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2023.11.26

【第44回】 貝の出汁か? 甲殻類の出汁か?

冬に食べたいラーメンは貝の出汁? 甲殻類の出汁?

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博 編集/森本 泉(LEON.JP)

ラーメン 貝出汁 甲殻類出汁 山本益博 LEON.JP
ヨーロッパの料理に「ムール貝の白ワイン蒸し」がある。ブリュッセルへ出かけると、有名な広場グランプラス近くに「ムール貝」専門店が軒を並べていて、「ムール・マリニエール」を注文すると、小さなバケツ一杯に、白ワインで蒸されて口を開いたムール貝が山盛りに盛られて出てくる。これを、白ワインを片手にポンフリット(フライドポテト)をつまみながら食べてゆく快感は堪えられない。
ラーメン 貝出汁 甲殻類出汁 山本益博 LEON.JP
また、フランス料理に「オマール海老のビスク」というスープがある。オマール海老の殻から出汁をとったコクのあるスープで、最近はあまり見かけないが、一時代前までは高級レストランの定番料理で、メニューには「ビスク・ドゥ・オマール」と表記されていた。甲殻類の王様オマール海老の香り高い、人を惹きつけてやまないスープと言ってよい。
今、百花繚乱のラーメン界で、貝出汁や甲殻類の出汁でスープのベースを作る店があちこちにある。貝出汁で名高いのは新宿「金色不如帰」の「真鯛と蛤の塩そば」と西六郷「琥珀」の宍道湖のしじみを使った「塩蕎麦」ではなかろうか。
ラーメン 貝出汁 甲殻類出汁 山本益博 LEON.JP
▲ 新宿「SOBAHOUSE 金色不如帰」の「真鯛と蛤の塩そば」。

ラーメン 貝出汁 甲殻類出汁 山本益博 LEON.JP
▲ 西六郷「宍道湖しじみ中華蕎麦 琥珀 東京本店」の宍道湖のしじみを使った「特製 中華蕎麦<塩>」。
両者ともに、「簡潔」にして「繊細」な味わいのラーメンで東京でいただくラーメンの一級品である。しじみでなくはまぐりを使って出汁をとっているのが荻窪「蛤麺しちり」でこちらの「蛤麺」も塩味である。
ラーメン 貝出汁 甲殻類出汁 山本益博 LEON.JP
▲ 荻窪「蛤麺しちり」の「蛤麺 塩」。
また、今はなくなってしまったが常盤台「Soupmen」※の「牡蠣塩らぁめん」も、食べ進むうちに牡蠣のピューレがスープに溶け込んで、忘れ難い味わいだった。
「Soupmen」は現在、静岡県焼津市で営業中。
ラーメン 貝出汁 甲殻類出汁 山本益博 LEON.JP
▲ 常盤台時代の「Soupmen」の「牡蠣塩らぁめん」。
それに比べると、甲殻類の出汁をベースにしたラーメンの印象が薄い。私が初め出会ったのは、札幌新千歳空港で食べた「一幻」のえびそばだった。海老の風味をしっかり立てたスープで、食べながら、フランス料理の「ビスク・ドゥ・オマール」を思い出したほどだった。
ラーメン 貝出汁 甲殻類出汁 山本益博 LEON.JP
▲ 札幌新千歳空港「えびそば 一幻」の「えびそば」。
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だが、その後、いろいろ探して食べてはみるが、神保町「ebimaru ramen(海老丸ラーメン)」も東高円寺「Shrimpreme(シュリンプリーム)」も、美味いが、濃厚すぎて、後味が強すぎるのである。ここで、思い出すのは、パリの「KODAWARI RAMEN TSUKIJI」でいただいた「オマール・マゼメン(オマール海老のまぜそば)」。具材が盛り沢山でオマール海老の存在感が強くはなかったが、スープそばより効果的に思えたものだった。
ラーメン 貝出汁 甲殻類出汁 山本益博 LEON.JP
神保町「ebimaru ramen(海老丸ラーメン)」の「元祖海老丸らーめん」。
ラーメン 貝出汁 甲殻類出汁 山本益博 LEON.JP
東高円寺「濃厚海老らーめんShrimpreme(シュリンプリーム)」の「濃厚海老らーめん」。
ラーメン 貝出汁 甲殻類出汁 山本益博 LEON.JP
▲ パリ「KODAWARI RAMEN TSUKIJI」の「オマール・マゼメン」。
イタリア料理のパスタに「ペスカトーレ」がある。海老やら烏賊やらムール貝、あさりなどがトマトソースで和えられたパスタで、誰もが知るスパゲッティの名品のひとつ。これを応用して、甲殻類のまぜそば、もしくは、「ブイヤベース」を手本にした甲殻類のつけ麺を考え出してくれるラーメン職人がいたら、すぐにでも飛んでいくのだが。
ラーメン 貝出汁 甲殻類出汁 山本益博 LEON.JP
「FUSABUSA」のブイヤベース。
いろいろと妄想しているうちに、40年以上も前に、台湾の台北で食べた、渡り蟹が丼にまるごと載った麺を思い出した。ヴィジュアルもダイナミックで、あれは、本当に美味かった!
山本益博 LEON.JP  ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

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