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2026.03.02

渡辺 謙インタビュー。「出演する作品の選び方は、今も昔も一貫して“面白いか、面白くないか”」

話題のミステリー時代劇映画『木挽町のあだ討ち』に出演した渡辺 謙さんにインタビュー。多忙を極める中でも楽しんで臨んだという作品のことや、自身が一貫して大事にしている思い、渡辺さん流“人生の歩み方”などについて伺いました。

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文/浜野雪江 写真/トヨダリョウ スタイリング/JB ヘアメイク/倉田正樹(enfleurage) 編集/森本 泉(Web LEON)

渡辺謙 木挽町のあだ討ち WebLEON

世界的名監督の作品に数多く出演し、日本国内においても圧倒的な存在感で敬われる俳優・渡辺謙さんが、主演の柄本佑さんとともに重要な役どころを演じるミステリー時代劇映画『木挽町のあだ討ち』(源孝志監督・脚本)が公開中です。


江戸の芝居小屋・森田座を舞台に、凄惨な仇討ち事件の真相をドラマティックに描く本作で渡辺さんが演じるのは、森田座の職人たちを束ねる立作者の篠田金治役。多忙を極める中でも楽しんで臨んだという作品のことや、自身が一貫して大事にしている思い、渡辺さん流“人生の歩み方”などについて伺いました。

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自分の中では、海外に進出した感じはない

── 昨年から今年にかけては、大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の田沼意次役に始まり、映画『国宝』など合わせて5本の作品にご出演(声の出演を含む)。本作の会見でも「(ここ数年は)人生最大に一所懸命仕事をした」と話していましたが、その充実ぶりをご自身はどのように感じていますか?


渡辺 謙さん(以下、渡辺) とりあえず、「あ、いいなぁそれ。面白そうだな」と思って受けていたら、いつの間にそうなってしまって、割と僕的には汲々忙々だったんですけどね(笑)。これまでは、ひとつの作品を終えたら最低でも2週間から1カ月あけて、1回仕切り直して次の作品に入るのがほとんどでしたが、ここ数年は1週間ぐらいで次の作品に入ることもあって。もちろん、準備はその前からしていますけど。


『木挽町のあだ討ち』も、大河の狭間で撮ったりして、充実はしていましたけど、気分的には火の車(笑)という感じでした。

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── 普段は、フラットな状態に戻るためにも、ご自分の時間を大切にされているそうですが、多忙を極める中で、どのように気持ちを切り替えていかれたのでしょう。


渡辺 偶然ですが、役柄やシチュエーションが両極みたいな感じの作品が並行していたので、一方で受けるストレスを他方で発散していたようなところはあります。特に大河の田沼役は、後半に向かうほど抑圧されていく感じが重くのしかかり、風景も主に江戸城であまり変わらなかったので、狭間で『木挽町のあだ討ち』の篠田を演る時は、リラックスとは違うのですが、(両腕を上に伸ばす仕草で)ぐ~っと全身、伸びができたみたいに、非常にカジュアルに役に入れた感じがしました。おかげで、うまいことバランスが取れた。まぁ運がよかったのでしょう。


── 渡辺さんは44歳の時に『ラストサムライ』(03)で初めて海外の映画に出演して以降、国内外を行き来し、国際的知名度の高い俳優となられました。海外への進出は、渡辺さんにとってどのような意味があったのでしょう。


渡辺 自分の中では、進出した感じはないんです。というのも、出演する作品の選び方は、今も昔も一貫して“面白いか、面白くないか”の判断で。海外の作品だから面白いわけではなく、面白いから海外に呼ばれていって、面白いからまた日本でも仕事をするというスタンスなので。


『ラスト サムライ』は、ロスでの撮影もありましたけど、ニュージーランドや日本での撮影が多かったので、僕の中での「ハリウッド」というカテゴリーではなく、「少し距離があるところに行った」ぐらいの感覚なんです。もちろん、ワールドワイドで配給もするし、その辺の影響は格段に大きいのですが、そこに向かってやっているわけでもなく。監督や共演者、自分の役に向かう心持ちは、海外での仕事も、日本での仕事もあまり変わりません。

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『国宝』は、興収200億円の映画を作りたくて作っていたわけじゃない

── 日本とは勝手が異なる海外作品の現場を体験して、当時どのような気づきがありましたか?


渡辺 一番、「あ、こういうことだったのか」と思ったのは、アメリカ人やイギリス人、南米の人など、国はもとより育ってきた環境も、考え方や習慣も違う人たちが一堂に会して作品を作っていると、まず、同じ脚本を読んでいても、解釈や表現の仕方が明らかに違ったり、ズレみたいなものがあるんです。でも、それって面白いなということで。


で、そのズレみたいなものは、例えば日本に帰ってきた時に、今までは「これってこうだよね」という共通認識があった気がしていたけれど、実はそうでもなくて、みんな考えていることや思ってることは違ったんだなと。それをすり合わせるのか、すり合わせなくてもある意味衝突して面白がれるのかというのは、僕らの「作業」なんだということに改めて気がついたんです。

── 受け止め方の違いは観客にも言えることかと思いますが、昨年は映画『国宝』が社会現象と言えるほど大ヒットし、海外でも高い評価を得ています。国内外で多くの経験を積まれた渡辺さんだからこそ感じる、世界のマーケットで勝負できる日本映画の可能性についても、感じるところがあれば教えていただけますか。


渡辺 それは時代劇であれ現代劇であれ、結局は、面白いか面白くないかだと思うんです。コロナ以降、配信がワールドワイドで増えて、字幕で作品を見ることのハードルは明らかに下がったと思いますが、だからといって面白くないものはウケないですから。時代劇だからウケるわけではなく、そこに面白いお話があり、素敵なキャストがいなければ届かない。


僕が関わった海外の映画でも、一所懸命やったし、面白いと思ってやったけれど、ちょっと編集が及ばなかったり、時代に合わなかったりして、そこまでいかなかったよねという作品はたくさんあるんです。それは海を渡ろうが渡るまいが一緒だから、面白い。

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── 『国宝』の場合はどうだったのでしょう?


渡辺  『国宝』は、(興行収入)200億円の映画を作りたくて作っていたわけじゃないんです。僕らはみんなで力を合わせていいものを作ろうと思って全力を注ぎ、いい作品ができて、制作も含めて全員が、「まぁ3時間の映画だしね。いいとこ30、40(億円)いったら御の字だよね」という心境だったんです。それがここまで多くの方に届いたのは、ある種の時流だったり、人の心に触れる何かが、その映画にあったということで。


そこから先はもう僕らの手の内じゃなく、作品が勝手に一人歩きしたところがあって、それを、「どうだ!」というふうに思ってしまったらおしまいかなと。実際、たまたま運が良かったのだと思います。同じスタンスでものを作り、なおかつそれがどう届いていくかは、運が大きく関係すると思うんです。

── 運の作用については、『ラスト サムライ』に出られた時、成功の秘密を「運がよかった」とおっしゃっていましたが、運を引き込むために、常々どんな姿勢で仕事に臨めばよいとお考えですか。


渡辺 それは、宝くじを当てるみたいなものなので、努力したから当たるものでもないと思うんです(笑) 。運は努力じゃ掴めない。僕の仕事で言えば、ジェネレーションや時代も関わってくる中で、たまたまそこにボン!と運がぶち当たるみたいなものかと。ただ、チャンスを与えられた時に、それに十分応えられるだけのスキルやマインドを持ち続けられるかというのは、個々が最低限できることかなと思います。

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時代劇のアナログさは、人が生きているビートにとっても近い気がする

── 時代劇というジャンルは、演じる俳優としてはお好きですか?


渡辺 昔、東映の時代劇スペシャル(渡辺さん主演の「町奉行日記」)で、斬新な撮影で知られる工藤栄一監督と一緒に仕事をした時、自分も含めて大人数でチャンバラをしていて、パッ!と変わった次の瞬間、僕だけ屋根の上に上がってみんなを見下ろし、笑い飛ばしてるというシーンがあったんです。思わず「すっごいカットですね! これ」と言ったら、工藤さんが「飛躍なんだよ、時代劇は」とおっしゃったんです。

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時代劇はまず、そういうものが許される。そして、現代みたいなデジタル社会ではないので、距離感がある時にコネクトする手段は文(ふみ)しかなく、情報を得たり相手の気持ちを知るには、直接話すか、人づてに聞くしかない。情報が飛んでいかず、すべてアナログなんです。でもそれって、人が生きているビートに僕はとっても近い気がするんです。


さらに言えば、愛情や憎しみや、人間のいろんな機微みたいなものがより深く描けるし、伝わるような気がして、僕はそれが時代劇の醍醐味なんじゃないかなと思います。

── 『木挽町のあだ討ち』、『国宝』ともに、映像の美しさも圧倒的でした。


渡辺 やはり、単純にライティングやアングルといった技術的なレベルを含むある種の総合力がすごく上がっているんだと思います。そして時代劇は、そういうセッティングがやりやすい。例えば(仇討ちを成す若侍役の)長尾(謙杜)くんが最初に着た朱色の打掛にしても、あんなのなかなか見れないですよね。でもそれを大胆に色味として使い、「雪と和傘と竹」みたいな構図で見せる浮世絵のような色遣いも、時代劇は表現できる。その辺の美意識みたいなものが、この映画に限らずあると思います。


※後編(こちら)に続きます。

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渡辺謙 木挽町のあだ討ち WebLEON
渡辺謙 木挽町のあだ討ち WebLEON

● 渡辺 謙(わたなべ・けん)

1959年生まれ、新潟県出身。87年、NHK大河ドラマ「独眼竜政宗」に主演し、一躍全国的な人気を獲得。急性骨髄性白血病を克服後、2003年公開の映画『ラスト サムライ』でハリウッドに進出し、米アカデミー賞助演男優賞にノミネート。以降、国内外で映画、ドラマ、ミュージカルなど数々の作品に出演。代表作に映画 『硫黄島からの手紙』『SAYURI』『インセプション』『明日の記憶』『怒り』『国宝』『盤上の向日葵』ほか。舞台『王様と私』のシャム王役ではトニー賞にノミネート。

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『木挽町のあだ討ち』

原作は直木賞と山本周五郎賞をダブル受賞した永井紗耶子による同名小説。時は江戸時代、文化七年(1810年)。ある雪の降る夜、木挽町の芝居小屋「森田座」のすぐ近くで、美しい若侍・菊之助が父の仇討ちを見事に成し遂げ、現場に居合わせた目撃者たちにより事件は美談として語られる。 1年半後、菊之助の縁者だという元藩士・加瀬総一郎が、仇討ちの顛末を知りたいと森田座を訪れる。菊之助に関わりのあった人々の証言から、やがて仇討ちの裏に隠された「秘密」が浮かび上がる。

監督・脚本/源 孝志、出演/柄本 佑、⻑尾謙杜、瀬戸康史、滝藤賢一、山口馬木也、愛希れいか、イモトアヤコ、冨家ノリマサ、野村周平、 高橋和也、正名僕蔵、本田博太郎、石橋蓮司、沢口靖子、北村一輝、渡辺 謙

公式HP/映画『木挽町のあだ討ち』

Ⓒ2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 Ⓒ2023 永井紗耶子/新潮社


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