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2020.03.22

初代BMW Z4は最良のライトウェイトスポーツだった

18年の月日が経った今でも、あの日の快感はハッキリ思い出せる。試乗会が終わっても興奮は冷めない。それほどまでに著者を虜にした初代Z4の魅力とは?

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文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト) イラスト/溝呂木 陽

岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第130回

大好きだった2台のBMW Z4

初代Z4に惚れ込んだ話しは以前書いた。
が、ここでもう一度、振り返らせて頂く。

時は2002年初冬。ポルトガル南端の町ファーロで行われた国際試乗会で、僕はZ4の虜になった。

北大西洋に面した断崖に添うワインディングロードとZ4のコンビネーションは、僕を「陶酔の世界」に引き込んだ。

狭めの2車線道路は、自然が描き出した断崖の原型をほとんどそのままトレースしたかのように、曲がり、うねり、アップダウンし、、延々と続いた。

ライトウェイト・スポーツカーには、これ以上ない試乗コースだった。

町もなく、ドライブインもなく、ガソリンスタンドもなかった、、と思う。

見えるのは「さあ、やれよ!」と誘っているかのようなタフな道と、広大な大西洋だけ。
ドライビングに集中する条件も揃っていた。

クリス・バングルが生み出したZ4のルックスもひと目見て好きになった。ドライバーが後輪直前に座る古典的ロードスターのシルエットを、モダンな鋭いディテールで包み込んだZ4は最高にカッコいいと思った。

ドライビングポジションも、やや小径なステアリングホイールも、必要以上にシフト操作を繰り返したくなるギアボックスのフィールも、、すべてが「やれよ!」「いけよ!」と背中を押してきた。

18年の月日が経った今でも、あの日の快感はハッキリ思い出せる。

試乗会が終わっても興奮冷めやらず、BMWジャパンのスタッフに、すぐ予約を入れた。
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初期のZ4が積むのは3ℓと2.5ℓのストレート6。僕は後者を選んだ。パワーは当然3ℓに劣るが、必要にして十分。そして、回転感はよりよい。とくに、高回転域の回転感の良さに強く惹かれたからだ。

2.5ℓの方が重量は30kgほど軽く、フロント荷重も軽いので、身のこなしがさらによかったのも理由のひとつ。    

ボディカラーはブラックを選んだ。エッジの効いたボディワークがもっとも映えて見えたからだ。ソフトトップはグレー、シートは明るいベージュ系の革、内装は黒、トリムはブラッシュドアルミをオーダーした。

タイヤはBSのスポーツ系ランフラット。当時のランフラットはまだあれこれ課題を残していた。中でも、乗り心地/騒音は厳しかった。しかし、「走り、曲がり、止まる」という点でみれば、BMWの選択は頷けた。

16、17、18インチの3サイズが用意されたが、僕は思い切って快適性を切り捨て、「走りとカッコに拘って」18インチをチョイスした。

不整路面での乗り心地とロードノイズの酷さには、めげそうになることもあった。でも、ワインディングロードをアップテンポで走るときの鋭い身のこなし、グリップレベルの高さが、他のタイヤの選択を踏みとどまらせた。

僕が、Z4に強く惹かれたいちばんの理由は、「ライトウェイト・スポーツとしての走り」だが、ルックスやコクピットの佇まいにもまた強く惹かれるものがあった。

Tシャツとベースボールキャップといったラフな出で立ちも似合うが、軽快なジャケットにボタンダウンシャツ+無地のナロータイ、といった出で立ちもZ4には似合った。

そう、、クラシックなプロポーションと、エッジの効いたモダンなボディワークのコンビネーションを、僕は、ファッションツールとしても「いいな!」と思っていた。
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すでに触れたようなカラー・コンビネーションを選んだのも、ファッションツールとしての拘りの結果だ。

そんな拘りがさらに昂じた結果、別のカラーコンビネーションのZ4に乗り換えたくなった。

で、オーダーしたのは、艶やかな濃紺(モナコブルー)のボディ、チョコレートに近いベージュのソフトトップ、黒の革シート、黒の内装、ブラッシュド・アルミのトリムというコンビネーション。

あくまでも僕個人の思いだが、ファッションツールとして、かなりレベルの高いZ4ができあがったと思っていた。

当然、タイヤは18インチをオーダーした。

2年半ほどで、同じクルマを色違いで買い換えるなんて、、「お前、少しおかしいよ!」と友人に言われたりもした。が、僕はワクワクした気分だった。

1台目は2年半、2台目は3年。合計5年半ほどZ4と過ごしたが、走りはもちろん、ファッション面でも満足度の高い日々だった。

2代目Z4は2009年のデビュー。その姿を知るまでは次期車候補のナンバー1だった。

2008年暮れに正式発表されたが、その時点で候補から落ちた。ルックスもいいし、Z4の後継に相応しい仕上がりという意見も多かった。が、僕にとっては「NO!」と言わざるを得ない決定的なポイントがあった。

それは「リトラクタブル・ハードトップ」になったこと。あくまで僕の個人的価値観だが、ライトウェイト・スポーツは「ソフトトップであるべき」と思っていたからだ。いや、今でもずっとそう思っている。

リトラクタブル・ハードトップの採用で、2代目Z4のトップを閉めた時の居住性/快適性は大きくアップグレードされた。そのことを拍手で迎える人は間違いなく多かっただろう。
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スペインで乗った印象では、ほぼすべての点で新型に軍配が上がった。内外装は一クラスも二クラスもランクアップしていた。問題の乗り心地やロードノイズも解決されていた。

走りは滑らかでしなやか。スポーツカーとしてのキビキビ感も失っていなかったし、追い込んだときの懐も深かった。冷静に点数を付ければ、初代Z4を大きく上回る高得点が付く。

でも、それでも、、僕は初代Z4が好きだった。
粗さも伴ってはいたが、カートのような身のこなしは楽しかったし、なによりコンパクトなソフトトップが好きだった。

3代目のZ4 は2018年のペブルビーチ・コンクール・デレガンスで発表されたが、再び「ソフトトップ」に戻っていた。僕の主張が通ったようで嬉しかった。

デザインテイストも初代の延長線上にある。が、、そのサイズは、残念ながら、ライトウェイト・スポーツの領域を超えていた。

時代と共に「ライトウエイト・スポーツ」の概念も変わってゆく、これは致し方ないことかもしれない。でも、僕は拘る。コンパクトで軽くて小粋で、、ドライバーの意のままに自在な身のこなしを楽しませる、、そんなライトウエイト・スポーツに僕は拘る。

そんな意味では、現在のスポーツカーで「ライトウエイト」と胸を張っていえるのは「マツダ・ロードスター」だけ。

そんな貴重なスポーツカーが日本生まれであり、日本育ちであり、世界に多くのファンを持っていることが僕は嬉しくてならない。

つい最近、しばらく会っていなかった友人が遊びに来た。なんと初代Z4に乗って。

すばらしくコンディションのいいZ4で、僕も乗せてもらったが、初代Z4の魅力を再認識することになった。ライトウェイト・スポーツカーの美味しさを改めて確信した。

もし、「最新運転支援システムの後付」が可能にでもなったら、僕は初代Z4を買うだろう。楽しかったクルマ人生、、その結びにも相応しい1台だと思うからだ。

● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト

1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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