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2026.09.19

のんインタビュー。「プライベートな時間をおろそかにしちゃいけないと、ここ1年くらいで気がつきました」

音楽やアート、映画監督など、ボーダレスな活動を続ける俳優・アーティストののんさん。話題の映画『平行と垂直』では、自閉スペクトラム症(ASD)の兄を支える妹の希を繊細に演じています。丁寧な役作りや仕事へのこだわり、そして彼女が大切にしている「時間」と「モノ」についても話を伺いました。

CREDIT :

写真/土屋崇治(TUCCI) スタイリング/町野泉美 ヘアメイク/菅野史絵 文/飯田帆乃香 編集/鎌倉ひよこ、森本泉(Web LEON)

のん 平行と垂直 LEON あまちゃん

音楽やアート、映画監督など、ボーダレスな活動を続ける俳優・アーティストののんさん。公開から10日で興行収入1億円を突破するなど、大きな反響を呼んでいる映画『平行と垂直』では、自閉スペクトラム症(ASD)の兄を支える妹の希を繊細に演じています。


圧倒的な表現力をもつ彼女ですが、仕事から一歩離れれば、ふらりと本屋や美術館に立ち寄り、家ではベッドでゴロゴロするのが至福のひとときだと言います。本作へのご自身なりの解釈をはじめ、パーソナルなお話もたっぷり伺いました。

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自分が演じることに納得でき、意義のある作品に出会えてとてもうれしいです

── のんさんは俳優だけではなく、歌手としてステージに立つほか、アート作品を制作したりと、多彩な創作活動を行っています。その中で「これだけは絶対に譲れない」という信念はありますか?


のん こだわりは結構多いタイプなのですが、しいて挙げるなら、見る人が納得できるか、そしてそこに驚きがあるか。このふたつは、どの活動においても一貫して大切にしています。


── 数多くの作品でのんさんのご活躍を見ることができます。オファーが来た際、出演を決める基準はありますか?


のん 自分がやる意味と、シンプルに面白さを感じられるかどうかが基準になっています。さきほど言った、この役を演じることに納得感があるか、そこに驚きが加われば、なお良い。そんなふうに思いながら出演を決めています。


『平行と垂直』の希役については、私が演じることで観る人のイメージを大きく裏切らないかも、ひとつの指針になりました。

のん 平行と垂直 LEON あまちゃん
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── のんさんが演じた希は兄を大切にしたいという気持ちと、結婚を控えた自分の人生を犠牲にしたくないという気持ちの間で葛藤しています。その胸中についてのんさんの考えを教えてください。


のん 希にとって兄の大貴は、当たり前のように一緒に暮らしてきた家族です。これまでにも、大貴がひとり暮らしを始める時や職場でのこと、警察沙汰になったことなど、いろんな経験をふたりでしてきました。他人から見たら当たり前じゃないことばかり起きている。だからこそ、周りの人が兄をどう思うのかについて、慎重になっていると感じました。


同時に、大貴の感情にも意識を向けました。自分が結婚すれば今までの生活は変わり、大貴はその変化をはたして受け入れられるのか……。だから“いざとなれば、自分が何かを諦めなきゃいけない。それでも、自分の人生を諦めずに進みたい”……希はそんな気持ちを抱えているという解釈です。

── 役を構築する際、希と同じように自閉スペクトラム症のご家族を持つ心理カウンセラーの方、3名にお話を伺う機会もあったそうですね。


のん はい。もちろん個人差があるので、同じ質問をしても皆さんそれぞれの答えを返してくださいました。例えば、大貴のようにひとり暮らしをして職場に出ることをどう思うかという質問には、「自立してくれたらうれしい」という方もいれば、「ちょっと心配かもしれない」という方もいて、そういうお話から、「希だったらどうだろう」と考えながら役に活かしていきました。


その時のお話の中で特に印象に残っているのが、「相手は“きっとこう思っているはず”と想像しながらコミュニケーションを取っている」という方法です。ASDの方の表情や言葉からは心情を汲み取ることが難しいので、こちらが気持ちを推測しながら一緒に過ごしているということでした。


私たちは人と接する時に相手の気持ちを想像しますけど、感情を想像するための材料がほとんどない家族もいる。そのことに気づけたのは、希を理解するうえで大きなヒントになりました。

のん 平行と垂直 LEON あまちゃん
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── 表情や言葉といった手がかりがなく、それでも相手の心に寄り添い続けるというお話は深く考える視点になりますね。大貴役の安田章大さんとは、兄と妹の対面のシーンについて演技の相談などはしましたか?


のん 役柄や物語について細かく話し合ってはいません。実際に演技をしながら、少しずつ積み上げていった感じです。段取りをやって、違和感があれば「こうしようか」と相談するくらいでした。


── 撮影の合間は何かお話をされましたか?


のん 安田さんが「何かあったら言ってね」と毎シーン声をかけてくれたのは、とても安心感につながりました。私だけじゃなく、現場にいる全員に声をかけて、自然にコミュニケーションをとりながら、みんなの士気を高めてくださる方でした。

── のんさんが抱いた『平行と垂直』という作品の印象を教えてください。


のん 喧嘩をしたり、さまざまな問題に直面したりしながら、それを乗り越えていく兄妹の日常がすごく愛おしく、心が温まる物語だと思いました。


私自身、これまでASDについて調べたり、その特性にまつわる作品を観たりすることはありましたが、家族の視点についてはあまり考えてこなかったんです。だから妹の立場も描かれていることが新鮮で、「こういう課題もあるんだ」とハッとさせられました。


一生懸命に生きていくふたりの姿を、多くの人に観ていただきたいと思える。そんな意義のある作品に出会えてとてもうれしいです。

のん 平行と垂直 LEON あまちゃん
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自分のダメなところを受け止めて、いろんな面を楽しめる人に憧れます

── のんさんのパーソナルな部分もお聞きしたいです。忙しい中で、心がふっと満たされる場所や時間はありますか?


のん 静かな場所が好きです。美術館に行く時なんかも、なるべく人が少ない時間を狙ってゆったりとした空気感を味わいます。館内で見かけて「この人、普段から静かそうだな」と思う人の後ろを、さり気なく同じルートでついて回ることもあって……(笑)。そういう方の選ぶ道って、すごく穏やかなんですよね。


── ご自宅では、お気に入りの定位置などはありますか?


のん ベッドの上です。ベッドでゴロゴロしている時間が落ち着きます。


── オンとオフのバランスはどう保っていますか?


のん 以前は仕事が人生そのものと言えるくらい大好きで、不器用だからプライベートはなくてもいいとすら思っていたんです。でも最近、オフの時間の大切さに気がついて、いろいろ充実できるように心がけています。

── プライベートを豊かにするために、具体的にどんな過ごし方をされていますか?


のん 普通のことだけど、本屋さんに立ち寄って直感でジャケ買いをしてみたり、美術館でお気に入りの作品を眺めたり、家で漫画を読んだり……。そうやって、純粋に自分の好きなものに浸る時間を意識的にとっています。


── 最近、特に面白かった作品はありますか?


のん 人から薦められて読み始めた『あかね噺』という漫画にハマっています! ひとりの女の子が(噺家の)真打を目指して奮闘する物語なのですが、落語の成り立ちや演目の背景、古典と改作の向き合い方まで深く描かれています。もともと落語が好きだったので「なるほど、こういうことだったんだ」と、漫画を読みながら解像度が上がる感覚が面白いです。

のん 平行と垂直 LEON あまちゃん
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── 落語もお好きなんですね。先ほど「プライベートの大切さに気づいた」とおっしゃっていましたが、それには何かきっかけがあったのでしょうか?


のん ある大きな仕事をひとつやり遂げた時に、ふと思ったんです。もし仕事がなくなったら、自分は何のために生きているのかわからなくなってしまうんじゃないか、って。ちゃんと自分のために生きていることを実感するためにも、プライベートな時間をおろそかにしちゃいけないと気がつきました。そう思えたのがここ1年くらいの話で。今まで無頓着すぎました(苦笑)。


── 今後は、仕事とプライベートの心地よいバランスを探りながら進んでいけそうですか?


のん そうですね。仕事が大好きな気持ちはずっと変わらないので、うまく両立させていきたいと思っています。

── 私生活が充実している大人はカッコいい印象です。のんさんは「カッコいい大人」と聞くとどんな人が思い浮かびますか?


のん やりたいことや、やるべきことが明確で、そこに誇りを持っている人です。自分自身をよく知っているからこそ、他者との違いも認められている気がします。


だから、強みを活かしながら適材適所で力を発揮しつつ、弱い部分もちゃんと受け止めて、愛せている。そんな大人に憧れます。

のん 平行と垂直 LEON あまちゃん

── 具体的に、憧れている人物はいらっしゃいますか?


のん 矢野顕子さんは、確固たる自信を持ちながら、ご自身のいろんな側面を軽やかに面白がって生きている感じがして……。その佇まいがとてもカッコいいです。

── のんさんも、ご自身の「好き」やこだわりをしっかり持っている印象ですが、昔から愛用している「好きな物」はありますか?


のん ゲルインクのボールペンです。普段からボールペンをよく使うのですが、特に太めの1.00mmが好き。紙にインクがじわっと滲んでいくのが、書いていて気持ちいいんです。


だから、文字を書くのも絵を描くのも1.00mmのゲルインク。高校生の頃に「あ、この書き心地が好きだな」と発見して以来、ずっと同じペンを愛用しています。

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のん 平行と垂直 LEON あまちゃん

●のん

1993年7月13日生まれ、兵庫県出身。俳優・アーティスト。音楽、映画製作、アートなど幅広いジャンルで活動。劇場アニメ『この世界の片隅に』で第38回ヨコハマ映画祭審査員特別賞、主演映画『さかなのこ』で第46回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。22年公開の主演映画『Ribbon』は自ら脚本・監督を務める。近年の主な出演作品にドラマ「幸せカナコの殺し屋生活」「MISSKING/ミス・キング」「こちら予備自衛英雄補?!」「Tokyo middle 30」、映画『アフター・ザ・クエイク』『てっぺんの向こうにあなたがいる』などがある。ドラマ「おいしいのつくりかた」が26年10月よりAmazon Prime Videoにて配信予定。音楽活動は、10月18日から全国ツアー『のん自由(10)ツアー2026』を開催予定。これまでの創作活動が評価され、24年に第16回伊丹十三賞の受賞を果たす。

のん 平行と垂直 LEON あまちゃん

『平行と垂直』

自閉スペクトラム症(ASD)の兄・大貴と、幼い頃から兄を支えてきた妹の希。大人になった大貴は周囲のサポートを受けながらひとり暮らしをし、清掃の仕事に就いていた。独自のルールを大切にし、毎週決まった時間に妹と食事をすることが日課だ。一方、カウンセラーとして働く希は恋人からプロポーズを受け、大貴とともに婚約者の両親が暮らす東京へ向かう。妹の結婚という転機をきっかけに、兄妹はこれまで築いてきた関係と、それぞれの未来を考えることになる。

出演/安田章大、のん 他 配給/東映ビデオ

HP/https://www.toei-video.co.jp/heikoutosuichoku


©2026「平行と垂直」製作委員会


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