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2019.02.10

アウディの新型EV車e-tronに試乗。その仕上がりにクルマの未来を見た!?

技術による先進を掲げ、4輪駆動や、ダウンサイジングなど技術で時代を先取りしてきたアウディ。そんなアウディが発表したEV、e-tron(イートロン)に試乗。未来のクルマ社会のあり方を想起させる、その試乗会をリポートする。

CREDIT :

文/小川フミオ

国際試乗会で見た、近未来の電気自動と都市のあり方とは?

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バランスのとれたスタイルが特徴的だ
電気自動車がラグジュリーになってきた。これまで環境適合車とか代替燃料車と呼ばれるクルマは、ラグジュリーカーとは別のベクトルに存在してきた。

そこにあって、2018年12月にアウディが国際試乗会を開いた「e-tron(イートロン)」は新しいマーケットを開拓する可能性を充分に秘めたモデルである。

e-tronはピュアな電気自動車(EV)として開発された。4.9メートルの全長に、1.6メートルを超える全高という、余裕あるサイズの車体に、2基の電気モーターと高性能バッテリーを搭載し、「e-quattro(イークワトロ)」と呼ばれる四輪駆動システムを組み合わせている。

試乗会が開かれたのは中東はアブダビ空港そばの「マスダールシティ」だ。ここもおぼえておいていただきたい。排出ガスゼロや再生エネルギーを利用して、持続性のある社会の可能性を探る目的で作られた人工都市で、アラブ首長国連邦が出資している。

私がそこに出かけた際、オフィス街の外側に目をやると”砂漠なのに巨大な湖?”と思わせる光景が見えた。目をこらすと、広大な太陽光発電パネルの連なりであった。アウディによると、EV使用者にとっても急速充電システムが充実しているメリットもあるそうだ。

アウディはこれまで都市とモビリティの関係に注目してきたブランドだ。私はかつて「アーバンシティイニシアティブ」というアウディのプロジェクトを取材したことがある。そのときの目的は人口が集中して過密化する世界の主要都市の渋滞をいかに緩和するかのアイディアコンテストだった。

今回は渋滞とは関係ないが、e-tronの試乗にとどまらず、都市まるごと巻き込んでサステナブルなありかたを探るという点において、アウディらしいというか、他に類のあまりないイニシアティブ(発案)になっていると感じられた。
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最高速は電気的に時速200キロで抑えられている
e-tronは、「2025年までに販売されるアウディ車の3分1(80万台)をEVにする」と発表しているアウディにとって、重要な将来への布石である。私の参加した試乗会の直後に早くも「e-tron GT」なるスポーティなモデルが発表されている。

e-tronじたい、スポーティとまではいかないかもしれないが、予想以上にパワフルなクルマである。なにしろ前後2基の電気モーター合わせて最大出力は265キロワット(ブースト時は300キロワット)におよび、最大トルクはアウディA8 60とほぼ同じ664Nmなのだ。

発進加速は”ものすごい”とつけ加えておきたいほどパワフルだ。600Nmを超えるトルクがほぼ一瞬で発生するからだ。「e-quattro(イークワトロ)」と名づけられたEV用の4輪駆動システムがトルクを効率的に伝達し、のけぞるような加速性というのはない。が、大排気量のガソリン車以上といえる出足のよさは体験する価値がある。
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質感の高い内装はラグジュアリアスといえる
加速はどこまでもというかんじで続き、気がつくと、速度は予想以上に上がっている。静粛性がとても高いのと乗り心地が抜群によいのも、私のスピード感覚を狂わせる原因だったはずだ。アブダビでは市街地での制限速度が(一部区間だが)時速140キロと高いので、速度違反にならずに済んだのでホッとした。

アウディの発表によるとフル充電での航続距離は400キロだという。そこまで上手にバッテリーを節電できなくても、下り坂などで回生ブレーキ(強さはステアリングホイール背後のレバーで調整できる)をうまく使えば、航続距離を伸ばしていくことが出来る。

試乗会では山岳路も含まれていて、上りでほとんどバッテリーを使い切ったように思っていたが、下りでかなり復活したのは嬉しい驚きだった。オーナーは工夫しながら節電や充電を楽しむといいかもしれない。
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エコからラグジュアリーへと進化したアウディのEV

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後席空間は広々としている
冒頭でラグジュリー性に触れたように、e-tronの魅力は作りのよさにある。ハッチバックとSUVの中間的なクロスオーバービークルのスタイリングコンセプトはあまりトンガっていないが、ディテールにいたるまで、入念な作りはみごとだ。

インテリアも同様である。厚いクッションのシートにはじまり、ダッシュボードの質感、それに各種コントローラーの材質感や使い勝手など、あらゆる部分に気配りが感じられる。

後席も広々としている。乗員は無理を強いられるところを感じなかった。後席重視の使い勝手だって出来る。新しい世代のラグジュアリーサルーンといえるかもしれない。

日本でもA7スポーツバックやA8で採用されているTFT液晶モニターによる「バーチャルコクピット」と、2基のインフォテイメント用液晶モニターがダッシュボード中央に搭載されていた。
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バーチャルエクステリアミラーが試乗車には採用されていた
計器の一部はEV専用のものとなるが、基本的な使い勝手はガソリン車と同じだ。画面上のアイコンを強めに押すと、ビビンッとバイブレーションが返ってくる。

e-tronの注目点のひとつがバーチャルエクステリアミラー(オプション)だ。ミラーの代わりにカメラを使っており、メリットとして死角が少なくなることと、空力の改善があげられている。画像は通常ならオーディオ用のスピーカーがはまっているであろうドアの内張り部分のモニターに映し出される。かなり鮮明である。

これからのラグジュアリーの定義は、どれだけそのブランドに共感性があるか、になっていくような気もする。マスダールシティでのe-tronのプレゼンテーションは、アウディの深謀遠慮のたまものだと思ったのだった。
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● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト

慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。

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