2026.05.10
あの“コルティナ”もあるイタリア・ドロミテの絶景ホテルに泊まって、天国散歩のようなハイキングを体験
2026年冬季オリンピックの会場となったコルティナが属するドロミテ。そこは、冬はウィンタースポーツ、夏はハイキングの聖地となる山岳地帯だ。そんな大自然のど真ん中に位置し、絶景を望むのが「コモ アルピナ ドロミテ」。今回は、そのホテルに泊まってハイキングを堪能するバカンスをご紹介!
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- 文/大石智子(ライター)
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写真/大石智子 編集/森本 泉(Web LEON)
冬季オリンピックのあと、夏のドロミテにも注目!

▲ 滑走エリアが約120kmにも及ぶコルティナ。オリンピックではアルペンスキーやボブスレーが行われた。
2026年2月に開催されたミラノ・コルティナオリンピック。盛り上がったものの、「コルティナってどこ?」と思った人も多いはず。コルティナ(コルティナ・ダンペッツォ)は、ミラノからクルマで約5時間のイタリア北東部にある街。ユネスコ世界自然遺産のドロミテ山塊の麓に位置する、世界屈指のスキーリゾートだ。そんな街が属するドロミテは、夏はハイキングの聖地となり、冬とは全く異なる表情をもつ。
▲ 現世と思えない美しさ。6月中旬に訪問。
あまりに景色が美しい時、人は「天国のような場所」と表す。誰も実際の天国は知らないから不思議な例えだけれど、ある意味、最大の賛辞。そんな話がありながら、筆者が旅した中で最も「天国!」と感じたのが、夏のドロミテだった。青空の下に山脈が広がり、可愛い花が一面に咲き、絵本や映画で描写される天国がそこにあった。
ドロミテ行きを決めたのは、「コモ アルピナ ドロミテ(COMO Alpina Dolomites)」の開業がきっかけ。2023年冬に誕生したそのホテルの写真は、一度は行ってみたいと思わせるものだった。いま思えば、天国のなかでも一等地に立っていたのだ。

▲ ホテルも後ろの山も個性的な形!
オランダ滞在中だった筆者は、まずはヴェローナ空港に降り立ち、そこから鉄道に1時間半乗ってボルツァーノに向かった(ミラノからは約3時間)。鉄道が動き出して30分、意外や、早くも車窓から絶景を目にすることに。北上するほど山岳地帯に入り、秒単位で山や村の景色が変わっていく。鉄道の姿をした絶景アトラクションのようで、旅の序章からいきなり盛り上がる。
▲ トレントの手前あたり。
気づけば、そこはチロル地方。そう、日本人なら誰もが知るチロルチョコの由来となる地だ。ちなみに「チロルチョコ」という名前は、チョコレート作りのために渡欧し、チロル地方の風景に感銘を受けた当時の代表が、「チロル地方のように爽やかなイメージをもったお菓子にしたい」との想いから命名したとか(チロルチョコ株式会社HPより)。

▲ 鉄道に乗り続けるとオーストリアを縦断し、ミュンヘンに着く。
ドロミテは見どころとなる山が点在するので、自走がベスト。しかし、筆者はやむなくタクシー移動することに。高額だと心配したけれど、最初の運転手さんの姿を見たらお金のことは忘れた。女性でおそらく50代。デニムに白シャツをインして、黒いサングラスとゴールドのジュエリーを身につけ、ネイルもきっちり綺麗だ。なんと絶妙なイタリア加減。そんな方の運転に贅沢を感じながら、「コモ アルピナ ドロミテ」へ向かった。
なお、ドロミテの玄関口であるボルツァーノ(Bolzano)はボーツェン(Bozen)と併記されることも多く、前者はイタリア語、後者はドイツ語。というのも、北イタリアの南チロルは1363年から1919年までオーストリア領だったので、現在もドイツ語話者が多い。白シャツインの運転手さんも、両方話すと言っていた。
天国一等地のホテルへチェックイン

▲ 2010年にファミリー経営のホテルとして開業し、2023年から「コモ ホテルズ アンド リゾーツ」が運営を引き継いだ。
ボルツァーノからクルマで50分、ホテルに近づくほど、山の壮大さは増していった。ホテルは手前にレストラン、奥にメイン棟が立つ。特にレストランが放射状のユニークな形状で、でも石と木材で建てられているため周囲に馴染むというか、周囲の山も規格外の形なので、いい共演なのかもしれない。

▲ 山を望むため横に長い「ロビー ラウンジ アンド バー」。
メイン棟に入ると、薄いブルーを基調とする空間。壁、ソファ、ライトetc.随所にさまざまな青が使い分けられ、グラデーションが素敵だ。合わせて多用されるグレーとのバランスもいい塩梅。個性的なデザインで魅せるというより、色のセンスでまとめ、ゲストを落ち着かせる。廊下のライトは山岳地帯らしくカウベル型だ。

▲ どうしたらこの山を登れるのか?
全59室がマウンテンビューでバルコニー付き。客室に入ると、窓の外には岩肌を剥き出しにした山塊がそびえ立つ。山の終わりはダブルのとんがり山。「何があってそんなにそり立った?」と山に聞きたくなるほど鋭利だ。左のとんがりは、“悪魔の山”と呼ばれているとか。標高は2414m。絶対に人は登れないと思いきや、1880年にヨハン・ザントナーという登山家が初登頂し、この山はザントナー・シュピッツェ(Santner Spize)と名付けられた。
Santner Spizeで検索すると、絶壁を登る“命知らずな男たち”みたいな写真が複数出てくる。悪魔への登頂に唖然としながら、こちらはただバルコニーから山を眺め、ビールを飲む。
「そこに山があるから」
飲酒でも昼寝でも何でも、この台詞をくっつけたくなるような眺めが、いつも部屋の前に広がっている。

▲ 「マウンテンルーム」(50㎡)
しかし、青空の絶景は続かない。晴れていてうれしいと思った10分後、一面霧になることも。そんな山の天気を直に感じとれるのも、この立地ならでは。山を愛でる部屋のようで、ころころ変わる空を愛でる部屋でもあるのだ。いつも山が綺麗に見えているのも、つまらないかもしれない。思い通りにいかないことを受け入れる心を、山岳地帯が教えてくれる。
▲ 一度は暗い霧に包まれるのもよい。
絶景レストランで山の恵みをいただく

▲ 「ロビー ラウンジ アンド バー」のテラス席。
レストランやバーは計4つあり、うち3軒を体験。どのホテルにもラウンジはあるけれど、個人的にここの「ロビーラウンジ アンド バー」は世界トップクラスにお気に入り。席数が多くテラスも広く、デイベッドでは山に抱かれる心地になる。広いのでスタッフも少し距離をとった場所にいて、「好きな所で好きなだけ寛いで」の空気感だ。午後には自由に食べていいサンドイッチやケーキが並べられ、夜にはピアノやギターの生演奏があり、手厚い。
「トラットリア デラルペ」は、ヴェネチアとヴェローナの郷土料理から着想を得たメニューを揃え、北イタリアのワインも充実。ブッラータは南イタリアが本場とされるが、ミルクの質が高い南チロル産も美味しい。そんなブッラータを添えたレモンバターとアンチョビのパスタに合わせられたのは、南チロルの名門「カンティーナ・テルラーノ」のゲヴュルツトラミネール。冷涼な山岳地帯で育った白ブドウが、シンプルなパスタを華やかにする。ほのかに感じるスパイスも、レモンバターにこれまた合う。
代わって「サッソルンゴ」は、北イタリアの郷土料理に地中海料理を織り交ぜたレストラン。ディナーは前菜がビュッフェで、チーズが15種並ぶことに注目だ。りんごと胡桃入りのカマンベールや熟成したブルーチーズまでさまざま。山のチーズに山のワインを合わせる時間が至福である。朝食ビュッフェでは、朝からスパークリングワインのフリーフローもあり。
ハイキングで心が洗われていく
「コモ アルピナ ドロミテ」に泊まる大きなメリットは、ハイキングの中心地を拠点にできること。ホテルにはロードバイクもあるけれど、ゆったりと、自分の脚で自由に歩くのがはまる場所だ。時短とは無縁の世界。可愛い花が咲いていたら立ち止まり、乗馬の一行に抜かれたらその背中を見送る。人間なのに光合成している気分。とにもかくにも空気が美味しく、風がいい香りがする。
ドロミテでの4泊中、以下の4カ所に出かけた。所要時間は、2泊した「コモ アルピナ ドロミテ」を拠点とした場合の時間(往復は景勝地での滞在時間込み)。
【1】ブラッチャ周遊(Bullaccia)徒歩往復3時間
【2】フォルチェッラ・デンティ・ディ・テッラロッサ方面(Forcella denti di terrarossa)ガイド同行徒歩5時間
【3】セチェダ(Seceda)徒歩とケーブルカーで往復6時間
【4】サンタ・マッダレーナ(Santa Maddalena)クルマと徒歩で片道1時間半
【1】ブラッチャ周遊

▲ いかつい身体に可愛い耳。
ホテルから最も近いのがブラッチャ周遊で、開始10分で牧歌的な景色に出会うことができる。後ろの岩山とそっくりの背中をもつ牛が草をはみ、タンポポが辺り一面に咲き誇る。1時間ほど歩けば360度が開けた景勝地に出るので、ショートコースとしておすすめだ。
▲ ホテル発、ガイド付きのグループハイキングもブラッチャ周遊となる。
【2】フォルチェッラ・デンティ・ディ・テッラロッサ方面

▲ 山の写真家でもあるガイドのミヒャエルさん。
一度は山岳ガイドに案内してもらうハイキングもお試しあれ。筆者はホテルお墨付きのガイドさんと共に5時間のトレッキングに出発。ドロミテを知り尽くすガイドさんだから、沢に沿って歩いたり、山小屋レストランでランチをしたり、自力では叶わない楽しみ方が多々ある。
「花は知性をもっています。例えばビー・オーキッド(蜂蘭)は、メスバチそっくりな花を咲かせて雄を引き寄せ、花粉を運ばせます」
何でもネットで調べられる時代に、地元民の声で聞く解説が贅沢。植物の逞しさを言葉で知ると、ハイキングの景色が一層鮮やかになってくる。
【3】セチェダ

▲ 旅のハイライトとなったセチェダ。
次に自力で向かったのはセチェダ。標高2519mのドロミテを代表する景勝地だ。写真だけ見るとハードな登山に感じるが、ケーブルカーを乗り継いで行けるので特別な装備は不要。ホテルを出発した後、まずはハイキングで1本目(計3本)のケーブルカー乗り場(Telecabina Ortisei)まで向かった。1時間半かかるが、道中も絶景なので徒歩がおすすめ。「天国!」と一番感じたのも、このケーブルカー乗り場までの風景だった。山々をメインディッシュ、お花畑をサイドディッシュとしたら、どちらも絶品で相性も抜群。自然の芸術の素晴らしさに圧倒される。

▲ 花が咲く6月は、景色がよすぎてなかなか進めない。
辿り着いたセチェダは、名峰が勢揃いしたような場所だった。ナイフのごとく鋭い峰から、地球の行きどまりみたいな岩壁まで、個性が炸裂する山々が集結。まるで別の惑星に来たようだ。2億5千万年もの時間がドロミテの景色を作り、セチェダはその象徴となる場所。
ドロミテは遥か昔は浅い海だったが、数千年前にアフリカ大陸と欧州大陸が衝突し、海底だった岩が押し上げられて山になった。それから数百万年もの間、氷河と雨風が岩を削り、侵食でギザギザの岩山に。言うなれば、天が作った彫刻だ。
2億5千万年のスケールに圧倒されるなか、雪の隙間から咲く小さな花を目にした。繊細な美しさにも出会い、さらに満たされる。ドロミテへ行くなら、セチェダは必須と言ってもいい。
【4】サンタ・マッダレーナ

▲ この景色に憧れて向かったが、山の上に雲がかかる日も多い。
最後に行ったのはサンタ・マッダレーナ。そこは、フネス谷に位置する“ドロミテで最も絵になる村”と言われる場所。ホテルから麓まで1時間かけて行き、展望ポイントまでは徒歩20分ほど。ホテルをチェックアウト後、帰りがけに寄るのもいい。筆者は麓のザンクト・マダレーナに1泊したが、あいにくの天気でクリアには眺められず。
ハイキング後は、ボディマッサージで身体をほぐす

▲ ハイキングの後は、彼女にスパのプレゼントを。
「コモ ホテルズ アンド リゾーツ」といえば、「コモ シャンバラ」の名で1997年から展開するウェルネスの評価が高く、ドロミテも例外ではない。山岳地らしいマッサージを各種用意し、ハイキング後に最適だ。例えば、南チロルに古くから伝わる干し草を使った回復法を応用した“干し草風呂”を組み込んだものや、山羊のミルクを使ったトリートメントなど。干し草はハーブのような心地よい香りを放つので、リラックス効果も高いのだとか。
また、毎日のアクティビティプログラムも豊富。朝7時に始まるマインドフルハイキングからピラティスまで、日毎に5〜6種を提供している(基本はグループクラス)。

▲ サウナとプールとの往復でやんわりととのう。
ドロミテに連泊すること自体がウェルネス

▲ 「空気が美味しい」とは、まさにここのこと。
ドロミテに4泊したものの、一週間ほど滞在したかった。見たい山がいくらでもあるエリア。ここで一週間ハイキングを繰り返したら、減量にもデトックスにもなり、生まれ変わりそうだ。なにせ、気がいい。世界中からハイキング好きが集まる地域だから、健やかなムードが彼らからも放出されている。誰もが歩くことを気持ちいいと思い、人も犬も馬も幸せそう。
▲ コンシェルジュのおふたり。
「コモ アルピナ ドロミテ」のスタッフたちも、本当に穏やかだった。みなさん、癒されるほどに目が綺麗。山奥のアットホームな温泉旅館の雰囲気とも似ている。“美しい場所にはいい人たちがいる”と、このホテルで改めて思った。綺麗な景色のなかで過ごし、心に余裕があり、人に優しいスタッフばかり。「前のホテルだった時から13年いますが飽きません。四季ごとにまったく違う表情を見せてくれます」と話すスタッフもいて、地元愛を節々で感じた。
そんなドロミテでの滞在は、「仕事に疲れたから一度リセットしたい」という人に特におすすめ。ここの空気と景色はパワースポット。筆者も帰国からしばらく経つものの、ドロミテでもらったいい影響がまだ続いている気がする。
「COMO Alpina Dolomites」

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