2026.09.05
パンツェッタ・ジローラモが語る、初主演映画と「人生を最高に面白がる」大人の流儀とは?
我らがジローさんがなんと映画に初主演! 『TAVERNA DE GAGAー人生はまだまだ面白いー』は、人生の後半を迎えた男たちの再生と希望を描いた物語。映画の撮影秘話から現場での甘酸っぱい(?)思い出、さらに彼が実践する大人のライフスタイル論まで、ギュッと話を伺いました。
BY :
- 文/木村千鶴
- CREDIT :
写真/渡辺修身 編集/森本 泉(Web LEON)

『LEON』の顔として創刊以来ともに走り続けてきたジローことパンツェッタ・ジローラモさん。60代を迎えてもなお、圧倒的なチャーミングさとチャレンジ精神が衰えることがありません。
そのジローさんがなんと映画に初主演! 『TAVERNA DE GAGAー人生はまだまだ面白いー』(浜野安宏監督)は、人生の後半を迎えた男たちの再生と希望を描いた物語。ほとんどがイタリアロケで、出てくる俳優もほぼイタリア人という珍しい日本映画です。
主人公のジーロ(パンツェッタ・ジローラモ)は、日本で活躍するイタリア人建築プロデューサー。かつて夢だったリゾート計画を実現するため、故郷である南イタリア・トロペアに戻ります。地中海の豊かな漁場がそのまま残っていると信じて進めた計画でしたが、現実は厳しいものでした。さらに長年確執を抱えてきた父が余命わずかであることを知り、共に新たなチャレンジをすることを決意します。
タイトルの「GAGA」はイタリア語でダンディを意味する言葉。年齢を重ねることを悲観的に捉えず、いくつになっても人生は輝けるという力強いメッセージが込められたこの作品。まさにジローさんの生き様ともリンクするような、大人のための、心がじんわりと温かくなる物語です。
我らがジローさんに、映画の撮影秘話からイタリアでの甘酸っぱい(?)思い出、さらに彼が実践する大人のライフスタイル論まで、ギュッと話を伺いました。

『TAVERNA DE GAGA〜人生はまだまだ面白い』より
偶然の重なりに導かれた主演映画と、思い出の街トロペア
── ジローさん、まずは映画初主演おめでとうございます! 浜野安宏監督の映画に出演することになったきっかけから教えてください。
パンツェッタ・ジローラモさん(以下、ジローラモ) ありがとう! 浜野監督とは共通の友達を通じて知り合ったんです。その友人が経営する青山のショップで出会って話をするうちに、監督が僕のことを「気が合うな〜」と言ってくれて。でもまさか本当に僕を主役に映画を撮るとは思っていなかったんだけど(笑)。
監督は建築プロデューサーであり、日本のカルチャーシーンや街づくりを牽引してきた重鎮のひとり。僕もナポリ建築大学で歴史的建造物の修復を学んでいた経験があるので、感性や背景に何か惹かれ合うものがあったのかもしれませんね。
── ジローさんの人物像や背景を、ストーリーに反映しているんですね。
ジローラモ そう、僕のバックグラウンドを上手にストーリーに取り入れてくれました。最初のシーンは兵庫県の淡路島。僕は淡路島でお米を作っているんだけど、監督とも淡路島で一緒になったことがあって、運命的な重なりを感じましたね。
── 撮影の舞台となった南イタリアのトロペアも美しい場所でした。
ジローラモ そうでしょう。歴史的な建造物も多くて街並みが美しいのでイタリアでは有名な観光地です。海外からもたくさんお客さんが来るし、実は僕にとっては子供の頃、夏休みの度に家族で過ごした思い出の場所でもあるんですよ。
今回トロペアが撮影の舞台になったのは本当に偶然なんですが、やっぱりここにも運命的なものを感じました。例えば淡路島って玉ねぎが有名ですよね。映画の中にも出てきますが、実際にトロペアも玉ねぎ(赤玉ねぎ)が有名ですから、ここにもつながりがあるなって(笑)。現地コーディネーターのアドバイスもあったとは思うけど、僕にとっては特別な撮影になりました。
── 台本は日本語からイタリア語に翻訳されたものだったとか。セリフのやり取りで苦労はありましたか。
ジローラモ ちょっと大変でしたね(笑)。渡された台本が日本語を直訳したようなイタリア語だったから、僕らが普段使わない言葉が使われていて。だから最初のうちは、ひたすら言葉を自然な会話に直す作業でした。でも現地のイタリア人の役者さんたちがアイデアをくれて、どんどん良い方向へ導いてくれたんです。
── 出演されているのはイタリアでも有名な俳優さんたちだとか。
ジローラモ そうです。映画やテレビにもよく出てるし、みんなすごいベテラン。だから演技が上手いし、僕も色んなことを教えてもらいました。

本当のお父さんといるみたいで、涙が出そうだったよ
── 映画を拝見して、ジローさんの演技はとても自然で惹き込まれました。これまでの演技経験とはまた違いますか?
ジローラモ これまでもドラマや映画にちょこちょこ出演させてもらったことはあったけど、ワンシーンだけって逆に上手にできないというか。今回みたいにストーリー全体を通して演じるのは初めてだったけど、結果として自信が持てた気がします。
長編だとストーリーを理解して役に入り込めるし、イタリア語だからもっと人物を近く感じました。また周りのプロの役者さんたち、余裕のあるベテランたちと一緒に演技をすると、彼らのエネルギーに引き込まれて上手くなるんだと思います。
── 日本からはジローさんのほかにベリッシモさんも参加しています。一説によるとお互いにライバル意識があってこれまでは共演を避けてきたとか(笑)。
ジローラモ はい、彼とは凄く仲が悪くて口もきいたことないです。というのは嘘で(笑)、テレビだと求められる役回りが同じなのか、一緒にキャスティングされることがほぼなかったですね。でも僕は全然気にしてないよ(笑)。今回も普通に共演してるし、彼は僕以上に演技の経験がないから最初の頃、ちょっと演技が硬くなりがちだったんです。だから彼と絡むシーンでは、僕は彼の身体に触れながら演技をするようにしてました。ボディタッチを増やすと緊張がほぐれて、自然な空気になるからネ。
── さすがジローさん。周りのキャスト陣とのチームワークが大きく影響したんですね。
ジローラモ 本当に感謝しています。浜野監督は細かい指示を出すタイプではなく、役者同士のフィーリングを大事にする人でしたので、現場のみんなで練習しながら作り上げていきました。父親役の俳優さんは、僕が父を若い頃に亡くしていることもあって、一緒に撮影していると本当のお父さんといるみたいに感じて……涙が出そうだったよ。
レストランの店主の役の人は映画や舞台の監督もしている人で、みんなに親身にアドバイスをしてくれてね。先日イタリアに行った時も、その方の芝居を観に行ったくらい、今でも友人関係が続いています。
── 映像がとても美しかったですね。この映画をイタリアの方が観たら、どんな印象を受けるでしょう。
ジローラモ 会話や映像はイタリアだけど、撮り方は日本的です。ゆったりと時間が流れるでしょう。イタリアの映画ってもっと展開が早くアップテンポなんですよ(笑)。でも日本の美しいカメラワークとイタリアの風景が融合した映像美は素晴らしい。イタリア人と日本人がタッグを組んでこういう映画を作ったのって、今までにないことだから面白いし、僕自身もとても良い経験になりました。

── 主演という重圧は感じませんでしたか。
ジローラモ 実はあまり重くは感じなかったかな。もちろん責任もあるし、覚えないといけないこともたくさんあったけど。でも不思議な感じで、台本を読んでいるうちに、自分の中に自然と役が入ってくる感覚があったんです。カメラの前に立つ前に練習して、本番でそれを一気にぶつける。そうすると体の中からパワーが湧いてくる。それが面白かったんですよね。
── 自分の中にもうひとりの“ジーロさん”がいたんですね。
ジローラモ そうそう。昔、イタリアで女優さんと付き合ってたことがあってね。彼女が出演した映画で、劇中、別の男の人とキスしてたのを観て僕はショックを受けたんだ。僕とのキスの時と同じ表情、喧嘩してる時の演技もそう。これって浮気でしょうって(笑)。でも自分が演技するようになるとわかるんです。彼女は僕とのキスを思い出して演技していたのかなって。時を超えて彼女の気持ちが理解できたのも面白い体験でした(笑)。
撮影の合間も楽しかったですよ。ベスパを借りて、あちこち走って出掛けて。まるで学生時代の夏休み気分! 近くに知り合いの大学の時の先生が住んでいるので訪ねて行って小さなパーティーを開いたり、休憩の間に女の子とご飯も食べたり。
── 『ローマの休日』みたいじゃないですか!
ジローラモ まさにそれ(笑)。ベスパにふたり乗りして、現地にある日本人の板前さんがやってる鮨ショップにも行ったし。映画の出演も面白かったけど、個人的にも楽しい思い出ができて本当によかった。
年齢を重ねることは、新しい何かが始まるきっかけでもある
── これからはもっと俳優業も?
ジローラモ いやそれはわからない。これまでは僕のキャラクターが強すぎて、俳優の仕事でも「いつものジローラモ」として出てたから。でも今回の経験、特に最後、日本で僕が自分の企画を大勢の人の前でプレゼンするシーンでは、演じることに自信を持ってやれました。あれ、実は僕のスケジュールの都合で、追加で撮ることが決まったシーンなんですけど、後から足したからこそ、経験を活かして堂々と演じられたと思っています。
── トロペアの現地の映画祭で賞を受賞して、市長さんも喜んでいたとか。
ジローラモ 小さい街の映画祭だけど、少しは街の宣伝に貢献できたかな(笑)。映画を見てイタリアに行きたくなる人が増えるといいんだけど。

── まさに作品を通じて描かれる「セカンドライフ」やシニア世代の悩みはLEON世代にとってもリアルに感じる人がいるのではと思いました。
ジローラモ ストーリーはイタリアの現代の問題です。イタリアのリタイアした男たちは、やることもなくて昼間からお酒飲んでばかりとかね。日本でも同じようなことはあるかもしれませんが、日本のシニアはもうちょっとアクティブに感じます。
僕が言いたいのは、歳を取っても終わりじゃないってこと。特別な大冒険はしなくてもいい、歳を重ねることそのままを楽しんでいるうちに、何か新しいことが生まれるかもしれないじゃないですか。仕事だって前と違う関わり方をしたっていい。年齢を重ねることは何かを諦めることじゃなく、新しい楽しさが始まるきっかけかもしれないでしょう?
── ジローさん自身、モデルやタレント業だけでなく、最近では福島県の会津、兵庫県の淡路島、石川県の羽咋市で「ジロー米」として米作りの活動をされていますよね。
ジローラモ まあ失敗も多いけどね(笑)。僕がやっている米作りは、地方の街を盛り上げる“メーカー”の役割になろうと思ってやっているんです。会津若松でやっている活動がうまくいったら、それをモデルケースに他の地域にも広げていきたいと思って。
── その発想はどのようにして生まれたんですか。
ジローラモ 『LEON』の撮影やテレビのロケであちこちに行きますよね、すると元気な小さい村もある反面、ゴーストの街みたいになってしまっているところも。でもそんな場所にも若者はいます。誰かがきっかけを作れば、現地の人たちがグループを作って動き出せるんですよ。例えばお米だったら酒蔵と組んで日本酒が造れる。それがうまくいけば海外輸出もできるから。そういうアイデアを出したり、モチベーションを上げたりすることって、やればやるほど面白いなと思うんです。
── 面白がることが、ジローさんの原動力なんですね。
ジローラモ そう! 「面白い」と「美味しい」が大事。日本にはそうした食の文化や伝統文化が沢山あるから、その価値をもっと大事にした方がいいですよ。

── 確かに日本のカルチャーは、今、世界から注目されていると感じます。
ジローラモ 先日、ファッションのイベントに参加した時、首相が「日本の真珠は世界中で褒められているけど、日本人は冠婚葬祭にしか使わないからもったいない」というようなことを言っていました。身近にあるものの良さに気づけなくなる時ってありますよね。
真珠のネックレスは女性のものというイメージがあるかもしれませんが、僕のコレ(自身の胸に光る真珠のネックレス)、僕のおじいちゃんが使ってたものなんですよ。100年前は日本人の男の人も使っていたそうですよ。田崎真珠の田崎さんも男性が使ってもいいと言っていましたし。ダンディな男性がチラッと見える感じに使えば、男の色っぽさが出るんじゃないかなあ。
── ポテンシャルはあるのに生かしきれていないというところでしょうか。
ジローラモ はい。最近は外国人の方が日本の価値に気づいていると感じることも多いんです。例えば海外の時計のコレクターの間で、今、SEIKOのヴィンテージの価値がすごく上がっていて、外国人がこぞって買っています。
もちろん海外の有名時計もいいんだけど、日本のメーカーのビンテージを巻いた方がストーリーがあるから逆にイケてると思うんですよ。ちょっと時代が変わってきているんですね。
今Z世代のお洒落な人たちは、ストーリーのあるものをクールに思っています。アルマーニのようなハイブランドが過去のレプリカを復刻するのも、そういう若い世代の感性に響くからです。
僕ら大人は、その時代をリアルタイムで経験して、それらのアイテムを元々持っていた世代。だからこそ若い世代とヴィンテージやカルチャーを通じた価値観の相性は案外いいと思いますよ。だから臆せずに関わりが持てるといいなって思います。

● パンツェッタ・ジローラモ
1962年9月6日生まれ、ナポリ出身。建築一家の三男として、ナポリ建築大学在学中に亡き父の後を継ぐ。主に政府からの依頼を受け、歴史的建造物の修復にたずさわる。1988年から日本在住。以降、雑誌、番組などで祖国イタリアについて多数紹介。2006年、本国より騎士の称号「カバリエレ~イタリア連帯の星勲章」を贈られる。LEONでは創刊号から表紙及び中面でモデルを務め、2014年3月、【連続して最も多くファッション誌の表紙を飾った数(男性モデル)】という記録名でギネスワールドレコーズ2014に世界記録として認定。 (現在も更新中)。モデル、文化人として活躍する一方、ドラマ「推しが上司になりまして フルスロットル」(25/テレビ 東京)、「ムショラン三ツ星」(26/NHK)、映画「土竜の唄 FINAL」(21)など俳優としても活動。本作が自身にとって初の映画主演作となる。

『TAVERNA DE GAGAー人生はまだまだ面白いー』
都市地域開発プロデューサーなど幅広い分野で活躍、『質素革命』『浜野安宏ファッション化社会』『人があつまる』など80冊以上の著作を誇る 浜野安宏が企画・プロデュース・監督を務めるオリジナル作品。物語は、日本で活躍するイタリア人建築プロデューサーのジーロが、故郷・南イタリアのトロペアへ戻るところから始まる。環境調査を兼ねた壮大なリゾート計画を進めるなか、長年確執を抱えてきた父ロッコが余命わずかであることを知る。かつて海を生きた男たちが集う大衆食堂「TAVERNA DE GAGA」を拠点に、父と息子、そして人生の終盤を迎えた仲間たちは、再び海へ挑む最後のプロジェクトへと乗り出していく。 主演はパンツェッタ・ジローラモ。共演はベリッシモ・フランチェスコ、イタリアで活躍する日本人女優・市川純のほか、マッシモ・ボネッティ、パオロ・サッサネッリ、サヴェリオ・ヴァローネら、イタリア映画界で活躍する実力派俳優たちが集結。
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