる理由はなかった。

ところが、湘南ツーリングに出かけたある日、江ノ島に近いパーキングエリアで知り合った人とのお付き合いの流れで、急にBMWに接する機会が増えた。

その人はR69Sに乗っていた。憧れの、、。
一緒にツーリングに行くようなことはなかったが、たまたま家が近くだったこともあり、時々会い、話すようになった。

その人は R69Sのメインテナンスを、ディーラーではなく、クラシックBMWバイク専門のショップに任せていた。その人曰く、「最高のBMWスペシャリストがいるんです!。だから安心してお任せです!」と。

そして、ある時、「1度、ショップ見に行きませんか?」と誘われた。ショップはわれわれの住む都立大学の近くだったし、断る理由などあろうはずはない。

清潔で落ち着いた佇まいのショップは、閑静な住宅地にあった。ショップの前には1台もバイクは置かれておらず、背の高い引き戸が閉められていたら、誰もバイクショップとは気づかない、、そんな雰囲気だった。

奥行きがあり天井が高い店内の空間は心地よいもので、清潔さがそんな印象をさらに強めていた。
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ショップのオーナーに紹介されたが、オーナーは「よろしく! ごゆっくり!」と軽く会釈をしてくれただけで、すぐ整備していたR69Sの元へ戻った。

「彼に任せておけばなんの心配もありません。ありがたいことです!」。知人が全幅の信頼をおいていることはよくわかった。

在庫車はR69Sが多かったが、めったには見られないR25やR26もあった。みんなきれいで、コンディションはよさそうだった。

知人が「なにかオススメはありますか?」とオーナーに尋ねると、「ええ、来週、R50Sが入庫する予定です」との返事。

「ええっ、R50Sですか!?」と僕。BMWバイクの知識はほとんどなくても、R50Sが名車の誉れ高いことくらいは知っていた。なぜ名車なのかは知らなかったが。

「直接見ていないので明言はできませんが、コンディションはいいと聞いています」。

僕の心は、突然降って湧いたBMWの名車の名に大きく揺り動かされた。唐突に、ほしいと思い、乗りたいと思った。

僕は、4輪にしても2輪にしても、クラシックモデルは「見て愛でるもの」といったスタンスだったので、なぜ「乗りたい」と強い衝動に駆られたのかは未だわからない。

価格的にもなんとかなる額だったので、その場で買うと決めた。知人は、驚いたような、慌てたような感じだったが、ショップを出るときは、「よかったですね!」「羨ましいなぁ!」と言ってくれた。

翌週、予定通り実車を前にしたが、きれいだった。「コンディションはよさそうです。一通りの調整だけでお渡しできると思います」とショップオーナー。

納車も早かった。でも、気になることがひとつ残ったままの納車になった。それはアイドリングだ。
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BMWのフラットツインは(たしか)500~550回転くらいの低回転でストンストンといった感じでバランスよくアイドリングするのが「愛でるポイント」のひとつ。

なのだが、僕のR50Sはなぜかそれが乱れた。ショップのオーナーもいろいろやってくれたのだが上手くいかなかった。でも、一刻も早く乗りたくてしょうがない僕は待てない。
で、結局、「乗りながら様子を見て調整してゆきましょう」ということになった。

R50Sはボンネビルほど力強くもないし、速くもない。でも、全体の作りも、乗り味/走り味も上質そのものだった。「ロールスロイスに乗っているような」とでも言えばいいのか。

R69Sの方がパワフルだし速くもあるが、「いいもの感」ではR50Sが勝っていると感じた。あまり飛ばさず、クルージングの快適さを楽しんだ。だから、仲間と走るより、ひとりで淡々と走ることが多くなった。

ほんとうに「買ってよかった!」と思った。でも、「アイドリングを愛でる」ことだけが未達のまま残った。BMWを知り尽くしているショップのオーナーも、懸命に取り組んでくれたのだが、どうしても直らない。

そして、とうとうエンジンをバラスことに。
で、バラしてみた結果、、「左右のピストンが“微妙”に違う」ことがわかったのだ。

「まさか!ですね。こんなこと初めてです。驚きました。でも、いい経験になりました。有難うございました」と逆に感謝された。

驚きの事件の主役を務めたピストンは、今も僕の仕事部屋に置いてある。初めて僕の仕事部屋に来た人は、たいてい、ピストンに目を止め、何のピストンですか!?」と聞く。

で、僕は待ってましたとばかり「R50Sピストン事件」を話し始める。多くの楽しい思い出の中でも◎が付く。

● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト

1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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