「美味しい革命」の渦中にある「必食ラーメン」をまとめて紹介!

▲ 西荻窪「はつね」のラーメン。
長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、今やミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を日本初の料理評論家、山本益博さんが自らが実食リポートする人気連載「山本益博のラーメン革命!」 から、今、この時代に是非食べておくべきラーメンをまとめてご紹介します。
■ 醤油ラーメン
大人好みの美味い醤油ラーメンはどこにある?

例えば、西荻窪「はつね」、湯島「ラーメン大至」、銀座「中華そば 共楽」など伝統派と呼んでよいラーメンをいただくと、醤油味はしっかりと感じるものの、さほど食後まで味を引きずらない。私が食べてきた中での、その最高峰は新座「ぜんや」と白河「とら食堂」のラーメンで、共通項はといえば、具が盛りだくさんでないことだろうか。具が増えれば増えるほど、チャーシューや鶏油などの油脂が多くなれば多くなるほど、塩分が必要になる。

▲ 新座「ぜんや」のぜんやラーメン。

▲ 白河「とら食堂」の手打ち中華そば。
どんぶりが大きくなり、表面が広くなれば、当然、具が多くなる。ここで麺とスープのバランスをとることのなんと難しいことか。
この手のラーメンを伝統派に対して改革派と呼ぶとすると、今まで食べた中で極めて印象高いのは、東京では、三ノ輪「ラーメン屋 トイ・ボックス」、早稲田「らぁ麺やまぐち」、浅草橋「饗 くろ㐂」、三鷹「麵屋さくら井」、近郊では東松山「中華そば 深緑」、つくば「中華そば ひしお」。地方では、札幌「Lab Q」、湯河原「らぁ麺 飯田商店」、京都「拳ラーメン」、大阪「カドヤ食堂」、「燃えよ麺助」、尼崎「ロックンビリ―S1」だろうか。

▲ 三ノ輪「ラーメン屋 トイ・ボックス」の醤油ラーメン。

▲ 早稲田「らぁ麺やまぐち」の鶏そば。
そうそう、葛飾亀有にあった「ののくら」のスープが、色合いは漆黒なのに穏やかでまろやかなうま味十分の醤油ラーメンだったことが、いまとなってはなんとも懐かしい。
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2025年1月26日公開
■ 塩ラーメン
塩ラーメンでA級と言える美味しい店はどこだ?

私が気合を入れて「ラーメン」と向かい合わせることになったのは新宿御苑の「不如帰」と三ノ輪の「トイ・ボックス」でラーメンを食べてからである。どちらのスープにもノックダウンさせられた。「不如帰」の魚介の出汁、「トイボックス」の醬油味のスープに魅了され、さらに浅草橋「饗 くろ㐂」の「醤油」「塩」のラーメンを食べるに及んで、「ラーメン」がB級なのではなく、「ラーメン」にも、A級B級があることを教えられた。

▲ 荏原中延「中華そば 多賀野」の「粟国の塩そば」。
そして「塩味」に興味を抱いた決定打は、荏原中延に移転した「中華そば 多賀野」で食べた「粟国の塩そば」だった。スープを残らずいただいても喉に「塩味」がとどまることなく、帰途、荏原中延から五反田へ出ても、水が欲しくはならなかった。これぞ「A級」の「塩」ラーメンと言いたい。
ところが、その後、あちこちで「塩味」のラーメンを食べても、満足できなかった。まず初めにスープを飲んで、いきなり「塩味」を感じるのである。「塩」と「うま味調味料」が合体すると、食べ終えた後、かなり長い間、喉の奥に「塩味」が残るのである。

▲ つくば「中華そば ひしお」の「奥久慈しゃもの特製中華そば(塩)」 。
実は、「醤油味」も同じことで、いきなり醤油が口中を占領すると、次第にスープが塩辛くなってしまう。「塩」も「醤油」も、いかにマイルドに仕上げるかが肝要ではなかろうか。それゆえ「鶏油」は絶好の緩衝調味料と言えようか。
これまで食べてきた中で、絶品は、つくば「中華そば ひしお」の「奥久慈しゃもの特製中華そば(塩)」のみ。(塩)と表示するより「淡麗」こそが相応しい。続くは、青梅「Ramen FeeL」の「塩らぁ麵」。こちらには「清澄」を献呈したい。

▲ 青梅「Ramen FeeL」の「塩らぁ麵」。
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2023年12月23日公開
■ 味噌ラーメン
味噌ラーメン、本当に美味いのはどこだ⁉

私が東京に戻って早稲田に入学すると、ご当地ラーメンの走りとして「札幌ラーメン」ブームが起こり、早稲田の近くの戸塚には確か「どさん子」が出来た。
今、東京で評判の「味噌ラーメン」は、札幌の「すみれ」で修業された人が開いている専門店で、新宿区江戸川橋の「三ん寅」、江戸川区船堀の「大島」などがそれに当たる。この「すみれ系」、1964年に札幌で「純連(すみれ)」を始められた村中明子さんに因んで「村中系」とも呼ぶらしい。

▲ 江戸川橋 「三ん寅」の「味噌らーめん」。
「三ん寅」「大島」ともに、味噌味が濃く強く、「ごはんがよく合う」というより「ごはん」を呼ぶ味に仕上がっている。東京の味噌ラーメンを謳う、武蔵境「東京味噌らーめん 鶉」の味噌ラーメンも食べ進むと、ご飯が欲しくなってくる。

▲ 船堀「大島」の「味噌らーめん」。

▲ 武蔵境「東京味噌らーめん 鶉」の「みそらーめん」。
ところが、大久保の「麵屋悠」で「味噌ラーメン」をいただいたところ、塩味が強くないから、ご飯を必要としない。ご主人に伺うと、味噌ダレに酒粕、ピーナッツなどを加えているという。ひょっとすると味噌ダレというより「醤(ジャン)」の発想なのかもしれない。味わいがマイルドで、店のオリジナリティを存分に発揮している。

▲ 大久保「麵屋悠」の「味噌そば」。
「醤油」「塩」で大人気の三ノ輪「トイ・ボックス」の「味噌ラーメン」も添えてあるペースト、ご主人に聞けば、陳皮、みかんジャム、グレープシードオイル、ピンクペッパーからなるペーストで、それが香りと独特の風味を添えて、塩味の強くない味噌ラーメンに仕上がっている。

▲ 三ノ輪「トイ・ボックス」の「味噌ラーメン」。
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2023年3月12日公開
■ 豚骨ラーメン
都内の豚骨ラーメン。美味いのはどこだ?

ここ数年、ラーメンを食べまわっている中で、極めて印象に残ったのが中板橋、大谷口「愚直」の「とんこつラーメン」である。街道に面した間口一軒の小さな入り口には「PORK BONE NOODLES」の看板が出ている。
「豚骨」の魅力満載のラーメンで、スープというよりなめらかなポタージュ。これに歯切れのよい麺が絡み、味わいの違うチャーシューが2種と、野太いメンマ、それに海苔とネギが添えてある。

▲ 中板橋、大谷口「愚直」の「とんこつラーメン」。
「豚骨ラーメン」の進化形、「魚介豚骨」で素晴らしいのが、高田馬場「渡なべ」の「醤油ラーメン」1000円。豚骨とさばぶしが見事にマッチングして、醤油味を引き立てている。

▲ 高田馬場「渡なべ」の魚介豚骨「醤油ラーメン」。
この「魚介豚骨」が行きついた先が「濃厚魚介豚骨」で、東京駅KITTEビルの「松戸富田麺絆」特製つけめんがそれに当たる。店の品書きには「濃厚豚骨魚介極太麺」とあるが、いつか松戸の本店まで出かけ食べてみたいと思う。
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2022年12月11日公開
■ 冷やし中華
いま、東京で一番美味い「冷やし中華」はどこだ?

一説によると、「冷やし中華」は神保町の「揚子江菜館」がはじめたと言われている。昨年久しぶりにいただいたが、売りは「名物」のみで、「古典」の威厳は感じられなかった。今回改めて出かけた「古典派」の東銀座「萬福」も三鷹「みたか」も初めて訪れた浅草「あさひ」も、ほぼ「郷愁」のみの感想だった。さらに行列ができるほど人気だからと人に薦められて出かけた大橋「鶏舎」も、なぜこんなに人が並ぶのか、その良さが理解できなかった。

▲ 大橋「鶏舎」の「冷やし葱そば」。
ただし、SNSで評判の幡ヶ谷「龍口酒家」の「ゴマダレ冷やし麺」は違った。ごまだれが香り高く、食欲を掻き立てる酸味もあり、なによりクロレラ入りの緑の麺によく調和する。しばらくたって再び出かけ「冷し醤油タレ麺」を食べた。茄子のてんぷらが添えてあるのだが、これが揚げたてだったら、さぞ素敵な「冷やし中華」になっただろうにと思われた。

▲ 幡ヶ谷「龍口酒家」の「ゴマダレ冷やし麺」。
そんな折も折、我が町西荻窪に「冷やし中華」専門店が生まれたとの情報が入ってきた。その名も「HiyaChu」という。以前の吉祥寺から西荻窪に移り、毎週木、金、土の3日間昼のみの営業とのこと。夜はバーになるという。店は西荻窪駅近く、1階が夜のみのトラットリアのイタリア料理店で、その店の中を通って2階に上がるという、極めて変則的な「冷やし中華」専門店。

▲ 「HiyaChu ブラック」は醤油味。
メニューは「ブラック」と「グリーン」の2種のみ。「ブラック」は醤油味で、「グリーン」は辛さが売りである。美味しければ、明日またやってきて「グリーン」をいただくことと決め、「ブラック」を注文した。これが「古典」の「冷やし中華」を改革した現代版の「Hiya Chu」、ツナのペーストがオリジナルで、素敵なアクセントになっている。大満足で店を出た。
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2023年8月13日公開
■ つけ麺
東京・埼玉、「つけ麺」の美味い店はどこだ?

私の友人IKKOさんが、YouTubeで虎ノ門「ロビンソン」を訪ねていた。紹介していたのはラーメンだった。店は、昼は「ロビンソン」でラーメン、夜は「小三治」で和食+イタリアンという不思議な組み合わせ。店名の由来はプロレス好きのイタリア料理シェフと落語好きの日本料理の料理人がコラボした店とのことだった。

▲ 虎ノ門「ロビンソン」の「つけ麺」。
自家製麺「ロビンソン」でいただいたのは鰹昆布出汁「つけ麺」で、イタリアンシェフの手になる自家製麺、日本料理の料理人の手になる出汁のうまさを堪能した。桜の季節を迎えて、「つけ麺」がいよいよ美味しく感じられるようになってきたところで、「つけ麺」の行くべき店が次々に現れてきた。
まずは、南蒲田「メイドインヘブン」。京浜蒲田駅前には「とんかつ大希」があり、行き慣れた場所だが、「メイドインヘブン」は反対方向にあった。手もみの麺と相性の良い醤油味のスープを美味しくいただいた。

▲ 南蒲田「メイドインヘブン」の「艶つけ麺」。
続いては、池尻大橋「千乃鶏」。池尻大橋と言えば、最近「とんかつ冨士㐂」へ出かけたばかりだったが、「千乃鶏」は「冨士㐂」と違い、国道246号線をそのまま三軒茶屋方面へしばらく歩いたところにあった。こちらは、鰹昆布水「つけ麺」。行列覚悟で出かけたが、夕刻だったため、珍しくすぐに席に着け、鰹節が鼻をくすぐるインパクトのある「つけ麺」をいただいた。
こうして、子供のころに遊んだ「すごろく」のように駒を進めていくと、ラーメン本で常連の店が2軒気になった。一軒は狭山ヶ丘「鈴ノ木」もう一軒は北浦和「かねかつ」、どちらも埼玉県のラーメン専門店。

▲ 狭山ヶ丘「鈴ノ木」の「淡麗つけ麺」。
まずは「鈴ノ木」の券売機で「淡麗つけ麺」のチケットを買った。スープ、麺ばかりかチャーシューの味も出色。じっくり堪能し、店主の鈴木さんと名刺を交換、次回は「醤油ラーメン」と心に決めて、店を後にした。
そうして、埼玉の2軒目、北浦和「かねかつ」に辿りつく。こちらもJR「北浦和」駅から歩いて2分ほどの距離で、店はモダンでシンプルな佇まい。

▲ 北浦和「かねかつ」の「つけめん」。
注文したのは「つけめん」で、カウンター席につき、ほどなくして目の前に現れたのは、実にシンプルな盛り付けの「つけめん」だった。なにより、噛み心地、のど越しのよい、味わい深い麺が素晴らしい。それを活かす、メンマも入ってないスープ。醤油味だが、濃くはなく深みがある。チャーシューはイベリコ豚の肩ロース、ほろほろ鶏むね肉ともも肉の3種が白い皿に並んでいるのみ。シンプルにするために、どれほどの仕事をしているのだろうか?
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2023年4月23日公開
■ ワンタン麺
思い出すと食べたくなるワンタン麺、どこが最高峰?

JR中央線「西荻窪」駅で降り、我が家へ向かう前、ラーメンを食べるために立ち寄るのは、駅からすぐのところにある「支那そば いしはら」である。注文するのは決まって「ミックスワンタン麺」。海老と豚肉のわんたんが2つずつ入った「わんたんめん」で、醤油味ベースの郷愁派中華そばである。実は、麺なしの「スープワンタン」(海老2、肉3)もあるのだが、お腹が空いているとどうしても「ミックスワンタン麺」になってしまう。
食べ始める時に、いつも迷う。そばから行くか、わんたんから食べるか。わんたんの皮がとろけないうちに食べたいが、そばも延びないうちにつるっといきたい。

▲ 「支那そば いしはら」の「ワンタン麺(ミックス)」。
西荻窪なら「はつね」の「ワンタンメン」も捨てがたい。「はつね」は「タンメン」、「もやしそば」が人気だが、注文を受けるたびに包んでつくってわんたんを茹でる「ワンタンメン」も誠実な味がする。

▲ 「はつね」の「ワンタンメン」。
「郷愁派」のラーメン専門店のワンタンメンで忘れてはならないのが、銀座の「共楽」。先日、久しぶりに出かけ麺なしの「わんたん」を楽しんできた。わんたんがなんと11個も入っている!

▲ 「共楽」の「わんたん」。
記憶をたどって、わんたんの入った美味しいラーメンを思い出してみると、目黒の「麺や 維新」、糀谷の「中華ソバ ちゃるめ」、亀戸の「ふじさき」が出色で、単なる添え物ではなく、皮も餡も美味しい、わんたんの確かな存在感がある。どちらも醤油味のスープである。

▲ 「維新」の「わんたん麺」。
ただ、わんたんはどちらかと言うと、醤油味より塩味のスープのほうが、わんたんが美味しく感じられるのはなぜだろう。それを実感させてくれるのが、池尻大橋の「八雲」と本郷3丁目の「中華蕎麦 にし乃」である。
「八雲」にはメニューに「スープワンタン」があって、わんたんのみ存分に楽しめる。わんたんが先か、そばが先か迷うこともない。

▲ 「八雲」の「スープワンタン」。
「にし乃」ならば「山椒塩そば」に「別皿ワンタン」という手がある。塩そばのスープをいただき、わんたんを食べる。塩味のスープとわんたんの相性が格別で、山椒が素敵なアクセントを添えてくれる。

▲ 「中華蕎麦 にし乃」の「別皿わんたん」。
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2023年7月9日公開
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● 山本益博(やまもと・ますひろ)
1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
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