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2019.06.16

新型スープラ全グレードに乗った! それぞれの良さとは?

BMWとの共同開発で注目されるトヨタGRスープラがついに国内を走り出した。6気筒モデルのRZにフォーカスが当たりがちだが、実は気になる4気筒の2グレード(SZ-R、SZ)も試乗。その違いをリポートする。

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取材・文/小川フミオ

クルマの存在価値が急速に変化する時代のスポーツカー

スポーツカーは楽しい。日本でそういえるクルマは、ところが、かなり少ない。トヨタGRスープラは、しかし、ドイツや英国のスポーツカー経験者でも、いいねえ!と声が出ること請け合いのモデルだ。

2019年5月17日に日本発売されたGRスープラは、エンジンに応じて3モデルが同時に用意された。エンジンフロント搭載で、オートマチック変速機を介した後輪駆動というレイアウトは共通である。

トップモデルのRZは250kw(340ps)の3リッター直列6気筒搭載、中間のSZ-RとベーシックモデルのSZは2リッター4気筒だ。ただしSZ-Rは190kW(258ps)、SZは145kW(197ps)と出力が異なる。

これまで話題になってきたのは、6気筒のRZだ。え、4気筒もあったの?と思うひともいるかもしれない。トヨタに聞いたら、予約注文も圧倒的にRZが多いそうだ。でもじつは3つのモデルそれぞれ、きちんとキャラクター分けがされている。
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全長は4380ミリ、全幅1865ミリ、全高は1290(SZは1295)ミリ
サーキット走行も楽しみたくて大パワーが欲しいひとは、RZがいちばんいいだろう。500Nmの最大トルクも1600rpmから湧き上がり、圧倒的な加速性能を誇るモデルだ。

旅行などにも使いたいという向きには、SZ-Rを勧めたい。RZとともに電子制御ダンパーを用いた「アダプティブバリアブルサスペンションシステム」を持つことで、乗り心地も意外なほどいいからだ。

純粋にスポーツカーとして運転を楽しみたいなら、SZは狙い目だ。価格的にもこなれているし、145kWの最高出力といい、320Nmの最大トルクといい、3台のなかでは最も小さいとはいえ、絶対的に充分だ。

トヨタのスポーツカーといえば「86」があるが、GRスープラは純粋は2シーターなので、それよりぐっとコンパクトに仕立ててあり、そのぶん運動性能を向上させているのも特徴である。ホイールベースは100ミリも短く、かつトレッドとホイールベースの比が1.55に抑えられている。

トヨタでGRスープラを開発した多田哲哉チーフエンジニアによると「1.55は理想的」だそうだ。ポルシェ911も新型になって従来の1.6から1.54へと下げてきており、スポーツカーを語るときに重要な数字であることをおぼえておいてもいいかもしれない。
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RZでは19インチホイールに扁平率35パーセントのタイヤを履いてもモンローのダンパーの効果もあり意外に乗り心地はよく高速ツーリングも楽チンそう
どのモデルにも共通しているのは、ズバッと速く、かつコーナリングが楽しいことだ。レールに乗ったよう、というコーナリング中の挙動の表現があるが、GRスープラはまさにそれなのだ。

ブレーキでいうと、RZにだけ強力な4ポッド対向アルミニウムモノブロックのキャリパーが備わるのは、強力なエンジン性能ゆえだ。いっぽう、アルミニウムのフローティングキャリパーのSZ-RやSZにしても、効きはリニアで、もちろん性能に対して充分である。

RZとSZ-Rには電子制御された多板クラッチを使ったアクティブディファレンシャルが搭載されている。ロッキングファクター(差動装置の作動範囲)をつねに制御することで、コーナリング中の車両の動きをニュートラルにし、出来るだけ速い速度でコーナーからの脱出を可能にするという技術だ。

読者はご存知だろうが、GRスープラ誕生の背景には、トヨタとBMW包括提携がある。将来的には燃料電池や(おそらく)通信システムに関する技術提携が視野に入っているようだが、その第一弾がピュアスポーツというのがいいではないか。
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イグニッションレッドとブラックのコンビによる内容もRZとSZ-Rに用意されている
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BMWが開発を主導したトヨタ車

BMWでは新型Z4の名前で登場した姉妹車に、私は2018年秋に試乗しているが、そのときニュートラルなハンドリングと、爆発するようなパワー感と、それでいて意外なほど快適な乗り心地に感心した記憶がある。

すぐ思ったのは、Z4でこれだけいい出来なのだから、GRスープラとして発売される新型にもかなりいいのでは、ということだった。その期待はまったく裏切られなかった。加えて、BMWではまだ未体験だった4気筒エンジンの出来のよさを知ったのは、想定外の喜びである。

基本的な開発はBMWが担当した。具体的なプロジェクトスタートは2014年だったそうで、両社の希望するスペックスを盛り込んだプロトタイプが作られ、そこから本格的なシャシー開発へと進んだ。

買収したオーリンズの制御システムを組み込んだモンロー製の電子制御ダンパーを組み込んだサスペンションシステムを含めて、BMW主導で開発が進んでいった。ただしトヨタはニュートルステアにこだわってスタビライザー径に注文を出したりしたそうだ。
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スポーティなシェイプのシートは座面がややソフトでホールド性は高い
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「走りへのこだわりが企業のDNAになっているBMWと仕事をしたのはいろいろ勉強になりました」。プロジェクトマネージャーの福本啓介氏が語ってくれたように、両社のクルマづくりへの姿勢はまったく違っていたものの、理想的なスポーツカーづくりについてトヨタの技術者は虚心坦懐にBMWとつきあったようだ。

インフォテイメントシステムはBMW車に準じている。「トヨタスープラコネクト」と名づけられおり、ドライバーサポートデスクが使えるしスマート端末との接続性もあるが、トヨタ独自の「T-CONNECT」とは少し違うようだ。アップルカープレイにも対応している。

最新のBMW車を知っているひとは、GRスープラのインフォテイメントシステムのアーキテクチャーが一世代前のものと気づいているかもしれない。じつはしようがない理由があるんです、とさきの福本氏は教えてくれた。
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ワイドトレッドによる回頭性のよさが追究されている
「BMWが最新のアーキテクチャーを手がけていたのと、GRスープラの開発は時期的に並行していました。もし最新のアーキテクチャーがうまく動かなかった場合、BMWなら従来のものを使えばすみますが、GRスープラでは面倒なことになります。そこで大事をとる意味で今回の仕様としました」

それでもBMWのシステムを使ったため、言葉の”書き換え”はたいへんだったそうだ。BMWと、それに準じる独自の用語をスープラに置き換えていく作業は、日独英と3カ国語に対応しなくてはならず、エクセルにして1万行に及んだという。

オーディオでは、RZとSZ-Rに備わるJBLプレミアムサウンドシステムがいい出来だ。BMW Z4はハーマン/カードン製で、設置場所などは同じだが、音場のセッティングはすこし異なるようだ。

私がハイレゾ音源を入れたUSBで聴いたかぎり、繊細な再生力に特徴があり、やはりこの2車はグランツーリスモとしても使えるように開発されたのだなあという思いを強くした。SZを買ったときも、これだけは欲しい。

価格はSZが490万円、SZ-Rが590万円、RZが690万円となっている。
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● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト

慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。

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