2026.01.11
ザ・ぼんちインタビュー【後編】「過去の話はもうやめよう。今が一番面白いと言われたい」
1980年代に日本を席巻した漫才ブームをど真ん中でけん引していたザ・ぼんちが、今また注目を集めています。“過去の人”にはならないカッコいい大人であるために、彼らが貫く人生の美学、そしてコンビであるふたりの関係性とは?
- CREDIT :
文/牛丸由紀子 写真/土屋崇治 編集/鎌倉ひよこ、森本 泉(Web LEON)

“過去の話はもうやめよう。今が一番面白いと言われたい”と、お笑い界のレジェンドでありながら、今も笑いのアップデイトは怠らず、目の前のお客様に笑いをどう届けるかを追求し続ける漫才コンビ、ザ・ぼんち。インタビュー後編(前編はこちら)では、“過去の人”にはならないカッコいい大人であるために、彼らが貫く人生の美学、そしてコンビであるふたりの関係性を語ってもらいました。
踏み出せば、目の前の景色はいくらでも変わる
── LEON世代のオヤジさんたちも、40代、50代と年を重ねていく中で、これからの人生への不安を感じ始める頃かもしれません。でもおふたりの『今が忙しいし、本当に楽しい』という話を聞いていると、良いロールモデルとして、自分たちもまだまだなんじゃないか、これからもっといろんな未来があるのではないかという気持ちになるような気がします。そういった方たちに伝えたいことはありますか?
おさむ そうやったら、ほんまうれしいですね。
まさと 70歳になったからって、僕らはお手本になるつもりはさらさらないけれど(笑)、一番言いたいのは、『一歩踏み出そう、景色は変わる』ということ。もうこれしかないですね。どんなこともやってみなければ、こんな人たちと出会えるのか、こんなことが待っているのか、こんな大変なことやったんかということに気づかない。居酒屋で安い酒飲んでぐずぐず言うてても全然前進まへんもんね。本当に踏み出さんことには、どんなことも埒はあかない。
僕も最初のザ・ぼんちの時、亀山房代さんとのコンビ時代、そして“おっさんの漫才、ザ・ぼんち”の今、毎回違う景色を見ることができましたから。
おさむ 本当にそう。もう歳だわ、もうやめてもええかなと思うこともあるけれど、前に進まんことには答えなんて出てけへんねん。失敗してもええやん。失敗したら、その次はちょっとでもええことあれば成功になるんやから。だって夜になっても、絶対明日朝は来る。だったら気にせずやるべきなんです。

“相方”ではなく“相棒”、ふたりの絆とそれぞれの美学
── いくつになっても現役で、さらにその立場にあぐらをかかず常に新しいことを挑戦することが大事だということですね。まさにそれこそがカッコいい大人だと思うのですが、おふたりにはこれだけは譲れないもの、人生の美学というものはあるのでしょうか?
おさむ 大切にしたいのがやっぱり家庭。自分の一番身近な人を幸せにできなくては意味がない。子どもたちは成績の良し悪しではなく、自ら好きなことを見つけることができる環境にしようと育ててきました。もちろん嫁さんも大切にできんかったらいかん。僕の場合は僕がいつもだらしないから、よう怒られてるけど (笑)。
まさと 僕の美学は、家の扉を開けて外へ出たら、その1歩からもう芸人でいようということ。だから、街のショーウインドーに映った自分の姿に気づいたら、背中をまっすぐにしているか常に意識しているし、横断歩道も大股で白線の上を歩くようにしています。家に帰ったらジャージでいてもいいけれど、外に出たら人様の前に出る芸人として生きるべきと心に決めています。
── おふたりはお互いのことを“相棒”と呼んでらっしゃいますね。コンビを組んでいる師匠はたくさんいらっしゃいますが、たいてい呼び方は“相方”。お互いを“相棒”と呼んでいるのは、ザ・ぼんちのおふたりだけだとマネージャーの方もおっしゃっています。“相棒”というひと言に、ふたりの信頼の深さを感じます。
おさむ 気がつかんかったな。いつも“相棒”という言い方ばっかりだけど、無意識でしたね。
まさと 相棒の方が近しくてええやん。確かに、僕も改めて気が付きました。

紆余曲折の人生を繋ぐ、見えない縁
── 一つひとつの質問を熟慮し、理論的に答えようと言葉を丁寧に選ぶまさとさんと、湧き上がる感情とともに繰り出す言葉で場を盛り上げるおさむさん。お話を聞いていてもまったく性格も異なることに気づきますが、もともと高校時代からのつきあいなんですよね。
まさと そうなんです。見事なぐらい真逆な性格。でもだから、やれているのかもしれない(笑)。ふたりの間が熱くもなく、冷めてもいない、いい温度なんだと思います。
おさむ でも彼とは本当に縁を感じるんですよね。まず高校で同級生。あれだけ学校があったのに、同じ学校に入っただけでもすごい縁。といっても高校時代、彼は野球部なので、ほとんど喋ってないんやけど。彼は早朝練習して、授業中はほとんど寝てる(笑)。
まさと そうそう、野球部だけ授業中に寝てもいいという特別ルール(笑)。
おさむ 僕はちゃらんぽらんで、ファッションやお笑いに夢中。休憩時間は教壇の上に立って物真似したり。喧嘩が強いとか頭がいいとかは興味ないけど、誰かに『あのクラスにお前よりおもろいやつおるらしいで』って言われたら、カーッとなって『どこのんじゃ!』言うて勝負に行くんです (笑)。
そして高校卒業後コンビを組んだことも縁。その後一度解散したけれど、その時にも不思議な縁があって。コンビの時はお互い『ザ・ぼんち おさむ』『ザ・ぼんち まさと』と名乗っていたんです。でもひとりになったから、僕は“ザ”をとって『ぼんちおさむ』にしたんです。

▲ ぼんちおさむ(左)と里見まさと(右)。
おさむ ある日テレ朝のドラマ「はぐれ刑事純情編」が決まって台本見たら、僕の役名は『里見大観』。で、当時相棒は別の方とコンビ組んでたんですが、その時の名前が『里見まさと』だったんですよ。同じ苗字かと。すごい縁ですよね。
そして結局再結成して、今70過ぎてもふたりで続けることができている。縁がなかったらもう絶対無理ですわ。これは大切にしたいなと思います。もしまた90歳からもう一回やろうとなっても、きっと俺もやりたいと思う。この縁はぜったい切れないと思います。
── 縁でつながり、途中離れたこともあるが、ザ・ぼんちとして一緒に笑いを追求して約37年のおふたり。ひと言でいうと、お互いをどういう存在だと感じていますか?
おさむ 僕にとって本当に大事な人。なくてはならない存在です。もちろんこれからも大事にしたいと思っています。
まさと うちの相棒は“宝物”ですね。外野に何か言われても、やっぱりザ・ぼんちはふたりでひとつ。これだけは間違いないですから。

ザ・ぼんち
1972年に高校の同級生であるぼんちおさむと里見まさとでコンビ結成。緻密に練り上げられたテンポの良い掛け合いとギャグを交えた漫才で爆発的な人気を得て1980年代に巻き起こった漫才ブームの原動力となった。一方、親しみのあるキャラクターと歌や芝居もこなす多芸さで、ドラマやバラエティなど、芸人の枠を超えた活躍を見せる。コンビで出したシングル曲「恋のぼんちシート」は80万枚の大ヒットとなり、漫才師として初の武道館ライブを開催。その後、長期のコンビ休止期間を経てともに50歳の時に活動を再開。ベテラン然とするを良しとせず、チャレンジし続けることを信条に若手と同じ舞台に立つことは勿論、学園祭に出演するなど時代と真正面から向き合っている。チャレンジの一環として挑んだコンビ結成16年以上の漫才師による大会『THE SECOND 〜漫才トーナメント〜』にも出場、2025年グランプリファイナルのステージにおいて全盛期さながらの勢い溢れる漫才を披露、圧倒的な存在感で会場を大いに沸かせた。2025年には東京と大阪で「ザ・ぼんち芸道55周年記念単独ライブ~漫才はとまらないッ~」を開催。2026年1月30日には里見まさとが今までの漫才人生を振り返り出会った人々・思いをつづった書籍『漫才の一滴~笑吉が教えてくれた「念、縁、運」』(発行/ヨシモトブックス、発売/ワニブックス、税込1800円)を発売。
こちらの記事もいかがですか?














