
都をどりを知らずして、京都を語るべからず!
京都の夜、少しだけ背筋を伸ばしてみたくなる場所。花街・祇園はLEON読者諸兄にとって、そんな街のはず。その中でもひときわ格式が高く、歴史の深みを感じさせるのが祇園甲部です。江戸の初め、八坂神社の門前町として栄えて以来、今もなお京都随一の花街として知られるこの街の主役は、言わずもがな芸妓・舞妓。そして彼女たちの晴れ舞台が、毎年4月に開催される「都をどり」です。

都をどりは伝統芸能でありながら「毎年変わる」舞台
「都をどり」は明治5年に始まり、戦時中やコロナ禍などを除き毎年続いてきた伝統の舞台。「一見さんお断り」がセオリーのお茶屋遊びは敷居が高いと感じるアナタでも、ここは別ルール。誰でも気軽に鑑賞できる、いわば入門編でもあります。
毎年異なるテーマのもと古典の世界を優雅に魅せる同舞台。第152回にあたる今年のタイトルは「寛永行幸 都華麗(かんえいぎょうこう みやこのはなやぎ) 」。寛永行幸とは江戸初期の1626年、後水尾天皇が徳川秀忠・家光の招きで京都の二条城に行幸した、歴史的な一大イベントのこと。今年が400年の節目であることにちなみ、二条城での饗応などの“名シーン“を舞で描き出します。

▲ 会場となる祇園甲部歌舞練場は大正2年竣工。この一帯の敷地は明治の初めまで建仁寺の寺地でした。
都をどりは「毎年変わる」舞台でもあります。テーマも衣裳も、その年だけのもの。着物や帯は新調され、超一流の職人たちの手で仕立てられた一点物なのです。振付は200年以上の歴史を持つ京舞井上流が担い、唄や三味線等の鳴物も生演奏、歌詞もすべて書き下ろし。伝統芸能でありながら、毎年新作を観るような贅沢さ。毎年欠かさず通う熱心なファンが多数いるというのも納得です。

▲ 京舞井上流は18世紀末、近衛家に出仕していた初世井上八千代により創始された流派。能楽や人形浄瑠璃を取り入れ、代々女性のみで伝承されている。
今年はベニューである「祇園甲部歌舞練場」正門に新看板が設置される記念イベントも開催されました。Web LEONでもご紹介しましたが、先月お隣に「帝国ホテル京都」が開業(こちら)。そこで建仁寺管長・小堀泰巖氏による揮毫の欅一枚板の銘板を、歌舞練場の正門に掲げる除幕式が行われたのです。

▲ セレモニーには臨済宗建仁寺派宗務総長・川本博明氏(左から4番目)、学校法人八坂女紅場学園理事長・杉浦京子氏(右から4番目)、帝国ホテル取締役会長執行役員・定保英弥氏(左から3番目)などが勢揃い。

▲ 当日はあいにくの雨模様でしたが、「昔から、雨は幸せが“降り込む“と言われる縁起物。明日からの本番がきっと素晴らしいものになると、ポジティブに考えています」と杉浦氏。
初々しい舞妓たちと人間国宝の師匠。華やかな舞台は日々の努力の賜物なのです

▲ 左から、初舞台を踏む舞妓の豆しずさん、心葉さん、夢千鶴さん、舞妓の華奈子さん、芸妓の美羽子さんの5名と、日々厳しくも愛情をもって指導する師匠・井上八千代御家元。
都をどりの舞台は、芸妓・舞妓や彼女たちを指導する師匠方の努力の結晶でもあります。お正月明けの1月から三味線や唄、鼓や笛などの鳴物の稽古が始まり、3月頭には舞の稽古もスタート。その本番前の総仕上げ稽古がこの「大ざらえ」。いわば本番前の真剣勝負というわけですね。本番と同じ衣裳をまとった芸妓・舞妓たちが関係者の前で舞台を披露し、その後家元による細かい修正を経て、翌日の開幕に備えます。

▲ 着物は京友禅と西陣織の匠たちの手により毎年新たにあつらえられます。幕開けの「総をどり」で揃いの浅葱色の振袖姿で登場するのが長年の伝統。
舞の振付は、人間国宝で京舞井上流五世家元の井上八千代師が担当。大ざらえの開幕前には、初舞台を踏む舞妓や芸妓を交えて、囲み取材が行われました。地元京都をはじめ、各地の新聞社やテレビ局の記者からの質問に、ゆっくりと丁寧に答える表情は真剣そのもの。とはいえまだ若くあどけなさの残る彼女たちを、横で見守りながら、時にはビシッとその場を締めるお師匠の井上氏。その絶妙な掛け合いもから日頃培われた関係性が垣間見られ、なんだか胸アツな気持ちに。

▲ 心葉さんは三重県出身。地元の新聞社の記者からの質問に「お姉さんたちの背中を追いかけながら一生懸命きばります。三重の人たちにもたくさん来てもらえたら嬉しおす」とにっこり。

▲ 芸妓の美羽子さんは、今年初めて男役に挑戦。「お稽古の時、家元が他の人に指導してはることも自分のことと思って、少しでも多く吸収できるよう頑張りました」。

▲ 「今年はテーマが難しかったのでは?」という質問に、「寛永行幸にちなんだ場面を散りばめながら、春から冬まで、そしてまた春を描きながら舞うのはいつもと同じ。伝統を踏襲しながら新たに変化している点をぜひ楽しんで観て欲しい」と井上八千代師。
さまざまなドラマが繰り広げられる2026年のプログラムをレポート!
都をどりは幕と幕の間に休憩を挟まず、最初から最後までテンポよく、流れるように進むのが特徴です。幕のはじめには「置歌」と呼ばれる序曲があり、お揃いの着物に身を包んだ芸妓・舞妓たちが颯爽と登場。各景では、梅林や紫陽花、紅葉、桜といった京都の名所や季節の風景が背景になり、舞と地方による長唄・浄瑠璃の音楽と共にストーリーが展開します。

▲ 舞を支える地方(三味線や唄、鳴物を担当する演者)のお姉さん方の、貫禄たっぷりのパフォーマンスもシビレます。
衣装や小道具、舞の動きの変化で季節や登場人物をわかりやすく示すほか、「ヨーイヤサァー」といったお馴染みの掛け声や拍手で観客も一体化。ウンチクを知らずとも、見て聞いて楽しめるからクセになる。気がづけば、物語の世界観にどっぷりと浸っているはずですよ。
▲ 第一景「置歌」は、銀襖を背景に浅葱色の着物で揃った芸妓・舞妓が華麗に舞う幕開け。後水尾天皇による行幸の華やかさを、枝垂れ桜の伝統図柄の衣裳で盛り上げます。この時点でワクワク感はマックス。
▲ 第二景「月ヶ瀬梅林逍遥」は風光明媚な月ヶ瀬梅林を背景に、今年の恵方の南南東に合わせた舞台構成。紅白の梅が咲き誇る渓谷の美しさと香りを舞台に取り込み、自然の中で優雅に散策する様子を表現します。う〜ん、可憐とはこのこと。
▲ 第二景。
▲ 歌舞伎のようなドラマ性も都をどりの醍醐味。二条城での寛永行幸の饗応を表現した第三景「後水尾天皇饗応絵巻」では、舞楽を模した舞で徳川秀忠・家光による天皇もてなしの豪華な文化をしのびます。黒子が登場する蹴鞠のシーンが実にダイナミック。
▲ 第四景「楊谷寺紫陽花花手水」は、眼病平癒の祈願所として信仰を集める柳谷観音楊谷寺の紫陽花が背景。手水を楽しむ優雅な舞に思わずうっとり。どの女性も本当にキレイなのです。

▲ 第一景「置歌」は、銀襖を背景に浅葱色の着物で揃った芸妓・舞妓が華麗に舞う幕開け。後水尾天皇による行幸の華やかさを、枝垂れ桜の伝統図柄の衣裳で盛り上げます。この時点でワクワク感はマックス。

▲ 第二景「月ヶ瀬梅林逍遥」は風光明媚な月ヶ瀬梅林を背景に、今年の恵方の南南東に合わせた舞台構成。紅白の梅が咲き誇る渓谷の美しさと香りを舞台に取り込み、自然の中で優雅に散策する様子を表現します。う〜ん、可憐とはこのこと。

▲ 第二景。

▲ 歌舞伎のようなドラマ性も都をどりの醍醐味。二条城での寛永行幸の饗応を表現した第三景「後水尾天皇饗応絵巻」では、舞楽を模した舞で徳川秀忠・家光による天皇もてなしの豪華な文化をしのびます。黒子が登場する蹴鞠のシーンが実にダイナミック。

▲ 第四景「楊谷寺紫陽花花手水」は、眼病平癒の祈願所として信仰を集める柳谷観音楊谷寺の紫陽花が背景。手水を楽しむ優雅な舞に思わずうっとり。どの女性も本当にキレイなのです。
▲ 前半と趣が変わり、源頼光が病床で土蜘蛛と対峙する第五景「土蜘蛛頼光館」。美しい女性に変身した蜘蛛が千筋の糸を操るシーンは、怪しくも艶やかな雰囲気。芸妓さん、舞妓さんって色んな演技が求められるんですね〜。
▲ 修学院離宮の広大な紅葉景色を背景に舞う第六景「修学院紅葉折枝」。上皇自ら設計した庭園や浴龍池や松並木の道を舞台に取り込み、舟遊びや詩歌の会など寛永文化の優雅な遊興を表現。浅葱色の着物と背景とのコントラストに目を奪われます。
▲ 第七景「雪神泉苑龍神水」は、平安京の苑池であった神泉苑で恋成就を願う若い男女と、その願いを叶える善女龍王の舞。雪と赤い山茶花の中、祇園祭の起源や地元に残る龍穴伝承を意識した演出で、京都の地理や歴史についてもお勉強できます。
▲ 第七景。
▲ 二条城を背景に満開の桜が舞う都をどりのフィナーレである第八景「二条城桜吹雪」。徳川秀忠による城の増改築や行幸御殿の歴史を踏まえ、華麗で祝祭的なムードで舞台を締めくくります。映え目線で言うとやはりこの幕が圧倒的でした。

▲ 前半と趣が変わり、源頼光が病床で土蜘蛛と対峙する第五景「土蜘蛛頼光館」。美しい女性に変身した蜘蛛が千筋の糸を操るシーンは、怪しくも艶やかな雰囲気。芸妓さん、舞妓さんって色んな演技が求められるんですね〜。

▲ 修学院離宮の広大な紅葉景色を背景に舞う第六景「修学院紅葉折枝」。上皇自ら設計した庭園や浴龍池や松並木の道を舞台に取り込み、舟遊びや詩歌の会など寛永文化の優雅な遊興を表現。浅葱色の着物と背景とのコントラストに目を奪われます。

▲ 第七景「雪神泉苑龍神水」は、平安京の苑池であった神泉苑で恋成就を願う若い男女と、その願いを叶える善女龍王の舞。雪と赤い山茶花の中、祇園祭の起源や地元に残る龍穴伝承を意識した演出で、京都の地理や歴史についてもお勉強できます。

▲ 第七景。

▲ 二条城を背景に満開の桜が舞う都をどりのフィナーレである第八景「二条城桜吹雪」。徳川秀忠による城の増改築や行幸御殿の歴史を踏まえ、華麗で祝祭的なムードで舞台を締めくくります。映え目線で言うとやはりこの幕が圧倒的でした。
観劇の前後も抜かりなく! 都をどり名物をチェック
せっかくの都をどり。どうせなら120%楽しみつつ、スマートに同伴者をエスコートしたいですよね。ということで、ちょっとしたTipsをご紹介。大人用のチケットには3種類あり、より深く都をどりの世界観に没入するならお菓子と抹茶のお茶席が付いた「茶券付一等観覧券」(指定席、7000円)がベター。観劇の前に「立礼式」の茶道で一服をいただくという、伝統のスタイルをお試しあれ。
お土産のオススメは、祇園甲部の紋章であるつなぎ団子柄のグッズをぜひ。コレクターもいると噂の人気アイテムで、家にさり気なくあったらモテる、はず(笑)。最後に、都をどりを満喫したら、すぐお隣の「帝国ホテル京都」でしばし休憩と洒落込むのはいかがでしょうか? 「オールデイダイニング弥栄」で伝統のパンケーキを頬張りながら、観劇の余韻冷めぬままパートナーと語らう、なんてのもオツでしょう。

▲ つなぎ団子柄のグッズはギフトとしても粋ですよ。茶席ではこのお皿でお菓子が振る舞われ、そのまま持ち帰りOKというシステム。皿600円、湯呑み4700円。

▲ 都をどりの歴史や今年のプログラムの詳細など情報満載の公式パンフレット(1000円)は始まる前にゲットを。うちわ(1400円)は記念にもなるし、家にさりげなく飾るのもアリ。

▲ おなじみのインペリアル・パンケーキ2200円は、彼女も喜ぶこと間違いなし。イベントの締めくくりにピッタリです。
京都には何度も行った、というアナタも、この世界は別腹というもの。それに、若い頃のように派手に動き回る旅もいいですが、こんな風に腰を据えて伝統文化を味わう京都も悪くないですよね。ほんの一時間の非日常。ぜひ大切な人と一緒に、この時期だけのお楽しみ「都をどり」へ足を運んでみてください。

都をどり
会期/2026 年4月1日(水)~30日(木)
1日3回公演(各公演約1時間)
1回目12:30~ 2回目14:30~ 3回目16:30~
会場/祇園甲部歌舞練場(京都府京都市東山区祇󠄀園町南側 570-2)
観劇チケット(全席指定・税込)
・茶券付一等観覧席7000円
・一等観覧席6000円
・二等観覧席4000円
TEL/075-541-3391
HP/https://miyako-odori.jp/miyako

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