圧巻のクリエイティビティに驚嘆

▲ コシノ三姉妹の長女、コシノヒロコさん。旧自邸のギャラリー「KHギャラリー芦屋」にて。
コシノ三姉妹。おそらくLEON読者世代において、その名を知らない人はいないでしょう。ユーモラスな掛け合いでお茶の間を楽しませる彼女たちですが、それぞれが日本の現代ファッションの礎を築いたとも言える伝説的デザイナー。とりわけ長女のコシノヒロコさんは、学生時代からその才能が注目され、以降、日本のファッションを半世紀以上にわたって牽引してきました。

▲ 「(UN)KNOWN HIROKO KOSHINO ―新説/真説 コシノヒロコ―」の展覧会ポスター。
そんな彼女が5月26日(火)~7月26日(日)の期間、東京都現代美術館にて、「(UN)KNOWN HIROKO KOSHINO -新説/真説 コシノヒロコ-」を開催します。
「全部しっかり見ていたら、閉館時間を過ぎちゃうわよ(笑)」と本人が語るとおり、本展は彼女が手がけるイベントとしては過去最大規模で、見応え十分。60年以上にわたる創作を各時代の社会状況や芸術表現と重ね、さまざまな視座からその本質的な価値を紹介します。

▲ 展開会場のイメージ。すべての服は触れることも可能。

▲ コレクションに呼応するよう、その時代の絵画作品も展示。※写真はイメージです
会場には約200点ものヒロココシノコレクションと、約130点の絵画作品、そして約70点のデッサン画、計400点を展示。ファッション作品には触れることも可能で、その質感やエネルギーを直に体験してほしいとの思いが込められます。
また、次世代への美意識の継承にも積極的な彼女が監修する『ネクスト・クリエイション・プログラムこどもファッションプロジェクト』のエリアも。将来、日本のファッションの担い手となるかもしれない子どもたちが制作した作品も見所のひとつです。

▲ 安藤忠雄氏の初期作品であり、かつての自邸「KHギャラリー芦屋」。現在は常設でコシノヒロコの作品を展示します。
さて、会期を前に意気込むコシノヒロコさんが、その想いを語ったのは、兵庫県・芦屋の予約制ギャラリー「KHギャラリー芦屋」。ここは彼女のかつての私邸であり、かの安藤忠雄氏が活動初期に設計を手がけた名建築です。ともに大阪生まれで4歳差のふたりは、お互いのクリエイティブを高め合う存在で、かねてより遊び仲間だったそう。

▲ コシノヒロコさんの創作の原点である日本文化の伝統と美意識を体現した代表作「WORK#1078《幸せの青い鳥》(2013)」。
「あの人、当時は“住みやすさ”ということを知らなかったのよ。コンクリートの美しさを最大限表現したいから、物を置くなって。寒いし使いにくかったけど、数十年住んでから美術館にしたわ(笑)」と、無邪気な笑顔で我々を迎え入れてくれた彼女は、御年89歳とは思えないほどにエネルギッシュ。その姿は我らがジローラモとも重なり、人生を楽しんでいる人に年齢は関係ない、ただの数字であることを思い知らされたのであります。

▲ 安藤忠雄建築の特徴のひとつである地中埋設型の一室。左は2025 秋冬コレクションのテーマにもなった作品で、3色しか用いらない手法で描かれる「WORK#2550 他 《3COLORS》」。

▲ コシノさんのすべての創作の原点とも言えるパステル。現在でもアトリエには無数のそれが用意されています。
同ギャラリーではコシノさんが手がけた作品を見ることができますが、その作品と空間との調和がキモ。
「無機質なコンクリートに、絵画や服で色付けするのが楽しくって。自宅だった頃から絵画を飾っていたけれど、日本でそのような文化を取り入れる家はまだまだ少ない。空間のなかに取り込むことで、豊かで楽しい生活になるから、ぜひ多くの人に関心を持っていただきたいわ。
幼い頃は戦争で物資が不足していたんだけれど、絵を描くことが好きだった私のために、母はパステルを手に入れてきてくれて。それが表現力を育んだことは間違いない。私の原点と言えるわね。スタッフたちにシーズンテーマを伝える時も、絵を用いることが多いのよ」

▲ 自宅兼アトリエには、これまでの、そしてこれからの作品がズラリと並びます。
これまでに3000点近い絵画作品も手がけてきたコシノさんにとって、その制作はトレーニングの場。あれこれ考えることはせず、感覚的に思いのまま描くため、30分以内で完成させる作品もあるそう。そしてファッションデザイナーならではの表現方法として、絵画にテキスタイル(生地)を用いる手法も特徴的です。
「私はファッションの人間だから、ほかの人には考えつかないような絵画を生み出したいと思っていて。たとえば服を作るにあたっておもしろいテキスタイルができたら、それを絵の具と組み合わせて使っちゃうの。和紙もよく使うわ。いろいろなものをミックスすることは、服も絵画も、アートの文脈においてはすごく楽しいこと。固定観念を取っ払うことを恐れないようにね」

▲ 展覧会のイメージは、平面ではなく立体化してよりリアルに想像することで解像度を上げていくそう。その作業も自ら行います。

▲ 作業場を埋め尽くす模型から、今回の展覧会にかける意気込みが伝わってきます。
さて、今回の展覧会で気になるのはその題名「(UN)KNOWN HIROKO KOSHINO -新説/真説 コシノヒロコ-」。そこに込められた意味を伺うと、「私を知らない人にも届けたい想いがある」と。
「私はファッションや絵画、音楽や歌舞伎などいろいろな視座から美意識を養ったの。それは人生を楽しむのにとても役立ったから、多くの人に伝えたい。日本のクリエイションを後世にお伝えすることが、今回の展覧会の一番の目的。それは日本の文化のために絶対に必要なことでしょ? 今の日本より、もっといい日本に。これからの人生は、そんな使命をもって生きていきたいわ。まだまだ元気に働くわよ〜!」

▲ 見せてくれたのは、日々のコーディネートを描いたカレンダーアプリ。「プロとして同じ格好はしたくないから」とのこと。
そして最後に、「私の作品をすべてお見せするには、どんな美術館でも小さすぎるわね。そんなこと言ったら怒られちゃうかしら(笑)」と茶目っ気たっぷりに、語ってくれたのであります。
■ (UN)KNOWN HIROKO KOSHINO ー新説/真説コシノヒロコー
開催期間/2026年5月26日(火)~7月26日(日)
場所/東京都現代美術館 企画展示室 地下2階
住所/東京都江東区三好4-1-1
時間/10:00~18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
休館日/月曜日 ※7月20日(祝)は開館、7月21日(火)
料金/一般 2200円、大学生・専門学校生・65歳以上 1500円、高校生・中学生 800円、小学生以下無料
チケット販売/オンライン販売 5月22日(金)10:00~、窓口販売 5月26日(火)~
● コシノヒロコ
1937年、大阪・岸和田生まれ。“コシノ三姉妹”の長女として知られる、日本を代表するファッションデザイナー。文化服装学院在学中に頭角を表し、1964年には大阪・心斎橋にオートクチュール・アトリエを開設。1978年には日本人として初めてローマのアルタ・モーダに参加し、その後パリ、上海など世界各地でコレクションを発表する。「HIROKO KOSHINO」をはじめとする複数のブランドのデザインを手がけるほか、近年はアーティストとしての活動にも注力し、国内外での個展を多数開催するなど、今もなお活躍の場を広げる。
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