
画家・鴨居 玲(1928-1985)をご存知でしょうか? 180cmほどの長身のスタイルと西洋風の甘い顔立ちで、パリジェンヌも思わず振り返ったという、元祖・昭和のモテオヤジ。同時に、キャンバスの前では心の暗さ、弱さと向き合い「生きるとは何か?」を問いながら人間の顔を描き続けた奇才の洋画家です。
そんな鴨居 玲の奥深い魅力に迫る企画展「鴨居 玲 ーカメラが捉えた画家の素顔ー」が、茨城県の笠間日動美術館にて開催中なのです。美術館のある笠間には、陶芸スポットや北大路魯山人の住居など、アートな見どころもたくさん。企画展で元祖モテるオヤジの真髄を探りつつ、秋の美しい自然とアートを楽しめる笠間を彼女と散策してみてはいかが?
死後も多くの人を惹きつける、心の真影を投影した自画像

▲ 鴨居の自画像として書かれた代表作。「勲章」/笠間日動美術館所蔵。
誰もが目を背けたくなるような自己の陰鬱さにとことん向き合い、人間の暗く弱い内面を投影した鴨居の作品は、見るものを惹きつけ、思案させます。

▲ 「私の話を聞いてくれ」1973年/笠間日動美術館所蔵。
▲ 「自画像(絶筆)」1985年/笠間日動美術館所蔵。
しかしこの画家の素顔は作風から想像できない、とにかく人懐っこく魅力溢れる粋なオヤジでした。自宅に気の置けない友人を招き、夜更けまで杯を重ねるのが何よりの楽しみだったのだとか。陰と陽を内在させた鴨居の奥深い魅力は、死後も多くの人々を惹きつけ、ファンを増やし続けています。

▲ スペインでの鴨居。

▲ スペインのバルデペーニャスにて。

▲ ファッションにこだわりが強かった鴨居。生前、身につけていたジャケットやバッグなども展示されている。
そんな鴨居が昭和の画壇に登場したのは、実は40歳を過ぎてから。旧制中学を卒業後、金沢美術工芸専門学校(現・金沢美術工芸大学)で学びながら洋画家・宮本三郎に師事したのち、フランスやブラジル、スペインなど様々な国を巡って制作を続けましたが、なかなか芽が出ずに悶々とした日々を過ごします。

▲ 若き日の鴨居。
そんな鴨居を心配した姉・羊子(下着デザイナー)が、親交のあった司馬遼太郎に相談したことで、銀座の老舗画商・日動画廊で鴨居 玲展が企画されました。
これをきっかけに、鴨居は日動画廊の主催する若手画家の登竜門・昭和会展の優秀賞を、続いて安井賞を受賞し、本格的な画壇デビューを果たします。以来、日動画廊と鴨居は二人三脚で歩んでいくこととなったのです。
しかし、命を削るようにして続けた制作と持病の心臓病は次第に鴨居の焦燥をかりたて、度々自殺未遂を起こすようになり、最後は自死によって57歳で命を断ちました。

▲ 何度も自殺未遂騒動を起こした鴨居の遺書のようなメモ。
鴨居の企画展は死後5年に一度開催されてきましたが、今回は73点に及ぶ美術館の所蔵作品や貴重なデッサン、遺品などに加え、鴨居のパートナーでカメラマンの富山栄美子が19年にわたって撮りためた、鴨居自身の写真(未公開写真を含む)が数多く展示されています。生活を共にしたパートナーにしか見せなかった、魅力たっぷりな鴨居の素顔も必見!

▲ 富山が撮影した展示写真の数々。

▲ 息子のように可愛がっていた愛犬チータと鴨居。
美術館だけじゃない笠間の魅力
企画展を主催する笠間日動美術館は、鴨居を支え続けた画商・日動画廊の、錚々たるコレクションを所蔵するアートの聖地でもあります。企画展を楽しんだあとは、絢爛な常設展も楽しめるので満足感もひとしお。

▲ 笠間日動美術館は、ピカソからウォーホルまで国内外の巨匠たちの名品が勢揃いする超穴場。
また美術館周辺には、笠間稲荷神社や参道のカフェ、昼どころ、土産店などが並ぶほか、クルマで10分の場所には、北鎌倉にあった北大路魯山人の住居である300㎡の茅葺き民家を移築した、笠間日動美術館の分館となる「春風萬里荘」もあります。

▲ 日本遺産にも登録される「分館春風萬里荘」。

▲ 唯一現存する魯山人の住居跡。

▲ 魯山人自らが制作した小便器「あさがお」。
魯山人の住居跡で現存する建物はここだけ、という貴重な場所。民家の中には、魯山人自らが焼いた風呂場の壁に貼られた陶板や小便器、ステンドグラスなど、ここでしか見られない名品の数々が保存されています。
さらに、笠間日動美術館から分館春風萬里荘に向かう道中にある、伝統工芸・笠間焼の魅力を楽しめる笠間芸術の森公園もぜひ、立ち寄りたいスポット。園内には、茨城県陶芸美術館に加え、工房や陶芸体験の施設が数多くあり、彼女と二人で陶芸体験をしてお土産も持って帰れるので思い出作りにピッタリなんです。
日帰りでも、旅行気分を味わえるアートな笠間をぜひ、デートでご堪能くださいませ。
● 鴨居 玲(かもい・れい)
1928 年、金沢に生まれる。金沢美術工芸専門学校(現在の金沢美術工芸大学)で学び、洋画家宮本三郎に師事。1959年に初渡欧。1965年、単身ブラジルに渡り、パリ、ローマにそれぞれ1年近く滞在し帰国。1969年、第4回昭和会展に初出品で優秀賞を受賞。同年、安井賞展で安井賞受賞。1971年から 1974 年までのスペインでの生活で多くのモチーフを得る。1974年、パリにアトリエを構え、パリ、ニューヨーク、日本で多くの個展を開催。1977年、パリを後にし、神戸に居を構える。 個展や画集出版など順調であった反面、環境の違いから制作には焦燥感を抱くようになる。やがて本質的な自画像の制作に取り組み、名作を生み出すが、自身の心身を痛める結果となり、1985年9月に急逝。

「鴨居 玲 ーカメラが捉えた画家の素顔ー」
日時/開催中〜12月20日(日)
会場/笠間日動美術館
開館時間/9:30〜17:00(12月1日から10:00〜16:30)入館時間は閉館の30分前まで。
休館日/月曜(祝日の場合はその翌日)、年末年始
住所/茨城県笠間市笠間978-4
TEL/0296-72-2160
公式HP/https://www.nichido-museum.or.jp/event-2/
笠間日動画廊分館・春風萬里荘
開館時間/9:30〜17:00(12月1日から10:00〜16:30)入館時間は閉館の30分前まで。
休館日/月曜(夏季(8月)、冬季(12-2月)は土日祝日のみ開館)、年末年始
住所/茨城県笠間市下市毛1371-1
TEL/0296-72-0958
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