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2019.08.03

マツダ新型SUV「CX-30」、ドイツで乗ってわかった実力とは?

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文/島下 泰久(モータージャーナリスト)

記事提供/東洋経済ONLINE
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マツダが3月に世界に公開した新型コンパクトクロスオーバーSUV「CX-30」(写真:マツダ)
現在の自動車マーケットで、最も勢いのあるのがコンパクトSUV/クロスオーバーのセグメントである。日本のみならず世界的に規模が急速に拡大しているこの市場だが、興味深いのは単に拡大しているだけでなく、その内容が変容してきていることだ。実際のところ、それはコンパクトクラスに限らず、SUV/クロスオーバーとカテゴライズされるモデル全般に言える事象である。

かつてSUV/クロスオーバーは、乗用車の主流であるセダンやハッチバックに対して、スペシャルティカー的な位置づけにあったと言っていい。ユーザーは若い層が中心の、昔ならクーペを購入していたような人たち。タフなルックス、どこにでも行けそうな走破性、積載能力などが、“ちょっと違ったもの”を求める彼らに支持されたのだ。

ところが、そうした魅力が徐々に広まり、多くのユーザーが魅入られていくにつれて、乗用車の主流がセダンやハッチバックからSUV/クロスオーバーへとシフトしてくるという動きが顕在化してきた。今やSUV/クロスオーバーは年齢、性別を問わないさまざまなユーザーが、ごく普通に選ぶ存在になっていると言っていい。
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 マツダが「すべての領域の『質』を高めた」と言う新世代商品第二弾「CX-30」(写真:マツダ)

室内や荷室がせまかったCX-3

マツダは2015年に、コンパクトSUV/クロスオーバー市場にCX-3を投入した。市場では、おそらくはそのルックスから若いユーザーに、そして取り回しのよさなどもあって意外やシニア層にも支持されることとなった。

ところが前述のとおり、急速に拡大する市場はその中身を同時に変質させつつある。そんな中で露呈してきたのが、CX-3がまさにその市場の中心であるヤングファミリー層にアピールできていないという事実であった。CX-3はスタイリッシュではあるが、彼らにとってより重要な室内そして荷室がお世辞にも広いとは言えなかったのが、その原因のようである。

マツダのブランニューモデル、CX-30(シーエックス・サーティー)は、そうした背景から開発された。マツダ3に続く新世代商品第2弾と位置づけられたこのクルマは、まさしく今のコンパクトSUV/クロスオーバー市場のド真ん中を狙う。CX-3はそのまま販売が続けられるというから、両車がまったく違った層をターゲットにしているのは明白だ。

日本では今冬の発売を予定しているこのCX-30に、ひと足早くドイツにて試乗し、開発陣とディスカッションをしてきた。開発主査の佐賀尚人氏によれば、CX-30が最優先項目としたのは実用性高いユーティリティーだという。

具体的には、カップルディスタンスをCX-5並みに確保した前席、頭上や足元のスペースをゆったり取り、大人2人でも狭苦しくない後席、そして日本で主流のA型やB型だけでなく海外製の大型ベビーカーもそのまま積み込むことのできる荷室を用意した。見据えているのが、子育て世代のヤングファミリー層であることは明らかである。
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「CX-30」の後ろ姿(写真:マツダ)

日本と欧州を見据えた設計

もちろん、コンパクトとうたうからには車体がいたずらに大きくなったのでは意味がない。CX-30のボディサイズは全長がマツダ3よりも短い4395mmにとどめられ、全幅は1795mm、そして全高は1540mmとされる。ホイールベースはマツダ3より70mm短い、2655mmだ。
この全長とホイールベースは、縦列駐車が当たり前の欧州で、圧倒的に数の多い全長4500~4700mm級のいわゆるDセグメントに属するセダン、ワゴンが停めていたスペースに難無く滑り込むことのできる機動性から導かれたという。

全幅は、日本でコンパクトというカテゴリーに収まる最大限だということもあるが、決して日本だけを見たわけではなく、欧州の狭い街中ですれ違いが容易に感じられる大きさであることが意識された。全高は、日本のほとんどの立体駐車場が使えるサイズであり、また同時にやはり欧州の高速交通での燃費向上も考慮されているはずである。

こうしてパッケージング、そしてサイズはロジカルに導き出されているが、そこは最近のマツダ車らしく、外観は機能主義に走らず、むしろエモーショナルに仕立てられている。
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「CX-30」の側面(写真:マツダ)
特徴的なのは、ボディ下回りやフェンダーを覆う樹脂製のクラッディングパネル。これがSUV/クロスオーバーらしいタフな雰囲気を演出するだけでなく、塗装部分の面積を小さく見せ、ボディをクーペのように天地に薄く感じさせる効果も発揮している。

また、リアウインドウを寝かしながらもルーフ後端は下げず、後席の頭上空間を確保しているし、リアゲートを後方に張り出すかたちとして荷室も犠牲とはしていない。一見、思い切りスペシャルティ方向に振ったような艶めかしい姿ながら、実は機能性と高度に両立された、よく考えられたデザインには大いに感心させられた。
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飛び抜けたものはないが全体のレベルは高い

マツダ3に続いて人間中心の考え方を推し進めたという最新のSKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTUREの採用により、走りの仕上がりも非常に好印象だ。

ステアリング操作に対する応答が素直で、フィードバックも良好。思ったとおりのラインを自然に描くことのできるフットワークのよさは、何もワインディングロードなどに行かずとも、いつもの交差点を曲がるだけでも十分実感できるに違いない。

飛び抜けた何かがあるわけではないが、全体のレベルが非常に高く、とにかくナチュラル。気持ちのよい乗り味はマツダ3にも共通するものがあるが、CX-30はそれをより短いホイールベース、高い全高で実現しているところがポイントである。

パワートレインは欧州向けだという2Lガソリンに、ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)と小容量リチウムイオンバッテリーを組み合わせたM-HYBRIDと呼ばれるマイルドハイブリッドと、1.8Lディーゼルを試した。

前者は全体に力感が薄く、とりわけ平均速度の高いドイツでは地力も瞬発力も、やや物足りなく感じられたというのが率直なところ。日本仕様はおそらく別のユニットになる……はずである。

逆にディーゼルにとってはゴロゴロ音が目立ったりトルク変動が出たりと苦手な低回転域をあまり使わないで済む環境だったので、以前にCX-3やマツダ3などで試した時より好感触だった。いずれにしても、日本で乗ってどうかは改めて検証してみたい。
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「CX-30」の内装(写真:マツダ)

ブレない高い一貫性

それにしてもドイツの風景の中で、これほど映えるクルマとは……というのが、振り返ってとても強く残っている印象だ。とくにボディサイドの大胆なうねりが、陽光の下で深い陰影となって映し出される様にはハッとさせられた。

しかも、ここまで記してきたように、その美しいデザインの内側には確かな機能性、ユーティリティーが宿っているのだ。コンセプト、デザイン、走りと、すべてにブレない高い一貫性には清々しいものがある。パワートレインだけはもうひと頑張りと言いたいが、ヒットの可能性は十分と言える。
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国内での販売を開始した「MAZDA3 ファストバック」(写真:マツダ)
そしてこのCX-30の登場によって、マツダ3のファストバックが、デザインもパッケージングもどうしてあそこまで大胆に振り切ることができたのかも明確になった。今やマツダ3は、走りやスタイルにこだわった人の選択肢、つまりかつてのスペシャルティカー的な位置づけであり、このクラスの主流として据えられているのは、まさにCX-30なのだ。

冒頭に記したとおり、もはや立ち位置が逆転しているSUV/クロスオーバーとハッチバックの市場に、マツダは2台の新世代商品の矢継ぎ早の投入で、見事にアジャストしてきたわけである。
当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です
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