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2023.03.12

【第27回】味噌ラーメン

味噌ラーメン、本当に美味いのはどこだ⁉

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博 編集/森本 泉(LEON.JP)

山本益博 LEON.JP 味噌ラーメン
本当に美味しい味噌ラーメンを追いかけていったところ、札幌の先の発寒まで行ってしまった。今回はその顛末記。

私は、今から60年ほど前、札幌に2年間住んでいて、「味噌ラーメン」が大好きになった。とりわけ、寒い冬の日の「味噌ラーメン」は高校生には堪えられないご馳走だった。

ほとんどの店が鍋に挽肉ともやしと玉ねぎを入れてラードで炒め、そこへスープを加えて、味をなじませ、整える。そうして鍋に具を残したまま、味噌ダレが入った丼へスープを流し入れる。ゆであがった黄色い麺を丼へ入れ、それから、お玉で鍋から丼へ具を盛っていき、一丁上がり! 見ていてもとても楽しく、ますますお腹が空いていった。この作り方、丼に味噌ダレがなければ、タンメンと同じ作法ではないか。
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「味噌ラーメン」なのに、味噌よりにんにくが食欲をそそり、油脂が旨味のベースになって、もやしたっぷりの高カロリーのラーメンは、高校生の舌より胃袋を鷲づかみにしていた感があった。

70歳を超えて、またまた「ラーメン」の虜になった私は、今回改めて「味噌ラーメン」を食べ歩き、その魅力を考えてみることにした。
山本益博 LEON.JP 味噌ラーメン
▲ 江戸川橋 「三ん寅」の「味噌らーめん」(900円)。
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私が東京に戻って早稲田に入学すると、ご当地ラーメンの走りとして「札幌ラーメン」ブームが起こり、早稲田の近くの戸塚には確か「どさん子」が出来た。

今、東京で評判の「味噌ラーメン」は、札幌の「すみれ」で修業された人が開いている専門店で、新宿区江戸川橋の「三ん寅」、江戸川区船堀の「大島」などがそれに当たる。この「すみれ系」、1964年に札幌で「純連(すみれ)」を始められた村中明子さんに因んで「村中系」とも呼ぶらしい。
山本益博 LEON.JP 味噌ラーメン 大島
▲ 船堀「大島」の「味噌らーめん」(920円)。
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「三ん寅」「大島」ともに、味噌味が濃く強く、「ごはんがよく合う」というより「ごはん」を呼ぶ味に仕上がっている。東京の味噌ラーメンを謳う、武蔵境「東京味噌らーめん 鶉」の味噌ラーメンも食べ進むと、ご飯が欲しくなってくる。
山本益博 LEON.JP 味噌ラーメン 鶉
▲ 武蔵境「東京味噌らーめん 鶉」の「みそらーめん」。
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ところが、大久保の「麵屋悠」で「味噌ラーメン」をいただいたところ、塩味が強くないから、ご飯を必要としない。ご主人に伺うと、味噌ダレに酒粕、ピーナッツなどを加えているという。ひょっとすると味噌ダレというより「醤(ジャン)」の発想なのかもしれない。味わいがマイルドで、店のオリジナリティを存分に発揮している。
山本益博 LEON.JP 味噌ラーメン 麵屋悠
▲ 大久保「麵屋悠」の「味噌そば」。
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「醤油」「塩」で大人気の三ノ輪「トイ・ボックス」の「味噌ラーメン」も添えてあるペースト、ご主人に聞けば、陳皮、みかんジャム、グレープシードオイル、ピンクペッパーからなるペーストで、それが香りと独特の風味を添えて、塩味の強くない味噌ラーメンに仕上がっている。
山本益博 LEON.JP 味噌ラーメン トイ・ボックス
▲ 三ノ輪「トイ・ボックス」の「味噌ラーメン」(800円)。
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ここまで色々食べ歩いて、「味噌汁」を考えてみた。それも、「あさり」や「しじみ」の味噌汁。煮干しや鰹節や昆布を使わず、貝で出汁をとると、仕上げに溶いた味噌は多くを必要とせず、香りは高く、それでいて塩味は強くなく、風味のよい味噌汁が出来上がる。

つまり、「MISO SOUP」ではなく「MISO FLAVOR SOUP」。私の好みは、いまや後者の「味噌ラーメン」である。
と、ここまで来て、「味噌ラーメン」の元祖と言われる札幌「味の三平」が気になりだした。1954年に創業者大宮守人さんが「味噌味メン」を生み出したと言われている。ならば、50年ぶりに再訪してみようと、札幌へ旅立った。
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山本益博 LEON.JP 味噌ラーメン 味の三平
▲  札幌「味の三平」の「味噌ラーメン」(900円)。
山本益博 LEON.JP 味噌ラーメン 味の三平
▲ 「味の三平」の外観。
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出かける以上は、他の「味噌ラーメン」を食べない手はない。「麵屋彩未」へは一昨年出かけているので、人づてに聞いた発寒の「八乃木(はちのき)」まで訪れることにした。

「味の三平」の「味噌ラーメン」は「MISO FLAVOR SOUP」派だったが、具材を目分量で調理するので、バランスを欠き、往年の出来栄えとはかなり違って感じた。
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山本益博 LEON.JP 味噌ラーメン 八乃木
▲ 発寒「八乃木」の「みそラーメン」。
山本益博 LEON.JP 味噌ラーメン 八乃木
▲ 「八乃木」の外観。
発寒の「八乃木」の「味噌ラーメン」は暖簾で「すみれ」系とわかるのだが、味わいは「MISO FLAVOR SOUP」で、添えてあったおろし生姜も臭い消しの役割ではなく、スープに程よくアクセントを生み、チャーシューもメンマも「いい仕事」がしてあった。もちろん、ご飯を必要としない。クルマでないと出かけにくい立地にあるが、いつか絶対に再訪したい店である。近所の人がつくづく羨ましい。
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江戸川橋「三ん寅」 Twitter/三ん寅
船堀「大島」 Twitter/大島
武蔵境「東京味噌らーめん 鶉」 Twitter/東京味噌らーめん鶉
大久保「麵屋悠」 Twitter/麺屋悠
三ノ輪「トイボックス」 HP/ラーメン屋トイ・ボックス
札幌「味の三平」 HP/元祖札幌味噌ラーメン「味の三平」
発寒「八乃木」 Instagram/八乃木

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山本益博 LEON.JP  ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

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山本益博 YouTube  MASUHIROのうまいのなんの!

山本益博さんがYouTubeを始めました!

日本初の料理評論家、山本益博さんが、美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい! をテーマに、「食べる名人」を目指します。どうぞご覧ください!
YouTube/MASUHIROのうまいのなんの!

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「山本益博のラーメン革命!」、他の記事はこちらから!
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