これは感動！ ふたりで楽しみたい９種の日本酒ペアリングに出会える店

日本酒ブームが盛り上がり、近年は日本酒に詳しい男女がぐっと増えてきました。多くの銘柄や薀蓄を知っているのもいいですが、“究極の美味しさ”を体験するなら、やっぱりプロに丸投げするのが一番。というのも日本酒は温度帯や合わせる食事で表情がガラリと変わるお酒で、すべてのバランスがはまった時こそ至福だから。そこで、日本酒ペアリングの決定版となるお店をご紹介いたします。

渋谷２丁目に今年1月にオープンした「ふた味」は、まず料理がどんな手練な相手でも納得するレベル。料理長はチューリッヒの旅館「兎山」と西麻布「いちの」で5年連続星を獲得した西山道泰氏。月がわりのおまかせコースを求め毎月通うファンも多くいるほどで、それは春夏秋冬の日本の旬を知る食体験でもあります。

そんなおまかせコースは全13品。うち９品に日本酒が合わせられるのですが、これが驚きの体験なんです。「あ、いいね」くらいではなく、「えっ⁉」と閃くようなマリアージュの瞬間を与えてくれます。

そこまで行き着くのは、徹底した日本酒選びがあってこそ。まずは各料理を試食した利酒師の赤星慶太氏が日本酒をみつくろい、その後スタッフ10人で試食会を実施。意見が一致した時点で初めて酒が決まります。日本酒は温度違いでも試し、料理にぴったり合った時点ですぐさま測る。そんな会を月に2～3回開いているというのです。さらに最後、料理長が日本酒に合わせて料理で微調整しているのも完成度が高い理由。

「毎月来てくださるお客さまもいるので、前の月以上のものをという気持ちがあります。合わないと常連の方はすぐに分かるので、完璧にしないといけません」

とは店長の田中隆太さん。ではでは、気になるそのペアリングはいかなるものか、下記10月の一例をご参照くださいませ！

自家製からすみを餅でくるみ、昆布出汁と大根の汁をかけた一品。お酒は“亀の尾”という幻の酒米を使用した純米吟醸。米の味の強いお酒が餅の甘みと香ばしさを引き出し、餅の概念が覆される組み合わせ。からすみの塩みにより淡麗な酒の甘みが増すのも面白いです。

お椀の蓋を開けると、松茸、鰹節、かぼすの香りがふわり。顔を近づけるとさらに香りに包まれて、この時点でたまりません！ そこに合わせたのは、なんと泡盛のような香りのする沖縄の日本酒。泡盛に使う黒麹によるお酒は、味わいも泡盛のよう。単体では味も香りも強いのですが、このお椀の香りと合わせると、泡盛の強いフレーバーがやわらいで、まろやかな本醸造へと変貌します。

ふかひれ餡の昆布出汁、コラーゲンのコクに合わせ、旨みのしっかりした本醸造原酒をセレクト。原酒はアルコール度数19%もあり、このままでは料理に勝ってしまうので、燗ロックで軽快に。80℃の酒を10gの氷で冷やし、飲む際に最適な40℃に仕上げるという計算です。加水しても味がくずれないのもさすが。ブルゴーニュグラスに入れたことで香りに丸さも出て、その香りが海老の風味に寄り添います！ 餡とお酒の温度帯が近いのもツボ！

一度のコースに味わえる日本酒は、10月の場合、上記の９種類。これだけの日本酒ペアリングコースが1万7000円（税抜）というのも、高級和食店に比べたら良心価格。ひと晩で個性もさまざまな日本酒を味わえるので、「ふた味」に行くだけで日本酒の経験値がぐっと上がります。

必ず、日本酒をひと口飲んでから料理をどうぞ。そしてまた日本酒を飲むと、口あたりも香りも変わって、その違いが醍醐味であります。お酒の香りと旨みは料理に移行しますし、相乗効果がとまらない！ 欲張りなグルメを満たす時間がここにはありますよ。