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2017.08.10

真夏の夜には「怪談落語」で、彼女と一緒に背筋冷~んやり

日本では昔から暑い夏には怪談落語を聞いて涼をとるという風流な楽しみ方があります。そこで怪談噺の産みの親である初代・三遊亭圓朝の代表的な作品とその楽しみ方をご紹介。

CREDIT :

文/小槌 裕子

三代 歌川豊国「怪談累ケ淵」(aflo)
三代 歌川豊国「怪談累ケ淵」(提供:PPA/アフロ)
夏休みといえば、肝試しやお化け屋敷、稲川淳二さんの怪談(は今も人気ですが)……と懐かしく思い出す方も多いのではないでしょうか。何故、夏になると皆で怖い思いをしたがるのか。実は人間って恐怖を感じると交感神経が反応して、心臓に血液が集まるので、末端の肌体温が低下するそうです。夏の恐怖体験は“納涼”の理にかなっているのですね。

とはいえ大人のオトコとしては、彼女と遊園地のお化け屋敷で絶叫するわけにもいきません。そこで、ここはひとつ風流に、江戸の趣を残す怪談落語で背筋を冷やっとさせてみましょうというご提案です。

幕末明治の名人、三遊亭圓朝のオススメ怪談3選

落語には荒唐無稽で爆笑を誘う滑稽噺の他に、親子や夫婦の情愛を描いた人情噺、幽霊や化け物が登場する怪談噺もあるのは皆さんご存知のとおり。

落語自体は江戸時代の初期に生まれたものですが、怪談噺は江戸末期から明治初期にかけて活躍し、名人と言われた初代・三遊亭圓朝がいくつもの新作を披露して大人気となり、それらを中心に現代まで継承されているという歴史があります。

圓朝の怪談噺は今もそれぞれが高い人気を誇りますが、なかでもオススメなのが以下の3本。

『真景累ヶ淵(しんけい かさねがふち)』

三代歌川豊国(歌川国貞)「見立三十六歌撰 累の亡魂」(aflo)
三代歌川豊国(歌川国貞)「見立三十六歌撰 累の亡魂」(提供:国立国会図書館)
酒飲みでうだつのあがらない旗本の深見新左衞門が、鍼医で金貸しの皆川宗悦を斬り殺してしまい、これをきっかけに両家の子孫が延々と不幸の連鎖に陥っていくというストーリーです。人間の色と欲、因果因縁が複雑に絡み合った大長編で、通常は場面ごとに一話完結で演じられます。

中に登場する「お累(るい)」は有名な「四谷怪談」のお岩、「番町皿屋敷」のお菊と共に、江戸3大幽霊と言われています。
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『牡丹灯籠(ぼたんどうろう)』

月岡芳年「新形三十六怪撰 ぼたんどうろう」
月岡芳年「新形三十六怪撰 ぼたんどうろう」(提供:PPA/アフロ)
「四谷怪談」「番町皿屋敷」と並び、「日本三大怪談」に数えられる、圓朝が25歳の時の作品。明治17年に出版された速記本は大ベストセラーになり、二葉亭四迷はそこから言文一致体を編み出すなど、芸術・文学にも多大な影響を与えています。

浪人の萩原新三郎はふとしたきっかけでお露という女と知り合います。お露は夜ごと牡丹燈籠を提げカロンコロンと下駄を鳴らして新三郎のもとに通ってきます。しかし、それは恋い焦がれた男と添い遂げられず自死したお露の亡霊だったのです……。

お露が入れないようにお札を貼る、このお札というモチーフはチャイニーズホラーでもおなじみ。実は牡丹灯籠の原作は中国の怪奇譚なのです。こちらも原作は長編なので、人気落語家の柳家喬太郎は全編を2日かけて公演しています(現在、公演は未定)。

『死神』

借金で首が回らなくなった八五郎があれこれ死ぬ方法を考えていると、背後から「死神だ」と名乗る気味の悪い爺が近づいてきます。死神に金持ちになる方法を教えてもらうのですが、八五郎は死神との約束を守れず禁忌を犯してしまいます。さて、生き延びるために八五郎がとった捨て身の作戦とは……。

この噺は、グリム童話やイタリアの歌劇を翻訳して、日本風にアレンジした作品といわれています。尺が短いこともあって、多くの噺家が演じ、その“サゲ(落ち)”も色々と作り替えられて八五郎の運命も噺家によってさまざま。

立川志の輔は、ひねりの利いた「作戦は成功するが八五郎は死ぬパターン」。他に「成功して復活するパターン」「失敗するが生きているパターン」などもあり、自分の好みの結末を探すというのもこの噺ならではの妙味です。

鬼気迫る怪談は生の迫力で楽しむのが一番。ぜひ、寄席に出かけて背筋がゾーッとする体験をしてみていただきたいところですが、人気の噺家さんはチケットも争奪戦。早めのスタートが肝心です。

もし、入手が叶わない場合には、CDやDVDなどで名人の噺が残っているものも多いので、お家デートで名演を楽しむのも一興ですよ。
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毎年8月開催、全生庵の「谷中圓朝まつり」もオススメ

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初代・三遊亭圓朝は幽霊画のコレクターでもありました。円山応挙、歌川広重、河鍋暁斎など有名・無名の画家たちの鬼気迫る幽霊画を集め、ひとり静かに眺めることで、怪談噺に真実味を与える力を得ていたのではないでしょうか。
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圓朝の残したコレクションは、彼の墓がある谷中の全生庵に所蔵され、毎年8月の「圓朝まつり」で一般に公開されています。また8月18日には三遊亭鳳樂 三遊亭円橘 三遊亭好楽らが出演する「圓朝寄席」が行われます。 

暑い最中ではありますが、だからこそ、日本の夏の風情を味わいに、ぜひ足を運んでみてください。

◆ 谷中圓朝まつり2018


●圓朝寄席
日時/2018年8月18日(土) 18:00より予定
主催/下谷観光連盟、圓朝まつり実行委員会
お問い合わせ/☎03-3821-3922

●三遊亭圓朝コレクション幽霊画展
*円山応挙、川上冬崖、伊東晴雨、尾形月耕など掛け軸約50幅を公開
場所/全生庵(東京都台東区谷中5-4-7)
日程/2018年8月31日まで
時間/10:00~17:00
拝観料/500円
お問い合わせ/☎03-3821-4715

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