新ヘッドシェフを迎え、さらに進化を遂げた「グッチ オステリア トウキョウ」へ！

銀座・並木通りを歩いていたら、突如現れるヒグチユウコ*¹さんによるアーティスティックなファサード。「グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ」は、みなさまご存知「グッチ」と、イタリアのスターシェフ、マッシモ・ボットゥーラ氏*²とのコラボレーションによって誕生したレストランです。

2022年のオープン以降、23年、24年と続けてミシュラン１つ星を獲得している「グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ（以下グッチ オステリア トウキョウ）」の料理は常にフーディーたちの耳目を集めてきました。この4月、新ヘッドシェフが就任したと聞き、さっそく訪問。すでに評価の高い同店ではありますが、新ヘッドシェフによるコースはさらに洗練され、ひと皿、ひと皿に驚きと感動がありました。たとえば、かねて私たちが見知っている「ブルスケッタ」や「パルミジャーナ」、「カルボナーラ」も新シェフの手にかかれば、こんなにも新鮮な料理になるなんて！ その料理の背後にある物語を聞きました。

２代目のヘッドシェフとしてマッシモ・ボットゥーラ氏に抜擢された、ラファエラ・デ・ヴィータさんは、南イタリアのフォッジャ出身。イタリアの穀倉として小麦を主に生産する、人口15万人の小さな都市で育ったラファエラさんは幼いころから、自分は“pesce fuor d'acqua*³”のようだと感じ、どこか息苦しく感じていたのだそう。早くから料理人の道を志し、サルディーニャを手始めに、イタリア各地で料理人としての修業を重ねてきました。

転機となったのは、ペスカーラ（アブルッツォ州の都市）の日本料理店で2年働き、和食に出会ったこと。「まさに恋に落ちたようだった」と語るほど日本の料理や文化に魅せられたラファエラさんは、単身で日本へ。各地を旅しながら、いつしか日本に住むことを決意していたと語ります。

そんなラファエラさんの料理は、料理上手だったという祖母の家庭料理をベースとしながらも、非常に感覚的。視覚的にも美しく、料理を考える際にはまずスケッチから始めるというのもうなづけます。たとえば上のひと皿はイタリア料理の前菜として知られるブルスケッタを、ラファエラ流に再構築したもの。ブルスケッタなのにパンがない？ と不思議でしたが、ラファエラさんのお話を聞き、さらに自身で味わってみて納得。どこにパンがあるのか？ それはぜひ実際に足を運んで確かめてみてください。

イタリアの定番お惣菜としても知られる「パルミジャーナ」*⁴は、ラファエラが幼少期の頃から親しんできた祖母の得意料理へのオマージュ。トマト、ナス、バジルからなる３色のクリームがローマ帝国時代のモザイクのように美しく仕立てられています。

また、この日は味わえなかったのですが、次回必ず食べるぞと心に誓った「カルボナーラ」は、昆布とペコリーノチーズでとった出汁でスパゲティーをボイルし、醤油漬けにした卵黄、パルミザンチーズのクリームで和えています。最後に味噌漬けにしてスモークした卵黄を削りかけたトッピングはカラスミのようにも見えます。まるでカルボナーラと卵かけごはんが出会ったようなひと皿は、日本を愛してやまないラファエラさんだからこそできる料理だと感じました。

どの料理からも、ラファエラさんの繊細な感性と高い美意識を感じます。日本に限らず、世界のレストランでも女性は働きにくい状況が続いており、女性と見ればパティシェ希望だと決めつけられることも往々にしてあります。そんななか、ラファエラさんは朝誰よりも早く厨房へ来て、誰よりも遅く最後に帰る——そんな地道な努力を続けてきました。彼女は現在、日本で唯一、ミシュランの星をもつ外国人女性シェフですが、近い将来、それは決して珍しいことではなくなるでしょう……そんな明るい希望をラファエラさんの料理がもたらしてくれました。

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