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2026.07.29

【試乗リポート】新型「ポルシェ911 GT3 S/C」で自然吸気ボクサーエンジンのありのままのサウンドを体感!

2026年4月、ポルシェは新型「911 GT3 S/C」を発表した。 911 GT3として史上初の全自動開閉式コンバーチブルルーフを採用したモデルだ。ポルシェ本社のあるドイツ・シュトゥットガルト郊外の山脈地帯で行われた国際試乗会で、これで最後になるかもしれない自然吸気6気筒ボクスターエンジンのエキゾーストノートを浴びてきた。

BY :

文/藤野太一(自動車ジャーナリスト)
CREDIT :

写真/ Porsche AG 編集/森本 泉(Web LEON)

GT3初の電動式コンバーチブルルーフを備えたモデル

ポルシェ911 GT3 S/C

911とひと言にいってもモデルバリエーションは実に多岐にわたる。ボディタイプはクーペをはじめカブリオレ、タルガの3タイプ。駆動方式は2WD(RR)と4WD。そしてエンジン出力の異なる、カレラシリーズ(ベース、S、GTS)、ターボ、GT3などがある。これらをかけ合わせることによって、いまポルシェの公式ホームページには20を超える911モデルが展開されている。


そうしたなかで、GT3に初めてカブリオレが設定されたことが、特に911マニアのあいだでは話題になっている。それはなぜか。カレラシリーズやターボのエンジンが、ターボやハイブリッドになったいまもGT3だけは、レーシングカー直系の自然吸気4ℓ水平対向6気筒エンジンを搭載しているためだ。


開発もGT3やGT2といったスペシャルモデルは、レーシングカー部門と連携している特別チームが手掛けている。GT3はその希少性からいまやお金があっても買えないマニア垂涎のモデルとなっている。

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Project Manager GT Model Line(911)  Jörg Jünger。

▲ Project Manager GT Model Line(911) Jörg Jünger。 軽量のマグネシウムを用いたコンバーチブルの構造を解説するヨルグ・ユンガー氏。約18年にわたってGTモデルの開発に従事。初めてプロジェクトを統括したのは、2015年に発売されたケイマンGT4(タイプ981)。その後、GT3やGT4 RSなど、様々なGTモデルを担当し、現在は911のGTモデルのプロジェクトマネジャーを務める。

そんな硬派なGT3になぜいま少しばかりナンパとも思えるカブリオレをつくったのか。国際試乗会のプレゼンテーションの場で、GTモデルライン(911)のプロジェクトマネジャーであるヨルグ・ユンガー氏は、その経緯をこのように話した。

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2019年に登場した991GT3ベースの「911スピードスター」。ルーフの開閉は手動タイプ。1948台が限定生産された。

▲ 2019年に登場した991GT3ベースの「911スピードスター」。ルーフの開閉は手動タイプ。1948台が限定生産された。

2023年に911誕生60周年を記念して世界限定1963台のみつくられた「911S/T」。現行のGT3 RSをベースに軽量化を施し、車両重量は992では最軽量の1380kg。

▲ 2023年に911誕生60周年を記念して世界限定1963台のみつくられた「911S/T」。現行のGT3 RSをベースに軽量化を施し、車両重量は992では最軽量の1380kg。

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「GT3にオープンカーを組み合わせるというアイデアはいまに始まったものではありません。2019年に(先代911の)991をベースとした『911スピードスター』を発表しました。


GT3の技術とオープンカーの要素を融合させた初のモデルでしたが、限定生産車でありルーフの開閉機構も手動式のものでした。そして2023年には、軽量化のためのあらゆる要素を盛り込み、私たちがこれまでつくった中で最軽量な(現行911の)992である『911 S/T(スポーツツーリング)』を発表しました。


そして、現行のラインアップには『911 GT3 ツーリング』があります。そこで私たちは、これらの技術やアイデアを融合させ、新しい解釈を導き出そうと試みました。その結果生まれたのが、この『911 GT3 S/C』なのです」

リアにあるエンジンカバーには、S/Tとの相関性をあらわすS/Cのエンブレムが備わる。

▲ リアにあるエンジンカバーには、S/Tとの相関性をあらわすS/Cのエンブレムが備わる。

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シンプルに考えれば、車名は「911GT3カブリオレ」でいいはず。しかし、このモデルには軽量化のために「911S/T」のコンポーネントが多く活用されている。その相関性をあらわすために車名にS/C(スポーツカブリオレ)とつけたという。

キレイに成形されたカーボン製のフロントリッドは驚くほど軽い。外装ではドアもフロントフェンダーもカーボン製となっている。

▲ キレイに成形されたカーボン製のフロントリッドは驚くほど軽い。外装ではドアもフロントフェンダーもカーボン製となっている。

S/T譲りのコンポーネントは、カーボン製のドア、フロントフェンダー、フロントリッドにはじまり、セラミックカーボン製のブレーキ、ホイールはマグネシウム製のホイールなど。さらに2シーターのみ、6速マニュアルトランスミッションのみというシンプルな構成で、車両重量は1497kgと現行の911カブリオレシリーズのなかで最軽量となっている。

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クーペでは味わえない快感が押し寄せる

GTクーペなどと同じくフロントダブルウィッシュボーンサスペンションを採用。コーナーでの安定感は抜群で、バネ下重量が軽いためスポーツモードでも乗り心地も良好。

▲ GTクーペなどと同じくフロントダブルウィッシュボーンサスペンションを採用。コーナーでの安定感は抜群で、バネ下重量が軽いためスポーツモードでも乗り心地も良好。

今回の試乗会はドイツ・シュトゥットガルトにあるポルシェ本社から約90km南下した山脈地帯シュウェービッシェ・アルプで行われた。ポルシェの試乗会といえばサーキットが定番だが、緑豊かなカントリーロードを約270km駆け抜けるものだった。その意図はあとになってわかることになる。

ステアリングの左側には、伝統的な作法であるエンジン始動用のノブが備わっている。内装はドアパネルやカーペットも軽量仕様となっている。

▲ ステアリングの左側には、伝統的な作法であるエンジン始動用のノブが備わっている。内装はドアパネルやカーペットも軽量仕様となっている。

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試乗車はPTS(特注色)の“914オリンパスブルー”に彩られたモデルだった。現行911カレラシリーズはエンジンの始動を一般的なスタート/ストップボタンで行うようになったが、GT3には伝統的なキーひねるような作法が受け継がれている。ステアリングの左側に配置されたノブをひねると、レーシングカー直系の自然吸気4ℓ水平対向6気筒エンジンが目覚める。

ダークな色合いのウォールナットのオープンボア仕上げのシフトノブ。GT3用の6速GTスポーツトランスミッションはスポーティーなショートファイナルドライブレシオを採用している。

▲ ダークな色合いのウォールナットのオープンボア仕上げのシフトノブ。GT3用の6速GTスポーツトランスミッションはスポーティーなショートファイナルドライブレシオを採用している。

GT3とS/Tのみ使われている6速GTスポーツトランスミッションのシフトフィールは素晴らしい。ストロークは短く、節度感がありスパスパと決まる。クラッチの重さも一般的なものでとてもミートしやすい。1速に入れて半クラッチであわせればスッと動き出す。レーシングカー直系のハイパフォーマンスエンジンだからといって扱いにくさはまったくなく、市街地でシフトチェンジをさぼって3速や4速に入れたままで1000〜1500回転でゆっくりと走るなんてことにも柔軟に対応してくれる。

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市街地をぬけカントリーロードに入る。ドイツの一般道の制限速度は基本的に100km/h。運転のうまい人たちが多く地元の商用バンでも+αのスピードで走っている。


ちなみに、市街地に近づくと70 km/hから50 km/hへ、人の往来が多いエリアは30km/hと速度制限が厳しくルール化されており、市街地にはオービスがたくさんある。走るたび日本は学ぶところが多いと感じる。

センターロック式のマグネシウムホイールは1本約9kgと片手で持てるほどの軽さ。セラミックカーボンブレーキはスチール製と比較して約20kgもの軽量化を実現。

▲ センターロック式のマグネシウムホイールは1本約9kgと片手で持てるほどの軽さ。セラミックカーボンブレーキはスチール製と比較して約20kgもの軽量化を実現。

山林のワインディング区間で走行モードをスポーツもモードに切り替える。エキゾーストノートが高まり、シフトの際の回転数あわせをアシストしてくれるオートブリップがオンになる。これがあればヒール&トゥができなくても気持ちよく速く走ることができる。

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アクセルペダルに力を込めると、回転計の針が4000回転を超えたあたりから音が変化し、9000回転まで澱みなくキレイに吹け上がる。自然吸気エンジンならではのスムースなフィーリング、そして“スクリーム”と称すべき官能的なエキゾーストノート。クーペでは味わえない、オープンカーだからこそ味わえる快感が押し寄せる。

最後になるかもしれない、珠玉の自然吸気ボクサーエンジン

911の特徴であるルーフ形状“フライライン”をコンバーチブルルーフでも再現する。ルーフは時速50km/h以下であれば走行中でも約12秒で開閉が可能。

▲ 911の特徴であるルーフ形状“フライライン”をコンバーチブルルーフでも再現する。ルーフは時速50km/h以下であれば走行中でも約12秒で開閉が可能。

オープンカーというとボディ剛性が……なんてことも言われたりするが、少なくとも今回の試乗でそれを感じる場面はなかった。


突然のスコールに見舞われて50km/h以下で走行しながらルーフを閉じてみたりもしたが、オープンでもクローズでも剛性におおきな差は感じられなかった。

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そのことよりもオープンのほうが音のぬけ感が圧倒的にいい。雨がやむとすぐにルーフを開け放った。そして気づく、なぜ今回の試乗会はカントリーロードで行われたのか。


サーキット走行となると安全のためにルーフを閉じることになる、景色も楽しめない。GT3のルーツはもちろんサーキットだけれど、タイムを競わない、ただ運転を楽しむそんなモデルがあってもいいでしょ、というメッセージだと思った。


ひとつだけ懸念されるのが、いつまでこの自然吸気エンジンが存続できるのかということ。今年の11月にも施行される新たな排気ガス規制ユーロ7をクリアできないのではないかと噂されている。先のユンガー氏にそれについて尋ねると少し表情を曇らせながら、こう答えてくれた。


「ユーロ7に関しては最終決定が先送りにされているため、まだ確実なことはわかりません。今後、2、3年後にどうなるのかを正確に把握することは非常に難しい状況にあります。いずれ導入されることは間違いありませんし、我々もそれに備えなければなりません。補足するならば、ユーロ7に適合する自然吸気エンジンをつくることは可能です。ただし、いまのエモーショナルな魅力を維持することは難しい。それでも自然吸気を維持することに意味があるのか、それともまったく別のコンセプトを考案すべきなのか、検討する必要があります」


これが最後の自然吸気エンジンになるのかはわからない。確実にいえるのは、このエンジンは珠玉のユニットであること。そしてその音を全身で浴びることができる「911 GT3 S/C」は992史上最高にエキサイティングなモデルあったことだ。

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ポルシェ911 GT3 S/C

■ ポルシェ911 GT3 S/C

ボディサイズ/全長4570×全幅1852×全高1279mm

ホイールベース/2457mm

車重/1497kg

駆動方式/RR

エンジン/4リッター水平対向6 DOHC 24バルブ

トランスミッション/6速MT

最高出力/510PS(375kW)/8500rpm

最大トルク/450Nm/6250rpm

価格/3843万円


公式サイト

HP/https://www.porsche.com/japan/jp

藤野太一(自動車ジャーナリスト)
大学卒業後、自動車情報誌「カーセンサー」、「カーセンサーエッジ」の編集デスクを経てフリーの編集者兼ライターに。最新の電気自動車からクラシックカーまで幅広い解説をはじめ、自動車関連のビジネスマンを取材する機会も多くビジネス誌やライフスタイル誌にも寄稿する。またマーケティングの観点からレース取材なども積極的に行う。JMS(日本モータースポーツ記者会)所属。写真/安井宏充

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