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2020.03.01

成功の鍵はブランド力+製品力+地道な努力

「ジープ」の販売台数が10年で13倍も増えた理由

日本における輸入車ブランドではドイツ車が圧倒的に上位を占めている。そんななか、過去10年で着実に数字を伸ばしているのが「ジープ」だ。その成長率は、2009年比で言うと約13倍。健闘著しい「ジープ」伸長の秘密とは?

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文/鈴木ケンイチ(モータージャーナリスト)

記事提供/東洋経済ONLINE
「ラングラー」は「2019-2020日本カー・オブ・ザ・イヤー」でエモーショナル部門賞を受賞している(写真:FCAジャパン)
日本市場では、数多くの輸入車ブランドが発売されている。その中で、最も大きな存在感を放つのがドイツ車だ。

2019年の国内輸入車販売台数の合計は、約34万8000台(JAIA発表)。そのうちのトップは「メルセデス・ベンツ」の6万6553台、次いで「BMW」の4万6814台、そして「フォルクスワーゲン」の4万6794台、「アウディ」の2万4222台と続く。ドイツブランドが上位を独占しているのが現状だ。

しかし、目立ってはいないが、過去10年間で脅威の伸びを見せたブランドも存在する。その成長率は、2009年比で言うと約13倍。しかも、2013年から6年連続で前年を超える数字を達成している。それが「ジープ」だ。

2009年の1010台から、10年後となる2019年には1万3360台を記録している。トップのドイツ勢には及ばないが、それでも着実な成長は注目に値する。今回は、その人気の理由に迫ってみたい。
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ジープというブランドの力

まず、ジープという名前が重要だ。第2次世界大戦で活躍したアメリカの小型4輪駆動車に付けられた名前である。日本においてさえ、その名前を知らない人のほうが少数派だろう。
1955年に誕生した「CJ-5」と現行「ラングラー」(写真:FCAジャパン)
ブランドを扱うFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)の名のほうが、知名度は低いのではなかろうか。それだけジープというブランドの知名度は抜群である。

その名前を聞けば、「歴史あるブランド。オフロード走行に強い。そしてタフ」というイメージが浮かぶ。そして、イメージが世間に浸透しているほど、ブランドはユーザーのライフスタイルの演出に役立つのだ。

つまり、実用品としてだけでなく、ファッションアイテムとしてもジープは価値が高いと言える。もちろん、製品は4WDモデルが中心だ。

しかし、すべてが一様ではなく、本格オフローダーの「ラングラー」から、豪華な「グランドチェロキー」、おしゃれな欧州製「レネゲード」までの幅広い製品ラインナップが用意される。

ライトにジープのブランドを利用したい人から、より深いものを求める人までに応えてくれるのだ。これほど便利なブランドもないだろう。
フラッグシップモデルの「グランドチェロキー」(写真:FCAジャパン)
ちなみにジープは、2013年にグランドチェロキーのマイナーチェンジを実施すると、2014年に「チェロキー」、2015年にレネゲード、2017年に「コンパス」、そして2018年にラングラーと、毎年のように新型モデルを投入してきた。これもジープの好成績の理由のひとつだろう。
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最も濃厚にジープを味わえる「ラングラー」

そうしたジープのイメージを最も濃厚に味わえるモデルが、ラングラーだ。第2次世界大戦時に活躍した始祖たるジープのデザインを忠実に今に伝える本格派オフローダーである。

2018年11月からは、1987年に登場した初代(YJ型)から数えて4代目となる新型モデル(JL型)が登場したが、驚いたのはデザイン・テイストが旧型そのままであったことだ。
ジープの急成長を支える「ラングラー」(写真:FCAジャパン)
もちろん、中身はすべて新しくなっているのだが、詳しくない人であれば、新型と旧型を見分けるのさえ難しいだろう。それだけ従来のイメージを大切にしているのだ。

そして、実際に、その“古いデザインのまま”のクルマが売れている。

ラングラーは2019年に4873台を販売し、外国メーカー車モデル別新車登録台数順位で16位となった。これは、FCAが販売するクルマのトップとなる順位。

なんと2019年、販売されたジープ車の実に3台に1台がラングラーであったのだ。ジープブランド急成長の理由のひとつになっている。

ジープに対してクラシカルなイメージを抱く人は多いだろう。確かにラングラーのデザインはクラシックそのもの。しかし、メカニズムは異なる。意外にも、昨今のジープは、最先端技術を積極的に採用しているブランドなのだ。
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インスクロール式ターボチャージャーを採用する2.0リッター4気筒エンジン(写真:FCAジャパン)
2018年に発売された新型ラングラーは、新しいパワートレインを採用した。それは2.0リッターの4気筒ガソリンターボ。トランスミッションは8速AT。ダウンサイジングターボ&多段化ミッションという、技術トレンドそのものだ。

主力は従来型の改良版となる3.6リッターのV6エンジン搭載モデルだが、ラングラーが2.0リッターの4気筒エンジンを搭載してきたことは、驚くに値する。

この2.0リッターエンジン搭載モデルに試乗したところ、高速道路の巡航では10㎞/l以上の好燃費をキープ。あれほどの巨体でありながら、リッター2桁を超える燃費性能に驚かされた経験がある。

ちなみにグランドチェロキーは、2013年のマイナーチェンジで全グレードに8速ATを採用。2015年に登場したレネゲード、2017年にマイナーチェンジを実施したコンパスには、9速ATを設定している。

意外に思われるかもしれないが、多段化ATの最先端を走っていたのだ。
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販売数を伸ばすための地道な努力

さらに「ジープ」の販売好調の理由として、販売網の充実化も見逃せない。FCAジャパンは、2016年より、日本国内の販売店に新しいコーポレート・アイデンティティ(CI)を導入。店舗のデザインを統一させ、名称も「ジープ世田谷」のように「ジープ+地名」に揃えていった。
新CIを導入し1月18日(土)グランドオープンした「ジープ八王子」(写真:FCAジャパン)
さらに拠点数も拡大し、2016年には69拠点であったものを、2020年1月には80にまで拡大。2020年中には90拠点に増やし、そのうち75拠点で新CIを導入する計画であるという。

ブランドを守り、魅力的な新型を定期的に投入し、販売網を充実させる。ジープが行っていることは、いわばモノを売る基本そのものだ。それを、しっかりと続けたことが、10年間で13倍というジープの成功の理由と言えるだろう。
当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です
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