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2025.06.27

【第25回】

イタリアのスーパーマーケットは日本から見たらかなりクレイジーかも⁉

イタリア生まれのフード&ライフスタイルライター、マッシさん。世界が急速に繋がって、広い視野が求められるこの時代に、日本人とはちょっと違う視点で日本と世界の食に関する文化や習慣、メニューなどについて考える連載です。

CREDIT :

文・写真/スガイ マッシミリアーノ 編集/森本 泉(Web LEON)

まずはバールでエスプレッソを飲んでからお買い物が始まる

「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)でおなじみのイタリア人ライター、マッシさんが、今回は日本とは相当に違ってイタリア人の国民性がよくわかる現地のスーパーマーケットについてお話しします。
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▲ ビスケットだけでこんなに並んでいる。
6年ぶりにイタリアに里帰りをした時、お母さんと週何回かスーパーで買い物をしていた。そこで数々の衝撃的な風景に囲まれた結果、遊園地より楽しくてこの国の国民性や習慣、文化を体験できると改めて思った。というか、「僕はそういえばイタリア人だった」と再確認できたような気持ちになったのよ。

日本の社会とその日常生活に慣れて日本人になりかけている僕は、イタリアのスーパーに足を運んだ瞬間、驚きと興奮が花火のように弾けて星までカラフルに飛んだ! イタリア現地のスーパーに隠れている不思議な世界と、日本との違いを知りたくなるよね?
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▲ お惣菜はどれも美味しそうでしょ。

キャスターの壊れた重たいカートを押すのは買い物というより筋トレ

イタリアのスーパーでは、「イタリアのスロー生活」を全身で体験できる。買い物に来ているのに、まずは誰もがスーパーと同じ敷地内に付いているバールでエスプレッソやカプチーノなどを飲むんだ。ここでもし知り合いに偶然会ったらますますお喋りが長くなるのよ。ここまで済んでやっと買い物が始まる。と言っても、まったりゆっくりしながら進む。これは、日本ではあまりない気がする。普段は買い物のために来ているから、欲しいものをパパッと買って帰るよね。イタリアでは数時間かかるのが珍しくはないんだ。

イタリアのスーパーの特徴は、入り口が1箇所のみ。デカいカートを取るか、コンパクトでパパッと買い物するタイプの小さいカートを選ぶか。どちらにしても押しづらくて、4つ付いているキャスターの中で必ず1つはいつもまともに動かない。だから、買い物しているか筋トレしているか分からなくなる。イタリア現地で買い物をしたことがある人は分かるよね? やっと、ここから買い物するよと言いながらすでに疲れている。
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▲ 山盛りのアーティチョークは日本では見ないよね。

待たされすぎて鬼のような顔、からの天使の笑顔への切り替えが早い

イタリアでのスーパーの買い物は日本と比べると時間がかかる。もちろん、スロー生活のこともあるけど、お肉売り場やチーズ、惣菜などのコーナーでは番号を取って自分の番になるまで待つスタイルだからだ。欲しいものは何グラム、どんな組み合わせにするかだけではなく、その食品への質問や会話は長くて、ほかのイタリア人の顔を見ても「長くない?まだ?」のような表情がうかがえる。待たされすぎて鬼になりかけているところで自分の番になったら、途端に笑顔になる。鬼からの天使への変身は驚くほど早いよ。この切り替えの速さこそ、「ザ・イタリア人」だ。

そして、日本ではあまり見かけないと思うけど、イタリアのスーパー内は渋滞になりがちだ。みんな自分のことしか考えていないから、周りのことを気にしないで通路の真ん中にデカいカートを置いたり、立ち止まってお喋りしたりしている。店内を歩く時にはジグザグにスラロームしないといけないから、まるでスキー大会にいるようだ。
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▲ サラミもすごい種類がある。
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野菜や果実はどうせ調理するんだから完璧な状態にこだわらない

久しぶりにイタリアのスーパーに行って驚いたのは、野菜と果物の大きさと安さ。日本と違って、欲しいものをビニール袋に入れて、秤に付いている画面で商品を選び、測って印刷されたバーコードを貼る。いわゆる、量り売りが主流だ。

選んだものとは違う安い商品のバーコードをわざと選択することも出来ちゃう。もしレジでバレても「あ!ごめん、間違えたよ」と軽く謝るという、イタリア人あるあるなズルさが発揮されるよ(僕はしたことないけどね)。

そしてお母さんと買い物して改めて思ったのは、日本と違って野菜と果物は「完璧すぎる状態」にこだわらないことだ。どうせ調理するから変な形でも味に関係ないという意見が多いのがイタリア人だ。
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▲ ここで買うものを秤に乗せて袋に入れてバーコードを貼る。
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買い物を続けると、ハムやチーズ、サラミなどの冷蔵庫の前を必ず通る。というか、自然に足が止まる。ヨダレが出ないように頑張っていても、出るのが確実だよ。「これがイタリアの憧れだ!」と思いながら、フレッシュなチーズやハムなどをカートに入れる僕。ちょっと入れ過ぎたからお母さんに怒られるかな? と思いきや、「それだけでいいの?」と言われてほっこりした。

もう少し進むと、美味しそうな惣菜たちが並べてある。まるで、マッシを待ってくれているような感覚だ! ピエモンテ料理からイタリアを代表するような料理まであって、買うつもりではないと言いながらもすでに何種類かカートに入っている。さらに、数えきれないほどあるチーズのコーナーは、きっと日本ではなかなか見られない風景だろう。チーズの中でもヤギのチーズやピエモンテにしかないチーズが普通にあるのだ。
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▲ チーズ売り場はめちゃくちゃ充実している。
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▲ これ全部、ヤギのチーズだ。
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イタリアではお水よりワインの方が安い、は本当のこと

ワイン好きな人にとって天国になるのはワイン売り場だよ。ワインの種類は多すぎて、どこを見てもワインしかない。しかも、8ユーロ以下(約1300円)のワインがほとんどだし、家にはすでにたくさんあるのに、また買ってしまう。イタリアでは「お水よりワインの方が安い」と読者もよく耳にすると思うけど、実は本当のことだよ。レストランもお水よりワインの方が頼みやすい。イタリア人はよく考えたら、チーズとハム、パンとワインだけで暮らしているんじゃないかな。しばらく実家で暮らしていたら、大体そうだった(笑)。
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▲ ワインもすごい種類が揃っている。しかも安い!
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そして、最後にイタリアのスーパーのラスボスのような存在を紹介しよう。これは僕が子どもの時から変わらない、レジと買ったものを詰めるスピードだ! まず、自分たちでベルトコンベアに買う商品を山ほど乗せる。ベルトコンベアが進めば進むほど詰み上がる中で、椅子に座っているレジ係がすごいスピードで「ピー、ピー、ピー」とスキャンする。
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▲ レジにはベルトコンベアがついている。
スキャンした商品は買った人が自分で袋に詰めるんだけど、速過ぎて追いつかないんだ。あれ?イタリアのスロー生活はどこに行ったの? と感じる。ピーを聞くたびに滝のように汗が出てくる中で、後ろのお客様が僕をじっと見てくる。買い物をまだ全部片付けていないのに、レシートと支払いの作業も入って、もうパニックだ。そんな時、やっぱり頼りになるのはお母さん。途中から救世主のように袋詰めを代わってくれて、後ろに並ぶ人の目線には目もくれず、すごい速さで詰める作業が終了した。
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▲ こんな風に買う物を山盛りでベルトコンベアに乗せるんだ。
作業中にレジ係のことが大嫌いになるほど忙しくてパンクしそうだけど、全部終わったら笑顔で挨拶して「またね」と言うスタイルもイタリア人あるある。セルフレジもあるけど多くの人は使わない。その理由は、どれだけ混んでいてもやっぱり人と関わりたい気持ちがあるからだ。

インディジョーンズより、イタリア現地のスーパーで買い物する方が、命をかけている感じがする。だけど、生き残るために最高の食材を買って最高の料理をするために必要なことなんだ! 買い物をした後に「今日も負けずに生きている」と清々しい気持ちになる。イタリア人にとっての買い物は人生の喜怒哀楽。もしイタリアに行かれたら現地のスーパーでインディジョーンズの体験をしてみない?
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● マッシ  

本名はスガイ マッシミリアーノ。1983年、イタリア・ピエモンテ州生まれ。トリノ大学院文学部日本語学科を卒業し2007年から日本在住。日伊通訳者の経験を経てからフードとライフスタイルライターとして活動。書籍『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(KADOKAWA)の他 、ヤマザキマリ著『貧乏ピッツァ』の書評など、雑誌の執筆・連載も多数。 日伊文化の違いの面白さ、日本食の魅力、食の美味しいアレンジなどをイタリア人の目線で執筆中。ロングセラー「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)は145万PV達成。
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